ミャンマー連邦共和国向け無償資金協力贈与契約の調印

−経済改革や国民和解に向けた努力を後押し−

2013年3月22日

国際協力機構(JICA)は、3月22日、ミャンマー連邦共和国政府との間で、総額194億6,200万円(計10件)を限度とする無償資金協力の贈与契約(Grant Agreement:G/A)を調印しました。

調印式の様子

これらの協力は、ミャンマーが進める経済改革や国民和解に向けた努力を支援するため、ミャンマーの国民生活の向上支援や持続的経済成長のためのインフラ整備、また少数民族地域に対する支援を実施するものです。

今次調印した無償資金協力案件は以下のとおりです。

1. 二国間協力による「国民生活の向上」および「持続的経済成長のためのインフラ整備」に対する支援

(1) 病院医療機材整備計画(供与限度額11.40億円)
The Project for Improvement of Medical Equipment in Hospitals in Yangon and Mandalay

(事業の背景と必要性)
マンダレー、ヤンゴンはミャンマー北部と南部それぞれのトップレファレル病院を抱え、他の病院では処置不能な重篤患者に対応する役割を担っていますが、住民の健康改善に大きな役割を担う両市の総合病院、専門病院は、医療施設や機材の不足、老朽化等の困難に直面し、医療サービスの質が低下しています。またミャンマーは、近隣諸国と比較すると子どもと妊産婦の死亡率が高く、乳児死亡率は1000出生あたり70(2010年)(東南アジア平均は26)、5歳未満児死亡率は1000出生あたり120/102(男/女、2005年)(同41/32)、妊産婦死亡率は10万出生当たり380(2005年)(同300)となっています。

(事業の目的と概要)
本件は、高い医療技術力が求められるヤンゴンおよびマンダレー市内の病院(ヤンゴン中央婦人病院、ヤンゴン小児病院、マンダレー総合病院、マンダレー婦人病院、新マンダレー小児科病院)に、CTスキャナ、超音波診断装置、放射線診断装置、患者監視装置、保育器、手術器具、人工呼吸器、内視鏡、検査器具等の、必要な医療機材を整備するものです。本件により、本来トップレファレル病院が果たすべき医療サービスの提供が可能となり、特に母子医療のサービス改善に資することが期待されます。

(2)カレン州道路建設機材整備計画(供与限度額7.59億円)
The Project for Provision of Road Construction and Maintenance Equipment in Kayin State

(事業の背景と必要性)
カレン州では、2012年1月にミャンマー国軍とカレン民族同盟との戦闘が終結し、停戦合意に至りました。今後の和平に向けて、大量の難民・国内避難民の帰還・再定住が課題となっていますが、長年の紛争によりカレン州の開発は遅れ、住民にとっての基礎的な生活基盤であり、州内の開発事業に必要な道路整備も不十分な状況です。カレン州には多くの河川が流れており、雨季の氾濫で道路、橋梁等が深刻な洪水被害を受けていますが、近年までの治安情勢により、これらの補修・維持管理が十分に行われず、近隣地域との円滑な交通アクセスが困難となっている状況です。

(事業の目的と概要)
本事業は、カレン州における道路整備のための建設機材を整備することにより、カレン州の経済開発と難民・国内避難民の帰還・再定住の促進に資するものです。本事業により、物流が改善されてカレン州の産業が活性化し、沿道住民の生活が向上するとともに、帰還民の移動や受入れ村の整備のための物資の輸送が円滑化し、難民・国内避難民の帰還や地域の開発が促進されることが期待されます。


(3)気象観測装置整備計画(供与限度額38.42億円)
The Project for Establishment of Disastrous Weather Monitoring System

(事業の背景と必要性)
ミャンマーでは、毎年のように襲来するサイクロンの被害を受け、また大雨による洪水や土砂災害も頻発しています。特に、2008年5月に上陸したサイクロンナルギスは、13万8,000人を超える死亡・行方不明者を出し、国全体の社会経済活動に甚大な被害を与えました。

サイクロン監視に最も重要な位置であるベンガル湾沿いのチャオピューにあるミャンマー唯一の気象レーダーシステムは、老朽化により稼働を停止し、ミャンマー政府はサイクロンを直接監視する手段を失っています。また、全国各地の気象観測所での観測も、マニュアル観測であり、データの収集に時間がかかることから、気象局は有効な予警報を行うための迅速な雨量等の把握ができない状況です。気候変動による自然災害の激甚化が懸念される中、適切な災害対策を実施するため、ベンガル湾岸を含め国土の大部分を監視範囲に置くことのできる気象監視網の整備が喫緊の課題となっています。

(事業の目的と概要)
本事業は、ヤンゴン、チャオピュー、マンダレーにおける気象レーダーシステムの整備、全国30ヵ所における自動気象観測システム(AWS)の整備等により、ミャンマーの気象監視能力を強化し、サイクロンや大雨などの気象災害への対応能力の向上を図るものです。本事業により、より正確で早期の警戒情報の発信が可能となり、災害対策や避難活動支援が適時に開始され、サイクロン等の気象災害による被害が軽減されることが期待されます。

