インド向け円借款契約の調印:インドの社会・経済のさらなる発展を総合的に支援

2016年3月31日

署名式の様子

国際協力機構(JICA)は、2016年3月31日、インド政府との間で計5件、総額1,751億600万円を限度とする円借款貸付契約に調印しました。

インド政府は、国家開発計画である第12次5ヵ年計画(2012年4月〜2017年3月)において、「Faster, Sustainable and More Inclusive Growth」(「より早く、より安定的で、より包摂的な成長」)を目標として掲げています。インドの社会・経済の発展には、最重要であるインフラ整備から、急速な経済成長と都市化に伴う社会的・環境上の課題への対応、貧困削減まで、多様な課題が存在します。

このような状況を背景に、2015年12月にニューデリーで実施された日印首脳会談では、わが国政府が政府開発援助(ODA)を活用してインドの社会・経済のさらなる発展を引き続き積極的に支援していくことが確認されました。

JICAは、今般円借款契約が調印された各事業への支援を通じ、こうしたインド政府の開発政策および日本政府の援助方針に沿ったインドにおける社会経済開発を多面的に支援していきます。

各事業の特徴は以下のとおりです。

(1)貧困率の高いオディシャ州に安定的な下水道サービスを提供

インドは、都市部全人口への下水・衛生施設の提供を政策目標として掲げていますが、人口増加や経済発展に伴う水道使用量の増加に対し下水道整備が追いついておらず、汚水の垂れ流しの結果、悪臭や害虫の発生、低地の冠水、河川の水質汚濁等、地域住民の衛生・生活環境の悪化を招いています。

「オディシャ州総合衛生改善事業(第二期)」は、貧困率が高く下水道施設がほとんど整備されていないオディシャ州ブバネシュワール市(州都)及びカタック市(旧州都)において、下水処理場(処理量1億リットル/日)や下水管(総延長672km)等の下水道施設・雨水排水施設を整備し、貧困層を含む同市住民の衛生・生活環境の改善を図るものです。

(2)貨物専用鉄道の建設を通じて物流ネットワークの効率化を支援

インドでは、近年貨物輸送量が急激に伸びており、現在の貨物鉄道はインド国鉄の旅客線と線路を併用していることから、輸送能力が限界に近づいているため、貨物専用鉄道路線の整備が喫緊の課題となっています。

「貨物専用鉄道建設事業(フェーズ1)(第三期)」は、インド政府が計画している貨物専用鉄道の建設予定区間のうち、特に今後貨物輸送が急増すると見込まれているグジャラート州、ラジャスタン州及びハリヤナ州の主要都市を結ぶ区間を整備することにより、当該地域の物流ネットワークの効率化を図り、もってインド国内の広範な経済発展に寄与するものです。

(3)点滴灌漑を活用してジャルカンド州の農家の園芸栽培を支援

インドは、農業生産の拡大を通じた貧困削減のため、灌漑事業の強化を政策目標として掲げています。しかし、経済成長に伴う都市用水・工業用水などの需要の増加により、水資源の需給が逼迫することが予測されている一方で、農業における水利用効率(灌漑効率)は全国規模で38%と低い状況です。

「ジャルカンド州点滴灌漑導入による園芸強化事業」は、降雨量の年較差が大きく、州内の水資源が乏しいインド東部のジャルカンド州において、小規模零細女性農家30,000世帯に点滴灌漑(農作物の生産に必要な水量を土壌表面や根に直接供給する節水灌漑方法)、ビニール育苗施設及び堆肥施設を設置すると共に、園芸作物栽培及びマーケティングに関する技術支援を行うことにより、灌漑率及び灌漑効率の向上、農業生産性向上及び作物多様化を図るものです。なお、本事業は、貧困層に属する女性農家の世帯を対象としており、対象地域における女性の社会参加促進も目指しています。

(4)タミル・ナド州の保健医療システム向上に貢献

インドでは、政府主導でユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(注1)の実現が掲げられ、感染症対策プログラム等が実施されてきたことにより、感染症の発生件数の減少等、保健指標に改善が見られています。一方で、インド国内における主な死因の上位を占める心血管疾患やがんなどの非感染性疾患(Non Communicable Diseases: NCDs)の割合は年々増加しています。

