スリランカ向け円借款契約の調印

−本格的な経済・社会の発展に向け、日本の技術・知見を活用した支援−

2013年3月15日

国際協力機構(JICA)は、3月14日、スリランカ民主社会主義共和国政府との間で、4件、総額411億700万円を限度とする円借款貸付契約を調印しました。

調印の様子

スリランカでは、2009年5月に25年以上にわたる紛争が終結したことを踏まえ、国の安定化に基づく成長戦略を掲げており、2011年の実質GDP成長は8.2パーセントを達成するなど、本格的な成長期にあります。観光業をはじめとする各種産業が成長する一方で、同国政府が掲げる2016年の中進国入りを見据え、電力や運輸等の経済基盤の一層の整備が求められています。また、すべての人々が安心して生活するためには、自然災害に対する脆弱性の克服や、地方都市部における社会サービスの質の向上が喫緊の課題となっています。

こうした中、今次円借款では、同国の経済・社会の発展に日本の優れた技術・知見が活用されることを念頭に、首都圏への電力供給の効率化、老朽化した全国の橋梁の整備、豪雨による土砂災害等の災害に脆弱な地域の交通を守る防災対策を支援します。また、飲料水に起因する病気で苦しむ地方都市部の人々に、安全な水を提供するための上水道整備についても支援します。

今次調印した円借款の特徴は以下のとおりです。

(1)送配電損失率の改善と電力供給の信頼性向上を通じ、首都圏への電力安定給を支援

GDPの約5割を占めるコロンボ周辺の地域(大コロンボ圏)では、近年経済成長に伴い電力需要が急増しており、電力供給の無駄を減らす送配電損失率の改善と電力の安定供給を実現するための送配電網の増強が必要です。「大コロンボ圏送配電損失率改善事業」では、首都圏において地中送配電網を整備することにより、送配電損失率の改善および電力供給の信頼性向上を支援します。

(2)日本の優れた技術を活用し、交通の弊害となっている橋梁の架け替えを支援

面積6.5万キロメートルのスリランカにおいては、国内旅客・貨物輸送の9割を占める道路輸送は極めて重要な役割を果たしています。堅調な経済成長を背景とした交通需要の増加を受け、円滑な交通のボトルネックとなっている老朽化した橋梁の架け替え・新規架橋が求められています。「国道主要橋梁建設事業」は、日本の優れた橋梁技術を適用し、全国の主要国道における橋梁の架け替え、新規架橋を行うことにより、道路輸送の円滑化を支援します。

(3)災害に脆弱な地域における国道を対象とした土砂災害対策を通じ、交通ネットワークと周辺住民の生活の安全性向上を支援

スリランカでは、近年豪雨による大規模な洪水・土砂災害等の自然災害に見舞われており、人命や道路等の基盤インフラに大きな被害が生じています。特に、中央部の山岳・丘陵地域では、急傾斜地の崩壊や地滑り等の土砂災害が頻発しており、その対策が急務となっています。「国道土砂災害対策事業」では、土砂災害リスクの高い主要国道の斜面に対策工を設置することにより、災害発生リスクを軽減し、道路網と周辺住民の生活の安全性の強化を支援します。またあわせて技術協力により、土砂災害対策を担う人材育成を行い、土砂災害への包括的な対応力を高めます。

(4)表流水を利用した上水道施設を整備し、安全な水へのアクセス向上を支援

スリランカ北中部に位置するアヌラダプラ県は、乾燥地域でありながら周辺に水源となる貯水池等がなく、住民は限られた地下水を井戸からくみ上げて生活しています。同地域の地下水からは、人体に有害な高濃度フッ素が検出されており、健康への被害が大きな問題となっています。「アヌラダプラ県北部上水道整備事業フェーズ1」では、上水道を整備し、生活用水を汚染された地下水から表流水に切り替えることにより、同地域の人々の安全な水へのアクセス向上を支援します。

今後もJICAは、技術協力、有償資金協力(円借款)、無償資金協力それぞれのスキームを活用し、スリランカの中進国入りに向けた経済・社会インフラ整備をはじめ、すべての国民が発展を享受する国づくりを支援していく方針です。

(参考)
借款金額および条件

案件名 借款金額
(百万円)
金利(%/年) 償還期間
(年)
据置期間
(年)
調達条件
本体 コンサルティング・サービス
大コロンボ圏送配電損失率改善事業 15,941 0.30 0.01 40 10 一般アンタイド
国道主要橋梁建設事業 12,381 0.20 0.01 40 10 タイド
国道土砂災害対策事業 7,619 1.4 0.01 25 7 一般アンタイド
アヌラダプラ県北部上水道整備事業フェーズ1 5,166 1.4 0.01 25 7 一般アンタイド

・大コロンボ圏送配電損失率改善事業は気候変動対策条件を適用
・国道主要橋梁建設事業は本邦技術活用条件(STEP)を適用

(1)大コロンボ圏送配電損失率改善事業
Greater Colombo Transmission and Distribution Loss Reduction Project

