バングラデシュ向け円借款貸付契約の調印:急増する電力・交通需要への対応と農村部の所得向上のため、過去最大規模の円借款を供与

2017年6月29日

国際協力機構(JICA)は、6月29日、バングラデシュ人民共和国政府との間で、6事業、総額1,782億2,300万円を限度とする円借款貸付契約(Loan Agreement: L/A)に調印しました。

バングラデシュは、世界第8位の人口約1億6,000万人を擁し、縫製、衣料関連産業の発展などにより、過去10年間で年平均6パーセントの経済成長を続けています。安価で豊富な労働力とその潜在的な市場規模などから、近年、有望な生産拠点、投資先となり得る新興国として、日本をはじめとする海外の企業から注目を集めています。

同国政府は最新の国家計画である第7次五か年計画(2016/17-2020/21年度)において2021年までに中所得国入りするとの目標(「ビジョン2021」)を掲げています。JICAは、こうしたバングラデシュ政府の計画を踏まえ引き続きバングラデシュのさらなる経済成長に向けた課題への取り組みや社会の脆弱性の克服を支援しており、今回調印した6事業もこれらへの貢献を目的としています。

今回調印した円借款契約が対象とする事業は以下の6件です。
(1)ハズラット・シャージャラール国際空港拡張事業(第一期)(借款金額:768億2,500万円)
(2)カチプール・メグナ・グムティ第2橋建設及び既存橋改修事業(II)(借款金額:527億3,000万円)
(3)ダッカ都市交通整備事業(1号線)(E/S)(借款金額:55億9,300万円)
(4)マタバリ超々臨界圧石炭火力発電事業(III)(借款金額:107億4,500万円)
(5)ダッカ地下変電所建設事業(借款金額:204億7,700万円)
(6)小規模水資源開発事業(フェーズ2)(借款金額:118億5,300万円)

詳細は以下のとおりです。

(1) ハズラット・シャージャラール国際空港拡張事業(第一期)
Hazrat Shahjalal International Airport Expansion Project (I)

(a) 事業の目的及び概要
本事業は、バングラデシュの首都空港であるハズラット・シャージャラール国際空港において、新たな国際線旅客ターミナルや貨物ターミナルの整備等を行うことにより、急増する航空需要に対応し、空港の容量拡大、利便性及び安全性の向上を図り、もってバングラデシュの経済成長促進に寄与するものです。

(b) 事業の背景と必要性
首都ダッカに位置するハズラット・シャージャラール国際空港は、同国全土の国内・国際線旅客の約75%が利用しており、近年成長が著しいバングラデシュの社会経済活動を支える基幹インフラとして重要な役割を担っています。

安定的な経済成長に伴い、同国際空港の国際線旅客数は2018年に既存の国際線ターミナル1及び2で受け入れ可能な年間旅客者数の上限である800万人を超え、2035年頃には2,200万人に達すると予測されています。また、同国際空港で取り扱う航空輸入・輸出貨物量も、2011年から2015年にかけて輸入は約9%、輸出は約14%上昇しており、今後も増加傾向が続くと予想されます。

このように、旅客、貨物ともに今後も航空需要が拡大する見込みであることから、利便性、安全性を確保したうえで需要に応えられるよう、同国際空港の拡張が必要となっています。

(c)事業実施機関
民間航空観光省バングラデシュ民間航空局(Civil Aviation Authority, Bangladesh, Ministry of Civil Aviation and Tourism)
住所: Kurmitola, Dhaka, 1229
TEL: +880-2-8901400、FAX: +880-2-8901411

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
1.事業の完成予定時期:2021年7月(施設供用開始時をもって事業完成)
2.コンサルティング・サービス(詳細設計レビュー等)にかかる招請状送付予定時期:雇用済
3.本体工事にかかる国際競争入札による最初の調達パッケージの入札公示:
本体工事パッケージ(Construction of New Passenger Terminal Building (Terminal 3) etc.)
予定時期:2018年1月

(2) カチプール・メグナ・グムティ第2橋建設及び既存橋改修事業(II)
The Kanchpur, Meghna and Gumti 2nd Bridges Construction and Existing Bridges Rehabilitation Project (II)

(a)事業の目的及び概要
本事業は、ダッカ・チッタゴン間国道1号線上に位置するカチプール橋、メグナ橋、グムティ橋の改修及び既存橋に並行する第2橋の建設等を行うものです。これにより、橋脚の洗掘(流水による浸食作用)への対策や橋梁の耐震性向上を含む既存橋梁の安全性の向上及び急増する交通需要への対応を図り、もってバングラデシュ経済全体の活性化に寄与するものです。