「タミル・ナド州都市保健強化事業」は、都市化の進むタミル・ナド州において、優先度の高い17都市の医療施設に対し、NCDs対策に向けた医療施設・機材の整備及び医療従事者の能力強化等を行うことにより、都市保健医療システムの改善を図り、同州住民の健康増進に寄与するものです。

(注1)ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)とは、「すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる」ことを指します。

(5)大幅な電力需要の増加が見込まれるマディヤ・プラデシュ州の電力供給安定化を支援

インドでは、第12次5ヶ年計画(2012年4月〜2017年3月)において、電力セクターの組織・制度改革、新規電源開発、送配電設備増強及び地方電化を政策目標として掲げています。しかしながら、堅調な経済発展に伴う電力需要の拡大に設備整備が追いついておらず、慢性的な電力供給不足、送電網整備の遅れ、高い送配電ロス率等が課題となっています。そのため、更なる発電能力の増強と送電系統の安定化のための適切な投資が必要不可欠となっています。

「マディヤ・プラデシュ州送電網増強事業」は、近年急速に産業化が進み、今後都市のみならず地方部にも大幅電力需要の増加が見込まれるマディヤ・プラデシュ州の全域に対し、送電線の敷設や変電所の新増設等を通じて送変電網の増強等を行い、同州の電力系統の安定化及び発電容量の増加に即した電力の安定供給の達成を図るものです。

(参考)借款金額および条件

案件名 借款金額
(百万円)
金利(%/年) 償還期間
(年)
据置期間
(年)
調達条件
本体 コンサルティング・サービス
オディシャ州総合衛生改善事業(第二期) 25,796 0.3 0.01 40 10 一般アンタイド
貨物専用鉄道建設事業(フェーズ1)(第三期) 103,664 0.1 0.01 40 10 日本タイド
ジャルカンド州 点滴灌漑導入による園芸強化事業 4,652 1.4 0.01 30 10 一般アンタイド
タミル・ナド州 都市保健強化事業 25,537 0.3 0.01 40 10 一般アンタイド
マディヤ・プラデシュ州送電網増強事業 15,457 0.8 20 6 一般アンタイド

(1)オディシャ州総合衛生改善事業(第二期)
Odisha Integrated Sanitation Improvement Project (II)

(a)事業の背景と必要性
インド東部オディシャ州(人口4,200万人、2011年)は、インド国内で貧困率が高い州である一方、鉄鉱石、石炭等の天然資源に恵まれ、近年産業化及び人口増加が進んでいます。しかし、州都のブバネシュワール市及び旧州都のカタック市では、未だ下水管網や下水処理場等の公共下水道施設がほとんど整備されておらず、汚水の垂れ流しの結果、川や土壌、地下水の水質汚濁、汚染された水を媒介とする感染症の発生、地域住民の健康被害、汚水を発生源とする悪臭などが生じており、地域住民の衛生・生活環境が脅かされています。代表的な水質指標のひとつである生物化学的酸素要求量(BOD)は、市内の一部の排水路において175mg/l以上(2015年)とインドの放流基準(20mg/l)を大幅に上回っています。今後も人口増加が続き、それに伴い給水量や汚水量も増加する見込みであるため、下水処理施設・雨水排水施設の整備が喫緊の課題となっています。

(b)事業の目的及び概要
本事業は、インド東部オディシャ州ブバネシュワール市及びカタック市において、下水道施設・雨水排水施設を整備することにより、安定的な下水道サービスの提供及び雨水排水の改善を図り、もって同地域住民の衛生・生活環境の改善に寄与するものです。本事業に対しては、第一期(2007年3月貸付契約調印、190億6,100万円)の円借款を供与済みです。

(c)事業実施機関
オリッサ州上下水道公社(Orissa Water Supply and Sewerage Board)
住所: Mahanadivihar P.O, Nayabazar, Cuttack, Odisha -753004
TEL: +91-671-2444511, FAX:+91-671-2441616

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
(i)事業の完成予定時期:2018年6月(施設供用開始時をもって事業完成)
(ii)コンサルティング・サービス(施工監理等):雇用済
(iii)本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:
契約済


(2)貨物専用鉄道建設事業(フェーズ1)(第三期)
Dedicated Freight Corridor Project (Phase 1) (III)

