カンボジア王国向け円借款契約および贈与契約の調印

−インフラ整備および人間開発を通じてカンボジアの持続的成長を支援−

2014年7月10日

国際協力機構(JICA)は、7月10日、カンボジア王国の首都プノンペンにて同国政府との間で、合計137億8,500万円を限度とする円借款貸付契約3件、および8億5,100万円の贈与契約1件を調印しました。対象事業は、円借款は「プノンペン首都圏送配電網拡張整備事業」「国道5号線改修事業(プレッククダム−スレアマアム間)(I)」「プノンペン南西部灌漑・排水施設改修・改良事業」、無償資金協力は「プノンペン前期中等教育施設拡張計画」です。

署名後、握手を交わすオーン・ポーンモニロット経済財政大臣(右)と井﨑宏JICAカンボジア事務所長

カンボジアは、1991年の内戦終結後、わが国を含む国際社会からの支援も受けながら、復興段階から中長期的な開発段階へと移行しています。特に2010年以降の経済成長率は年6〜7パーセントと、安定して高い経済成長を達成しています。

その一方で、同国の貧困率は改善傾向にあるものの25.8パーセントと依然として高い水準にあり、将来にわたってカンボジアが着実かつ持続的な成長を続けるためには、今後の成長を見据えたインフラ整備と、教育が特に重要な課題となってきます。カンボジア政府は「国家戦略開発計画」(National Strategic Development Plan、以下NSDPという)において策定された四辺形戦略に、「インフラのリハビリ・建設」と「能力構築と人間開発」を掲げており、今回調印した事業は、このような開発計画を踏まえて同国のインフラ整備・人間開発を支援するものです。

今次調印した円借款(3件)および無償資金協力(1件)の特徴は以下のとおりです。

【円借款】

(1)プノンペン首都圏における電力の安定供給へ寄与

カンボジア経済は近年安定した成長を続けていますが、経済成長に伴って電力需要も急速に拡大しており、2003年から2010年までの電力販売量は年平均で20パーセントを超える伸びを見せています。とりわけプノンペン首都圏は経済・社会の中心地となっており、同地区の電力安定供給確保はNSDPにおいても最優先課題の一つとされています。プノンペンでは、送配電システム容量の制約や系統制御システムの未整備から停電発生時における停電エリアが広がっており、復旧にも長時間を要している状況です。円借款「プノンペン首都圏送配電網拡張整備事業」は、設備の拡充を通して、電力供給の改善に寄与するものです。

(2)基幹道路の整備による物流の改善

カンボジアでは、1991年まで続いた内戦で多くの道路や橋梁が破壊されました。内戦終了後、わが国を含む国際社会の支援で修復が行われましたが、その多くが簡易舗装であったため、舗装劣化や幅員不足といった問題が起きています。今後のカンボジアおよび域内経済の発展に伴い、増加する国内・国際物流に対応可能な道路規格に改修することが必要となっています。

首都プノンペンとタイ国境を結ぶ国道5号線は、カンボジアの基幹道路であるだけでなく、アジアハイウェイ(注1)1号線および南部経済回廊の一部であり、メコン地域の産業大動脈として機能することが期待されています。円借款「国道5号線改修事業(プレッククダム−スレアマアム間)(I)」では、国道5号線のうち、首都プノンペンに近く交通量も多いプレッククダム-スレアマアム間の道路改修・拡幅、およびコンポンチュナン市街、オドン市街を迂回するバイパス道路を整備することにより、対象地域における輸送能力の増強や輸送効率の改善を図ります。

(3)灌漑施設整備による農業生産性の向上

カンボジアの主要産業である農業は、農産物・農産加工品の国内販売や近隣国輸出により、今後もカンボジア経済を牽引することが期待されます。23ある州のうち、南西部の4州(コンポンチュナン州、コンポンスプー州、タケオ州、カンダル州)だけで、カンボジア全土の米生産量の約3割を占めていますが、灌漑用水が安定的に供給されないことから、低い生産性が課題となっています。

円借款「プノンペン南西部灌漑・排水施設改修・改良事業」により、老朽化や維持管理不足により十分機能していない灌漑排水施設を改修・整備し、対象地区の農業生産性の増加を図り、農民の生活向上を目指します。


2014年度中に開始予定の「流域水資源利用プロジェクト」(技術協力)では、本事業の円滑な実施・管理を目的とし、本事業対象流域における水資源調整の支援を行う予定です。また、2010年よりカンボジア農林水産省に対して「トンレサップ西部地域農業生産性向上プロジェクト(APPP)」(技術協力)を通じて営農活動にかかる技術協力を実施していることから、本事業の実施機関である水資源気象省と農林水産省との緊密な連携を図りながら、技術協力の成果を活用して、農民に対する営農指導を引き続き実施していく予定です。

さらに、現在実施中の「流域管理灌漑および開発能力改善プロジェクト」(技術協力)において、実施機関職員に対する灌漑施設の計画、設計、施工管理、維持管理に関する研修を行っています。本事業では、同事業を通じて技術を習得した職員らが、本事業の施工管理や、完成後の維持管理に携わっていく予定です。

【無償資金協力】

(4)プノンペンの前期中等教育の質の改善

1970年代からの内戦に起因する教員の減少、学校施設の破壊、教科書・教材の廃棄などにより、カンボジアの教育は壊滅的な打撃を受けました。その後、復興・改善の努力が続けられ、初等教育については総就学率123.4パーセント(2012/13年度)まで増加するなどの成果を上げている一方で、前期中等教育(注2)の総就学率は依然として53.6パーセント(2012/13年度)と低くとどまっており、産業人材育成に欠かすことのできない後期中等教育や高等教育への進学数増加を阻害する要因となっています。また、首都プノンペンにおいては、急速な人口増加のため前期中等教育施設が不足しており、1教室あたり生徒数は65.5人(全国平均46.3人)と過密状態にあります。そのため、これらの学校ではシフト制(2部制または3部制)の授業を行うしかなく、その結果カリキュラムで規定された授業時間を満たすことができず教育の質の低下を招いており、教室数の拡充が喫緊の課題となっています。

無償資金協力「プノンペン前期中等教育施設拡張計画」では、プノンペンの八つの前期中等教育施設を拡張し、学習環境を改善することにより、前期中等教育の質の改善を目指すものです。


(注1)アジア32ヵ国を結ぶ幹線道路網で、総延長距離は約14万キロメートル。
(注2)カンボジアの教育制度は、普通教育制度(初中等レベル)は、6年間の初等教育、3年間の前期中等教育、3年間の後期中等教育と、日本と同じ6-3-3制で、憲法上、初等教育は義務教育。


(参考)
【円借款】

借款金額および条件

案件名 借款金額
(百万円)
金利(%/年) 償還期間
(年)
据置期間
(年)
調達条件
本体 コンサルティング・サービス
プノンペン首都圏送配電網拡張整備事業 6,480 0.01 0.01 40 10 一般アンタイド
国道5号線改修事業(プレッククダム−スレアマアム間)(I) 1,699 0.01 0.01 40 10 一般アンタイド
プノンペン南西部灌漑・排水施設改修・改良事業 5,606 0.01 0.01 40 10 一般アンタイド

【無償資金協力】

【画像】