チュニジア共和国向け円借款契約の調印

−「アラブの春」後の新しいチュニジアを支援−

2014年7月18日

国際協力機構(JICA)は、7月17日、チュニジア政府との間で「メジェルダ川洪水対策事業」に対して、またチュニジア電力・ガス公社(STEG)との間で「ラデス・コンバインド・サイクル発電施設建設事業」に対して、計2件、総額484億7,300万円を限度とする円借款貸付契約に調印しました。

調印後、握手を交わすモンジ・ハムディ外務大臣(右)と田中明彦JICA理事長

北アフリカに位置するチュニジアでは、2011年1月に「アラブの春」の発端となった革命が発生しました。その後、10月に制憲国民議会選挙が実施され、憲法制定についての議論の末、本年1月に憲法が制定されました。この秋に実施される予定の国民議会選挙および大統領選挙後に発足する新政権が、革命後のチュニジアの開発を担うことになります。

一方で、革命の原因となった、失業率の高さ(特に若年層)や地域間格差はいまだに改善が見られず、引き続きチュニジア政府が取り組むべき喫緊の課題となっています。

このような状況の下、今次円借款では、洪水対策と電力供給増強による民生の向上と社会の安定を支援します。今回調印した円借款の特徴は以下のとおりです。

(1)洪水被害の軽減および地域住民の生活環境の改善に貢献

メジェルダ川はチュニジアの最大河川で、その流域では農業や農産加工業が盛んです。一方、近年、地球温暖化の影響と見られる集中豪雨が頻発し、河川の氾濫による洪水被害により、流域住民の生活や流域の経済活動に大きな影響が出ています。

「メジェルダ川洪水対策事業」では、JICAが2006年度より実施した開発調査で、優先度が最も高いとされた、メジェルダ川の最下流部および川の北側に広がるエルマブトゥ遊水地を対象とした河川改修や橋梁の新設・移設を行います。10年に一度の大洪水の被害を食い止め、流域住民の生活環境を向上し、さらには流域の経済活動への影響を最小化すること目的としています。

本事業形成の段階では東京大学が、メジェルダ川の流出解析を行いました。同大学は、最先端の流出解析モデルを用いて、本事業の事業計画に必要な基本高水流量を設定するとともに、気候変動を加味した洪水被害の変化の分析やダム放流のリアルタイム最適化手法の検討を行いました。わが国の気候変動に関する知見が十分に活用されたこれらの分析・調査は、今後気候変動の影響を強く受けるといわれているチュニジア国の関係者から高い評価を得ています。

また、本事業には、物理的な河川改修だけでなく、ダム管理システムの効果的運用計画の策定や、住民による水防組織や避難体制の構築支援等が含まれています。加えて、JICAは、2015年3月に仙台で開催される国連防災世界会議に先立ち、本事業対象地域の防災を担う関係者を対象にわが国の防災の経験の共有・活用を目的としたセミナーの実施を予定しています。

(2)伸び続ける電力需要に対応

チュニジアでは、年率約7パーセントで電力需要が増加しており、近い将来、電力不足が原因で大規模な停電の発生する可能性が高い状況です。そこで、STEGは、国民に節電を呼びかけると同時に、発電所の建設を積極的に進めています。

このような状況の中、「ラデス・コンバインド・サイクル発電施設建設事業」では、430メガワットから500メガワット級の発電施設の建設を支援し、2017年にガス・タービンが、2018年にはコンバインド・サイクルが運転を開始する予定です。新規発電所が電力を安定的に供給することにより、2017年に予測される電力需要の供給能力超過と、電力不足による経済活動の停滞を回避することを目指しています。

また、コンバインド・サイクル発電は、従来のガス・タービンや蒸気タービン単独の発電に比べて発電効率が高く、温室効果ガスの排出削減に貢献します。

2013年11月には、日本貿易振興機構(JETRO)が、本事業のチュニジア側関係者を日本に招聘し、わが国の優れた技術を紹介する等、オール・ジャパンで連携して案件形成を行いました。STEGは30年程前から日本製のプラントを運営しており、その技術・性能を高く評価しており、今後も日本の技術の活用が期待されています。

(参考)