(4)全国空港保安設備整備計画(供与限度額12.33億円)
The Project for Improvement of Nationwide Airport Safety and Security

(事業の背景と必要性)
ミャンマーにおける航空需要は年々増加しており、今後経済発展に伴い更に航空分野の重要性が高まることが確実となっていますが、ミャンマーの空港においては、航空機の安全運航に必要な航空保安施設やテロ等を防ぐための空港セキュリティ機材の整備は大きく遅れています。特に、同国の地方空港の多くは未だ十分な無線施設を持たず、低精度の計器飛行や目視による有視界飛行による運航が行われ、天候の急変等の事態に対応することができず、また、セキュリティ検査についても、一部の地方空港では爆発物の検査機材が設置されていない等、検査体制が十分ではありません。

(事業の目的と概要)
本事業は、ミャンマーの主要空港(ヤンゴン、マンダレー、ニャンウー、ヘホー、タンダウェおよびダウェー)において、ICAOの安全基準を満たすため、VHF全方向レンジ・距離測定装置、飛行方式設計システム、各種航空灯火、通信制御装置等、航空交通の安全性向上に関する機材ならびに消防車両、X線検査装置、爆発物検査装置等、空港の保安に関する機材の整備を行うことにより、航空分野における安全性の向上に寄与するものです。本事業により、航空輸送の安全性および信頼性が向上するとともに、効率的な航空路の設定により、域内の航空交通量増加への対応が可能となることが期待されます。

(5)バルーチャン第二水力発電所補修計画(供与限度額66.69億円)
The Project for Rehabilitation of Baluchaung No.2 Hydropower Plant

(事業の背景と必要性)
ミャンマーにおいては、発電施設の老朽化、火力発電の燃料不足、乾季における水量の低下に伴う水力発電の出力制約等により、慢性的な電力不足に陥っており、最大の電力需要地であるヤンゴン都市圏においても頻繁に停電が発生し、わが国企業を含む現地の企業や施設の多くが自家発電等によって電力不足に対応している状況です。近年の経済成長により、電力需要は今後も増加することが見込まれ、電力供給設備の更なる拡充とともに、電源構成の74パーセントを占める既存の水力発電所による安定供給を確実に継続していくことが重要な課題となっています。

バルーチャン第二水力発電所は、総出力168メガワットを有し、年間発電電力量は全国の総発電電力量の約10パーセントを占め、豊富な水源により年間を通じた安定したベースロード電源の発電所として位置づけられています。同発電所は、1960年に運転を開始して以来の連続稼働運転による機器の劣化、老朽化が進んでおり、同発電所の安全かつ安定的な稼働を維持し、供給不足であるミャンマーの電力事情を更に悪化させることがないようにするため、早急な機器の補修および更新が必要となっています。

(事業の目的と概要)
本事業は、同発電所の発電設備、変電設備や水圧鉄管の補修および更新を行い、原形復旧・機能回復を図ることにより、発電所の安全かつ安定的な電力供給を確保するものです。本事業により、同発電所の信頼性・安全性が維持され、ミャンマーのベースロード電源である水力発電所による電力供給量の確保に寄与し、主要需要地であるヤンゴン都市圏および同発電所が位置する周辺地域において、社会経済活動に不可欠な電力の供給が安定的に維持されることが期待されます。

(6)ヤンゴン市フェリー整備計画(供与限度額11.68億円)
The Project for Upgrading Ferryboat in Yangon City

(事業の背景と必要性)
ヤンゴン中心部とヤンゴン河を挟んだダラー地区を結ぶフェリー航路は、1日平均約3万2,000人以上が利用しており、特に朝、夕のピーク時には、定員超過が常態化しています。また現在就航しているフェリーは老朽化が進み、いずれも船体の傷みが激しく、浸水も度々発生し、年に3ヵ月間のドック入りが必要となっており、公共輸送を担うフェリーとしては危険な上、安定した運航が困難な状況となっています。本航路は流れも速く、近くにヤンゴン港があり大型船も多いところ、一度事故が起これば大きな被害が発生する可能性があります。ダラー地区は一般の勤労者や低所得者層が多く居住する地域であり、経済発展を続けるヤンゴンの市内交通網の整備の一環として、これら住民も多く利用する公共交通機関であるフェリーの整備が、重要な課題となっています。

(事業の目的と概要)
本事業は、ヤンゴン河渡河のための新規のフェリー3隻を整備することにより、老朽化した既存船の代替による安全性向上を図り、ヤンゴンの市内交通の改善に資するものです。本事業により、渡河交通の安全性と信頼性が向上し、ヤンゴン市民の生活環境が改善することが期待されます。