(a)事業の背景と必要性
スリランカにおいては、近年の年平均7パーセントの経済成長に伴い、電力需要が急増しています。とりわけ、全国のGDPの約5割を占め、同国の経済活動の中心地である大コロンボ圏の電力消費量は年率約10パーセント前後の高い割合で増加しており、現行の都心部の基幹送電線や変電所の容量では、将来の電力需要の増大に対応できない状況になっています。

急増する電力需要に対応し、電力の安定供給を実現するためには、同地域の基幹送電線を132キロボルトから220キロボルトへ昇圧する等、送配電網を増強することが求められています。また、同国の送配電網は、建設から既に40年以上が経過し老朽化した設備も多いことから、送配電損失率は2010年に13パーセントと、他の近隣アジア諸国と比較しても高く、送配電損失率の改善も重要な課題となっています。

(b)事業の目的と概要
本事業は、スリランカの首都圏である大コロンボ圏において送配電網の整備をすることにより送配電容量の増強、送配電損失率の改善および電力供給信頼性の向上を図り、もって同国に対する投資および経済発展の促進に寄与することを目的としています。本事業は、送配電損失率を改善させ、電力の供給システムの効率化、ひいては、温室効果ガスの削減にも寄与することが期待されています。本件にかかる貸付資金は、地中送配電線敷設工事、変電所の新設・増強工事およびコンサルティング・サービス(詳細設計、施工管理等)の費用に充当されます。

(c)事業実施機関
電力エネルギー省(Ministry of Power and Energy)
住所:No.72, Ananda Kumaraswami Mawatha, Colombo 7, Sri Lanka
TEL:+94-11-257-4918、FAX:+94-11-257-4635

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
(i)事業の完成予定時期:2016年12月(施設供用開始時をもって事業完成)
(ii)コンサルティング・サービス(施工管理等)にかかる招請状送付予定時期:2013年3月
(iii)本体工事にかかる国際競争入札による入札公示:
調達パッケージ:
・変電所の新設・増強
・地中送配電線新設 (220キロボルト、132キロボルト、11キロボルト)
・電力設備作業用特殊車両の調達
予定時期:2014年5月

(2) 国道主要橋梁建設事業
Major Bridges Construction Project of the National Road Network

(a)事業の背景と必要性
スリランカにおいては、国内の旅客・貨物輸送の9割を道路輸送が担い、同国の経済社会活動において極めて大きな役割を果たしています。堅調な経済成長を背景にした交通需要の著しい増加を踏まえ、スリランカ政府は、道路網の整備を重視し、ドナーの支援も得つつ、老朽化した道路網の整備を重点的に進めています。

他方、全国の国道上の主要な橋梁2,000のうち、建設から100年以上経過した橋梁が3分の1以上を占めています。こうした橋の架け替えおよび新規架橋の必要性は高いものの、特に建設に高度な技術が必要な橋長30メートル以上の橋梁については、国内に十分な施工技術がないことなどから整備が進んでおらず、老朽化、幅員不足、超過負荷といった課題を抱え、同国の円滑な道路輸送を実現する上で大きなボトルネックとなっています。

(b)事業の目的と概要
本事業は、日本の優れた橋梁技術を適用し、全国の主要国道における橋梁の架け替え、新規架橋を行うことにより、道路輸送の円滑化を図り、もって経済成長の促進に寄与することを目的としています。特に、本事業では、エクストラドーズド橋の建設技術や、耐候性鋼板、鋼管矢板基礎杭工法、防水床版・エポキシ被覆鉄筋といった日本の優れた技術が活用される予定です。本件にかかる貸付資金は、橋梁の架け替え・新規架橋およびコンサルティング・サービス(詳細設計、施工監理等)の費用に充当されます。

(c)事業実施機関
港湾道路省(Ministry of Ports and Highways)
住所:9th Floor, Sethsiripaya, Battaramulla, Sri Lanka
TEL:94-11-288-7463、FAX:94-11-288-7464

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
(i) 事業の完成予定時期:2019年1月(施設供用開始時をもって事業完成)
(ii) コンサルティング・サービス(施工監理等)にかかる招請状送付予定時期: 2013年5月
(iii)本体工事にかかる国際競争入札による入札公示:
調達パッケージ:
・パッケージ1(南部地域橋梁)
・パッケージ2(中央部地域橋梁)
・パッケージ3(北部地域橋梁)
 予定時期:2014年11月

(e)JICA情報提供窓口
本事業の調達スケジュールに関する情報は、下記窓口にお問い合わせください。
国際協力機構スリランカ事務所 運輸交通セクター情報窓口
(Contact Point for Transport Sector, JICA Sri Lanka Office)
住所:10th Floor, DHPL Building, No.42, Navam Mawatha, Colombo02, Sri Lanka
TEL:+94-11-230-3700、94-11-230-0470
FAX:+94-11-230-3692、94-11-230-0473