(a)事業の背景と必要性
インドでは、貨物輸送量が年率10〜12%で伸びている一方、貨物鉄道はインド国鉄の旅客線と線路を併用していることから、輸送能力は限界に近づいています。さらに、2014年のインド国内での貨物鉄道の平均速度は時速24kmに留まり、大幅な遅延が頻発し、円滑な貨物輸送に支障をきたすなどの課題を抱えています。

インド鉄道省の貨物輸送需要予測によると、首都圏と西部沿岸地区を結ぶ西回廊(デリー〜ムンバイ間)では、ジャワハルラル・ネルー・ポート・トラスト(JNPT)港(マハラシュトラ州)を筆頭とする西部沿岸の国際港と内陸部需要地間のコンテナ輸送が、また、北部と首都圏、東部沿岸地区を結ぶ東回廊(ルディアナ〜デリー〜ソンナガル間)では、石炭、鉄鉱石、セメント、肥料、穀物等のバルク貨物輸送が急増すると見込まれています。一方、現在の線路容量は、インド国内の全区間平均で2032年に見込まれる旅客・貨物輸送需要の約50%に過ぎません。

このように貨物輸送量が急激に伸びるなか、現在の線路容量は限界が近づいており、特に需要の大きい東回廊、西回廊両区間の貨物専用鉄道路線の整備が喫緊の課題となっています。

なお、本事業は、日印両国が推進するデリー・ムンバイ産業大動脈(Delhi-Mumbai Industrial Corridor: DMIC)構想の根幹をなす主要インフラ整備に位置づけられます。

(b)事業の目的および概要
本事業は、インド政府による貨物専用鉄道の計画区間である西回廊(デリー〜ムンバイ間)及び東回廊(ルディアナ〜デリー〜ソンナガル間)のうち、特に整備優先度が高いとされる西回廊上の主要都市を結ぶ915kmの新線を建設し、全自動信号・通信システム及び高出力かつ高速の機関車を導入することにより、今後増大が見込まれる貨物輸送需要への対応と物流ネットワークの効率化を図り、もってインド国内の広範な経済発展に寄与するものです。

(c)事業実施機関
貨物専用鉄道公社(Dedicated Freight Corridor Corporation of India)および鉄道省(Ministry of Railways)

(貨物専用鉄道公社)
住所: 5th Floor, Pragati Maidan, Metro Station Building Complex, New Delhi-110001
TEL: +91-11-2345-4780
(鉄道省)
住所: Railway Bhavan, Raisina Road, New Delhi, 11001, India
TEL: +91-11-2338-9101
(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
(i)事業の完成予定時期:2024年1月(施設供用開始時をもって事業完成)
(ii)コンサルティング・サービス(施工監理等):雇用済
(iii)本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:
契約済


(3)ジャルカンド州点滴灌漑導入による園芸強化事業
Jharkhand Horticulture Intensification by Micro Drip Irrigation Project

(a)事業の背景と必要性
ジャルカンド州はインド東部に位置する人口3,300万人(2011年)の州で、地方部では人口の過半数が農業に従事しており、農業が主要産業の一つとなっています。農家が所有する土地の多くは小規模であるため、特に園芸栽培が盛んに実施されていますが、年間雨量の80%が雨季の6月から9月に集中し、通年流量のある河川もないことから、同州の灌漑率は全国で3番目に低い8.2%に留まっており、園芸栽培が可能な期間は雨季に限定されています。また、同期間に生産できる作物の種類も限定的であり、十分な収穫量を得られない状況にあります。加えて、農家が十分なマーケティング知識を持っていないため、園芸栽培が直接的な収入源とはなりにくい状況にあり、同州の貧困率はインド全国で2番目に高い36.9%となっています。そのため、限られた水源を活用した園芸作物の生産性向上及び小規模零細農家、特に社会参加が遅れている女性農家の生計向上が喫緊の課題となっています。

(b)事業の目的及び概要
本事業は、ジャルカンド州において、事業対象農家世帯に点滴灌漑を設置し、園芸作物栽培及びマーケティングに関する技術支援を行うことにより、灌漑率及び灌漑効率の向上、農業生産性向上及び作物多様化を図り、もって小規模零細農家の生計向上と女性の社会参加の向上に寄与するものです。

