ペルー共和国向け円借款契約の調印

−日本の技術活用が期待される再生可能エネルギー開発に貢献−

2014年11月10日

調印式の様子

国際協力機構(JICA)は11月7日、ペルー共和国の首都リマにて、ペルー共和国政府との間で「モケグア水力発電所整備事業」を対象とし69億4,400万円を限度とする円借款貸付契約、および「ペルー沿岸部洪水対策事業」を対象とし24億8,000万円を限度とする円借款貸付契約に調印しました。

中南米諸国中第5位の人口(約3,000万人)を抱えるペルーは、銀、銅、亜鉛、鉛、金、モリブデン等の鉱物資源において,世界屈指の生産量を誇り、農水産資源にも恵まれたアンデス地域の重要国の一つです。近年順調な鉱物資源の輸出にけん引され、安定した経済成長を維持しています。2011年7月28日に就任したウマラ大統領は、高成長を達成してきたマクロ経済政策を維持しつつも、より貧困層に焦点を当てた「社会的包摂」を重要な開発政策と位置づけ、貧困対策・格差是正、社会セクター支援、インフラ整備、環境保全等に積極的に取り組んでいます。特に、インフラ整備の促進は、持続的な経済成長のみならず、格差是正を進める環境整備の一環としても重要です。さらにペルーは自然災害に対しぜい弱で、自然災害による人的・経済的被害は同国の持続的な経済社会開発にとって大きな脅威として認識されています。そのため自然災害への対応力を予防・減災・復興の各段階において強化することもペルーの発展において不可欠です。今回貸付契約を調印した2事業は、これらの開発ニーズに応えるものです。

今次貸付契約が調印された2件の円借款事業は、以下のとおりです。

(1)本邦技術を活用し再生可能エネルギーの開発を促進
「モケグア水力発電所整備事業」は、ペルー国南部のモケグア州において、水力発電所および関連施設を整備することにより、同国中央部から長距離送電される電力への依存度を減らし、南部地域の電力供給の安定性を高めるものです。

ペルー政府は、モケグア州においては農業生産拡大のための灌漑(かんがい)施設整備を目的とする「パストグランデ地域開発計画」(以下「PG計画」という。)を実施中ですが、本事業で建設する水力発電所は、PG計画対象地にある貯水池の下流で、灌漑用水を利用して発電を行う予定です。一年を通じて貯水量は安定していることから、季節に左右されることなく年間を通じて安定的な発電が可能となります。

また、発電後の放流水は再度灌漑水路に提供するため、発電過程の水質保全が重要となる点に着目し、本事業においては、水質汚染対策等の環境配慮の観点から、水量を調節する水車の入口弁等に油圧式ではなく、電動の制御装置を導入する工夫が施されます。この制御装置は電動サーボモータと呼ばれ、日本が優れた技術力を有している装置であり、本事業において、同技術の活用が期待されています。


(2)洪水対策のための河川整備により農村住民の生活環境を改善
ペルーは、日本と同様に環太平洋火山帯に位置し、多様な自然災害リスクを抱えています。特に、エルニーニョ現象に伴う洪水・土砂災害等の被害は、ペルーの経済・社会開発の大きなリスクとなっており、治水インフラの整備等を通じた洪水リスクの軽減は、ペルーの持続的な経済開発のために喫緊の課題となっています。「ペルー沿岸部洪水対策事業」は、同国沿岸部の3河川流域において、洪水対策のための護岸工事や灌漑施設整備などを実施することにより、対象地域における洪水リスクの軽減を図ります。

JICAは災害多発国であるペルーに対して、防災行政を担う首相府との間で防災主流化促進を目的としたMOUを締結し(2014年3月)、災害復旧スタンドバイ借款(2014年3月L/A調印)に続いて、災害リスク管理強化に資する本事業への支援を検討してきました。本事業はペルーにおける洪水対策のパイロット事業として期待されており、その成果は、今後同国において順次活用される見込みです。更に、同国の防災主流化に必要な政策・制度を提言する調査を現在実施中で、同調査結果に基づき災害に強い国づくりに必要な事前投資がペルー政府により検討・実施されることが期待されています。