(3)国道土砂災害対策事業
Landslide Disaster Protection Project of the National Road Network

(a)事業の背景と必要性
スリランカでは、国土の地理的条件や気候変動の影響を受け、近年豪雨による大規模な洪水・土砂災害などさまざまな自然災害に見舞われており、人命やライフラインである道路等の基盤インフラに大きな被害が生じています。特に、急速な開墾・開発が進む中央部の山岳・丘陵地域では、その脆弱な地質特性と急峻な地形条件から、急傾斜地の崩壊や地滑り等の土砂災害が頻発しています。頻発する土砂災害は、国内の旅客・貨物輸送の9割を担う道路網を含む基盤インフラへ甚大な被害を及ぼし、経済活動にも多大な影響を与えています。山岳・丘陵地域における道路の土砂災害発生状況を見ると、地盤の脆弱性に加えて、道路の拡幅・延伸工事に伴う不安定な斜面掘削や、地下水の排水設備の不備等、道路網における土砂災害対策不足も災害発生増加の一因となっています。このような状況において、同国政府は、土砂災害の発生を抑止し、人命および道路網の安全性を確保すべく、土砂災害対策を実施していますが、現時点では限定的な対策を実施するのみであり、より効果的な対策が求められています。

(b)事業の目的と概要
本事業は、土砂災害危険地域7県で土砂災害リスクの高い主要国道の斜面16ヵ所に対策工を設置することにより、基盤インフラである国道の土砂災害リスクを軽減し、道路網と周辺住民の生活の安全性の強化を通じて、スリランカの経済・社会開発に寄与します。本事業では特にリスクの高い地域をモデル地域に選定し、同地域のモデル対策工として、日本が培ってきたアンカー工法等の防災技術が適用される予定です。本件にかかる貸付資金は、国道斜面対策工の実施、早期警報システム機材の調達およびコンサルティング・サービス(詳細設計、施工監理、実施機関の防災能力強化等)の費用に充当されます。

(c)事業実施機関
港湾道路省(Ministry of Ports and Highways)
住所:9th Floor, Sethsiripaya, Battaramulla, Sri Lanka
TEL:94-11-288-7463、FAX:94-11-288-7464

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
(i)事業の完成予定時期:2017年12月(施設供用開始時をもって事業完成)
(ii)コンサルティング・サービス(施工監理等)にかかる招請状送付予定時期:2013年5月
(iii)本体工事にかかる国際競争入札による入札公示:
調達パッケージ:
・土砂災害高リスク地域における国道斜面モデル対策工
・土砂災害高リスク地域における国道斜面対策工
・早期警報システム導入
予定時期:2015年4月

(4)アヌラダプラ県北部上水道整備事業フェーズ1
Anuradhapura North Water Supply Project Phase 1

(a)事業の背景と必要性
スリランカでは全人口の87パーセントが上水道、井戸、雨水等を通じて安全な水にアクセスしていますが、上水道の普及率は全国平均で43.5パーセントと低い水準にとどまっています。同国政府は、2020年までに安全な水へのアクセス可能な人口を100パーセントとすると同時に、上水道普及率を60パーセントとすることを目標としています。

本事業の対象地域である北中部州のアヌラダプラ県北部においては、住民は飲料水を井戸等に頼って生活しています。一方、アヌラダプラ県一帯の地下水からは国の水質基準を上回る人体に有害な高濃度フッ素が検出されています。そのため、地下水を飲料水に利用することで歯牙フッ素症(歯のエナメル質に異常をきたす病気)を発症する患者が後を絶たず、健康被害が大きな問題となっています。同地域で安全かつ飲用可能な水にアクセスできる割合は10パーセントと全国平均(87パーセント)に比して著しく低くなっており、健康被害をこれ以上悪化させないためにも、地下水源を表流水源へ切り替えることが緊急の課題となっています。

(b)事業の目的と概要
本事業はアヌラダプラ県北部において、マハカナダラワ貯水池を水源とする上水道施設を整備することにより、安全かつ飲用可能な水の供給を図り、対象地域の保健・衛生水準の改善に寄与することを目的としています。また人口密度が低いといった理由から、水道管を敷設しない遠隔地においても、給水車および給水タンクを配備し、より広い地域での給水を実施することを予定しています。本件にかかる貸付資金は、取水場、浄水場、配水池、送・配水管等の整備、給水車等の車両の調達およびコンサルティング・サービス(詳細設計、施工監理等)の費用に充当されます。

(c)事業実施機関
上下水道省(Ministry of Water Supply and Drainage)
住所:No35, New Parliament Road, Pelawatta, Battaramulla, Sri Lanka
TEL:+94-11-217-7240、FAX:+94-11-217-7242

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
(i)事業の完成予定時期:2018年2月(施設供用開始時をもって事業完成)
(ii)コンサルティング・サービス(施工監理等)にかかる招請状送付予定時期:2013年2月
(iii)本体工事にかかる国際競争入札による入札公示:
調達パッケージ:
・取水場(1万8,800立方メートル/日)、浄水場(9,400立方メートル/日)、配水池、高架水槽、電気機械設備整備
・送水管、配水管(本管)整備
・配水管(支管)整備
・維持管理機械等
予定時期:2014年3月