2.国際機関との連携による少数民族地域に対する支援

(1) 少数民族地域における食糧支援計画(WFP連携)(供与額20億円)
The Project of Food Aid in Ethnic Minority Areas

(事業の背景と必要性)
少数民族地域においては、紛争や自然災害の被害、経済開発の遅れによる貧困等により、多くの人々が食糧不足、栄養不良に苦しんでいるとともに、基礎的なインフラも整備が遅れ、劣悪な状況にあります。

(事業の目的と概要)
本事業は、世界食糧計画(WFP)と連携し、少数民族地域(ラカイン州、チン州、カチン州、シャン州、カヤー州、カレン州、モン州等)において、緊急食糧支援およびフード・フォー・ワーク(労働の対価として食糧を配布するもの)による基礎インフラ整備を行うことで、対象地域住民の生活向上を図り、コミュニティの開発を促進するものです。本事業により、対象地域住民約100万人の栄養状態が改善されるとともに、住民参加による基盤インフラの整備とそれを通じたコミュニティの強化につながることが期待されます。

(2) 少数民族地域における地方行政能力、生計および社会統合向上計画(UNDP連携)(供与額13億円)
The Programme for Strengthening Local Governance Capacity、 Livelihoods and Social Cohesion in Ethnic Minority Areas

(事業の背景と必要性)
少数民族地域においては、国内避難民や難民の帰還に伴い、今後の社会の再統合と安定した発展に向けて、住民の生計手段の確立、地方自治体による適切な住民サービスの提供や地域レベルでの開発事業の実施、再統合されたコミュニティにおける各種の法的手続や紛争の解決およびその過程での弱者の保護等が課題となっています。

(事業の目的と概要)
本事業は、国連開発計画(UNDP)と連携し、ラカイン州、カチン州、カヤー州、カレン州、シャン州、チン州において、住民に対する行政サービスの改善や効果的な地域開発事業を実施するための研修・ワークショップ等による地方政府の行政能力の強化、職業訓練等による地域住民の生計向上支援、地域の社会統合に向けて法律に関する手続や権利についての住民の知識・理解を深めるための啓発活動等を行うものです。本事業により、対象地域の地方自治体の能力が向上し、対象地域の住民約21.5万人の生活が向上するとともに、住民の各種権利が適切に保護され、難民・国内避難民の帰還によって再統合されたコミュニティの強化につながることが期待されます。

(3) 少数民族地域におけるコミュニティ開発・復旧計画(UN-HABITAT連携)(供与額7億円)
The Programme for Development and Rehabilitation of Community in Ethnic Minority Areas

(事業の背景と必要性)
カチン州、シャン州では多くの国内避難民が発生している他、住宅、道路、公共施設等の基礎インフラが戦闘により荒廃し、劣悪な状況におかれています。また、チン州は、交通アクセスの悪さ等から政府や国際社会の支援が最も入りにくく、ミャンマーの中でも最も貧困率が高い州であり、基礎インフラの整備が極めて遅れています。

(事業の目的と概要)
本事業は、国際連合人間居住計画(UN-HABITAT)と連携し、これら3州において橋梁・道路等のコミュニティ・インフラの復旧や、河川水供給システムや雨水収集タンクの設置等水と衛生の改善事業を、住民参加型によって行うものです。本事業により、対象地域のコミュニティ・インフラが改善され、約5万世帯(25万人)の生活環境が復旧・改善されるとともに、住民参加型による事業を行うことにより、コミュニティの一体性が強化されることが期待されます。

(4) 少数民族地域における避難民支援計画(UNHCR連携)(供与額6.51億円)
The Programme for Assistance to Displaced Persons in Ethnic Minority Areas

(事業の背景と必要性)
ラカイン州やカチン州においては、新たに多くの国内避難民が発生しており、その他の地域においても依然として国境付近には多数の避難民や無国籍者が存在し、避難民や無国籍者の人権状況や生活環境の改善のため、適切な保護や更なる人道的支援が求められています。

(事業の目的と概要)
本事業は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と連携し、国内避難民や無国籍者が存在するラカイン州、カチン州、カレン州、カヤー州、モン州、シャン州、タニンダーリ地域において、各地域の状況に応じ、避難民・無国籍者の特定・登録、日用品等の必要物資の支給、教育・保健サービス等の提供支援、緊急時のシェルターの提供等を行うものです。本事業によって、対象となる約43万人の人権状況および生活環境が改善され、緊急時には避難者の身体の安全が保たれることが期待されます。特にラカイン州においては、ラカイン族とベンガル系住民の双方にバランスよく支援を行うことにより、生活環境の改善と将来の平和的共存につながることが期待されます。


(参考)
ミャンマーは、面積約68万平方キロメートル(日本の約1.8倍)、人口6,242万人(2011年IMF推定)、人口1人当たりGDP(国民総所得)は832ドル(2011年IMF推定)。