1. 借款金額および条件

案件名 借款金額
(百万円)
金利(%/年) 償還期間
(年)
据置期間
(年)
調達条件
本体 コンサルティング・サービス
メジェルダ川洪水対策事業 10,398 0.6 0.01 40 10 一般アンタイド
ラデス・コンバインド・サイクル発電施設建設事業 38,075 0.6 - 40 10 一般アンタイド


(1)メジェルダ川洪水対策事業
Mejerda River Flood Control Project

(a)事業の背景と必要性
チュニジアは、年間平均降雨量が500ミリメートルと少なく、国土の半分が半乾燥気候条件下にあります。メジェルダ川は通年で流水を維持する同国唯一の河川であり、比較的豊富な降雨量と肥沃な農地を背景に、小麦生産・畜産業、食品加工等の企業活動も活発な地域であることから、同流域の農業はチュニジア経済にとって大きな役割を果たしており、また、同国の食糧安全保障上も重要です。一方、メジェルダ川流域では、近年、頻繁に洪水が発生し、中でも2003年1月や2012年2月の洪水は、流域で大きな被害が発生しました。こうした大規模洪水は、農作物、インフラ設備や家屋等の物質的損失にとどまらず、経済活動の停滞や災害をきっかけとした貧困の増加等、経済的・社会的損失を伴うことから、メジェルダ川の洪水対策はチュニジアの経済開発を円滑に進める上での喫緊の課題となっています。

(b)事業の目的と概要
チュニジア北部を流れるメジェルダ川流域を対象に河川改修等のインフラ整備を行うことにより、同流域における洪水対策機能の強化を図り、もって洪水被害の軽減および地域住民の生活環境の改善を図ることを目的としています。

借款資金は河川改修事業や橋梁の新設および移設等に充当されます。

(c)事業実施機関
農業省ダム・大規模水理土木総局(Ministry of Agriculture Direction Générale des Barrages et des Grands Travaux Hydrauliques (DG/BGTH))
住所:30, Rue Alain Savary, 1002 Tunis, Tunisia
TEL : +216-71-791764  FAX : +216-71-840289

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
(i)事業の完成予定時期:2022年9月(供与開始時をもって事業完成)
(ii)コンサルティング・サービス(詳細設計等)にかかる招請状送付予定時期:2014年9月
(iii)本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:
調達パッケージ名:土木工事(計3ロット)
予定時期:2016年10月

(2)ラデス・コンバインド・サイクル発電施設建設事業
Rades Combined Cycle Power Plant Construction Project

(a)事業の背景と必要性
チュニジアでは、経済成長に伴い国内での電力需要も増加しており、チュニジア政府は新規電源開発に積極的に取り組んでいます。チュニジア政府は再生可能エネルギーの導入にも取り組んでいますが、現時点では総発電容量(3,496メガワット)に対して、火力発電が大部分を占めています(火力発電97パーセント、水力発電2パーセント、風力発電1パーセント)。

STEGによるチュニジア全体の電力需要予測によれば、2012年から2016年において、年平均7.1パーセントの需要増が見込まれています。今後の電力需要増に対応するため、STEGは2014年および2015年の稼働を目指してチュニジア中部のスースに2基の新規火力発電所の建設を進めています。しかし、同発電所が稼働しても、2016年には電力供給不足が見込まれており、電力供給不足の解消には新規電源開発をさらに進めていくことが不可欠となっています。

(b)事業の目的と概要
首都近郊のラデスに高効率ガス・コンバインド・サイクル発電施設を建設することにより、発電能力の強化および電力の安定的な供給を図ることを目的としています。

借款資金は、コンバインド・サイクル発電施設建設に充当されます。

(c)事業実施機関
チュニジア電力・ガス公社 (Société Tunisienne de l’Electricité et du Gaz (STEG))
住所:38, Rue Kamel Ataturk, 1080 Tunis, Tunisia
TEL: +216-71-341311、FAX: +216-71-330174

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
(i)事業の完成予定時期:2018年8月(コンバインド・サイクル発電施設の仮引渡をもって事業完成)
(ii)コンサルティング・サービス:本事業においては、円借款によるコンサルタント雇用は予定していません。
(iii)本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:公示済