【参考】 借款金額および条件

案件名 借款金額
(百万円)
金利(%/年) 償還期間
(年)
据置期間
(年)
調達条件
本体 コンサルティング・サービス
モケグア水力発電所整備事業 6,944 0.40 0.01 20 6 一般アンタイド
ペルー沿岸部洪水対策事業 2,480 0.40 0.01 20 6 一般アンタイド

(1) モケグア水力発電所整備事業
Moquegua Hydro Electric Power Plants Construction Project

(a)事業の背景と必要性
ペルーでは近年の堅調な経済成長を背景に、エネルギー鉱山省の予測によると2013〜2022年には年8.2%の電力需要増が見込まれており、2030年には電力・供給能力を現在の約3倍に増やす必要があるとされています。特に、南部地域では、水力発電の稼働が低下する乾季には電力需要の半分以上を、電源の多い中央部からの送電で賄っている他、鉱物資源開発に伴って電力需要増が見込まれることから、同地域の発電能力強化は喫緊の課題となっています。

(b)事業の目的と概要
本事業は、ペルー共和国モケグア州において、水力発電所(2ヵ所、計約33メガワット)および関連施設を整備することにより、同地域の安定的な電力供給に貢献するとともに、電源構成の多様化促進及び気候変動対策に寄与するものです。

借款資金は、水力発電所および関連施設建設のための土木工事、資機材調達、コンサルティング・サービスに充当されます。

(c) 事業実施機関
南部発電公社(Empresa de Generación Eléctrica del Sur S.A. 〈EGESUR〉)
住所: Av. Ejército SN, Para, Grande Tacna, PERU
Tel: +(51)-052-315300, Fax: + (51)052-315290

(d) 今後の事業実施スケジュール(予定)
i. 事業の完成予定時期:2021年1月(保証期間終了後の施設供用開始時をもって事業完成)
ii.コンサルティング・サービス(詳細設計、入札補助、施工監理等)に係る招請状送付予定時期:2014年11月
iii.本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージの入札公示:
調達パッケージ名:土木工事及び資機材調達
予定時期:2016年4月


(2)ペルー沿岸部洪水対策事業
River Basins Flood Protection Project in Coastal Area of Peru

(a)事業の背景と必要性
ペルーは、洪水、地震、地滑りなど多様な自然災害リスクを抱えていますが、最も発生頻度の高いのは洪水です。2003年から2011年にかけて、洪水は毎年200件以上発生し、数万人から数百万人もの被災者が生じました。特に、数年周期のエルニーニョ現象の発生年は大規模な洪水被害が発生するリスクが高く、1982年から83年、1997年から98年に発生したエルニーニョ現象では、各地で豪雨による洪水・土砂災害が多発し、人的、経済的に大きな被害が生じました。
豪雨により洪水が発生すると農業生産は深刻な影響を受け、地域住民、特に生活基盤がぜい弱な低所得者層の生活が脅かされるため、流域全体の治水インフラ整備による洪水リスクの軽減は、ペルーの持続的な経済開発のために喫緊の課題となっています。

(b)事業の目的と概要
本事業は、ペルー沿岸部のリマ州及びイカ州の3河川流域において、河川改修などの洪水対策を実施することにより、対象地域における洪水リスクの軽減を図り、もって同地域の持続的な経済開発及び地域住民の安全性の確保に寄与するものです。 

借款資金は、河道掘削、築堤・護岸工事、植林等に係る土木工事及びコンサルティング・サービスに充当されます。

(c) 事業実施機関
農業灌漑省 灌漑サブセクタープログラム
(Programa Subsectorial de Irrigaciones(PSI),
Ministerio de Agricultura y Riego)
住所: Calle Teniente Emilio Fernandez 130,
Santa Beatriz - LIMA 1 Central, PERU
Tel: +(51-1)424-4488, Fax: +(51-1)433-2055

(d) 今後の事業実施スケジュール(予定)
i. 事業の完成予定時期:2018年5月(施設供用開始時をもって事業完成)
ii. コンサルティング・サービス(入札補助、施工監理等)に係る招請状送付予定時期:2015年3月
iii.本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージの入札公示
調達パッケージ名:カニェテ川サブプロジェクト、チンチャ川サブプロジェクト、ピスコ川サブプロジェクト
予定時期:2015年10月