(c)事業実施機関
ジャルカンド州生計向上促進組合(Jharkhand State Livelihood Promotion Society)
住所: 3rd Floor, FFP Building, HEC Campus, Dhurwa, Ranchi-834004, Jharkhand
TEL: +91-651-240-1782, FAX: +91-651-240-1783

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
(i)事業の完成予定時期:2023年2月(全活動完了時をもって事業完成)
(ii)コンサルティング・サービス(事業管理等) にかかる招聘状送付予定時期:2016年4月
(iii)国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:本事業では、国際競争入札による調達は予定されていません。


(4)タミル・ナド州都市保健強化事業
Tamil Nadu Urban Health Care Project

(a)事業の背景と必要性
インド南部タミル・ナド州(人口7,200万人、2011年)はインドにおいて最も都市化が進んでいる州であり、また約864万人がスラム地域に居住している貧困層とされ、その数は今後も増加すると予想されています。このような背景のもと、都市部の貧困層が依存する公的医療サービスについては、増大しつつある医療サービスの需要を満たすことができておらず、その改善が喫緊の課題となっています。また、同州では、生活習慣の変化などにより、母子保健や感染症対策に加え、全国平均を上回る発生率、有病率のあるがんや糖尿病の早期発見・早期治療など、非感染性疾患(Non Communicable Diseases: NCDs)対策の必要性が高まっています。具体的には、NCDsの診断に必要な検査と応急的な処置ができる県レベルの医療施設の整備、心血管疾患などに対する正確な診断や、治療・手術などの高度な医療サービスを提供する医科大学病院の施設・機材の整備などが求められています。

(b)事業の目的及び概要
本事業は、タミル・ナド州において、NCDs対策に向けた医療施設・機材の整備及び医療従事者の能力強化等を行うことにより、都市保健医療システムの改善を図り、もって同州住民の健康増進に寄与するものです。

(c)事業実施機関
タミル・ナド州保健家族福祉局(Health and Family Welfare Department, Government of Tamil Nadu)
住所:Secretariat, 4th Floor, Government of Tamil Nadu, Chennai-600009, India
TEL:+91-44-25665566、FAX:+91-44-25367575

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
(i)事業の完成予定時期:2020年9月(施設供用開始時をもって事業完成)
(ii)コンサルティング・サービス(施工監理等) にかかる招聘状送付予定時期:2016年4月
(iii)本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:
調達パッケージ名:CTスキャナー、MRI、X線撮影装置等(CT scanner、MRI、X-ray machine)
予定時期:2017年10月

(5)マディヤ・プラデシュ州送電網増強事業
Transmission System Strengthening Project in Madhya Pradesh

(a)事業の背景と必要性
インド中央部に位置するマディヤ・プラデシュ州(人口7,300万人、2011年)は、日印政府イニシアティブにより進められているデリー・ムンバイ間産業大動脈構想(Delhi-Mumbai Industrial Corridor: DMIC構想)の対象州の一つであり、積極的な産業開発が計画されています。同州では、今後増大する電力需要に対応するため新規発電所建設を計画していますが、新規発電所の稼働に伴い電力潮流が増大することにより、既存送電網への負荷が大きくなり、送電ロスの増加や系統の不安定化が生じることが想定されます。そのため、今後も安定した電力を供給し、低い送電ロス率を維持するためには、送変電網の増強が喫緊の課題となっています。

(b)事業の目的及び概要
本事業は、マディヤ・プラデシュ州全域において、送電線の敷設(総回線長約940km)及び変電所の新増設等を行うことにより、同州の電力系統の安定化及び発電容量の増加に即した追加電力の安定供給の達成を図り、もって同州の電力需給状況の改善に寄与するものです。

(c)事業実施機関
マディヤ・プラデシュ州送電公社(Madhya Pradesh Power Transmission Company Limited:MPPTCL)
住所: Shakti Bhawan, Rampur, Jabalpur, Madhya Pradesh, INDIA  
TEL: +91-761-2661234, FAX:+91-761-2664141

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
(i)事業の完成予定時期:2020年5月(施設供用開始時をもって事業完成)
(ii)コンサルティング・サービス:本事業においては、コンサルタントの傭上を予定していません。
(iii)本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:
調達パッケージ名:送電線敷設(Procurement and Construction of Transmission Line 2, 3)
予定時期:2016年6月