(b)事業の背景と必要性
本事業が位置する国道1号線が結ぶダッカ首都圏と第2の都市であるチッタゴン間の経済回廊周辺地域は、バングラデシュの人口の3割、GDPの5割を占め、同国の経済発展を牽引しています。近年の経済成長に伴い、貨物取扱量及び旅客輸送量が拡大し、同国道上に架かるカチプール橋、メグナ橋、グムティ橋を通過する車輌交通台数は想定容量を最大約6割上回っており(2012年)、2025年には想定容量の3倍に増加することが予想されています。

また、路面の損傷が激しく、交通に支障をきたしているうえ、既存橋の完成後に厳格化された国内耐震基準を満たしておらず、橋脚の洗掘も進行しているため安全性が懸念されています。

このような状況の下、今後も急増が見込まれる交通需要に対応するべく、新橋の建設及び既存橋の改修が必要となっています。

なお、本事業に対しては、第一期(2013年3月貸付契約調印、289億4,500万円)の円借款を供与済みで、本邦技術である鋼管矢板井筒基礎工法(軟弱地盤で施工可能、川の洗掘等に対する耐久性が高い)が同国で初めて導入されています。

(c)事業実施機関
道路交通橋梁省道路・国道部(Roads and Highways Department, Ministry of Road Transport and Bridges)
住所: Sarak Bhaban, Tejgaon Industrial Area, Dhaka
TEL: +880-2-8879299、FAX: +880-2-8879199

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
1.事業の完成予定時期:2020年4月(施設供用開始時をもって事業完成)
2.コンサルティング・サービス(詳細設計等)にかかる招請状送付予定時期:雇用済
3.本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:契約済

(3) ダッカ都市交通整備事業(1号線)(E/S)
Dhaka Mass Rapid Transit Development Project (Line 1) (E/S)

(a)事業の目的及び概要
本事業は、バングラデシュで初めての地下鉄建設を行うものです。同建設を通じ、ダッカ都市圏の交通需要への対応を図り、もって交通混雑の緩和を通じた経済の発展及び都市環境の改善に寄与することを目的としています。なお、本借款は当該事業の実施に必要な調査・設計・入札段階で必要なエンジニアリング・サービス(E/S)を対象としており、貸付資金は、現場詳細データの収集、詳細設計、入札書類作成等に充当されます。

(b)事業の背景と必要性
首都ダッカの人口は1990年から2014年にかけて人口が662万人から1,698万人まで増加しており、これに伴う急激な交通需要の増大が慢性的な交通渋滞や大気汚染等を引き起こしています。その結果、ダッカにおける車両の平均移動速度は時速6.4キロと東京都都心部(時速16キロ)の半分以下に留まっています。また、大気汚染はPM10濃度が1立方メートルあたり158マイクログラムとなっており、世界保健機関が推奨する都市圏における同濃度水準(20〜70マイクログラム)を大きく上回っています。

交通渋滞による経済損失は、年間38億6,800万米ドルに上ると言われ、バングラデシュの投資環境を悪化させ、社会経済発展の大きなボトルネックとなっており、交通渋滞や大気汚染の改善が喫緊の課題となっています。

なお、本事業はダッカの都市交通マスタープランである「改訂ダッカ都市交通戦略計画」において、優先事業に位置付けられています。

(c)事業実施機関
ダッカ都市交通会社(Dhaka Mass Transit Company Limited)
住所: 71-72 Old Elephant Road, Eskaton Garden, Dhaka 1000
TEL: +880-2-55138672、FAX: +880-2-9358589

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
1.事業の完成予定時期:2021年10月(貸付完了時)
2.コンサルティング・サービス(詳細設計等)にかかる招請状送付予定時期:2017年9月
3.本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:本件はエンジニアリング・サービス借款のため該当無し。

(4) マタバリ超々臨界圧石炭火力発電事業(III)
Matarbari Ultra Super Critical Coal-Fired Power Project (III)

(a)事業の目的及び概要
本事業は、バングラデシュ南東部チッタゴン管区マタバリ地区に、同国初となる高効率の超々臨界圧石炭火力発電所(定格出力1,200メガワット:600メガワット×2基)、及び関連設備として石炭輸入用港湾、送電線等を建設し、同国における電力需要の急増やエネルギー転換ニーズへの対処とともに、温室効果ガスの排出の抑制を図り、もって同国経済全体の活性化及び気候変動の緩和に寄与するものです。

(b)事業の背景と必要性
バングラデシュでは近年の高い経済成長に伴う電化や工業化によって電力需要が急激に伸びており、今後10年間も年率約10%の増加が見込まれています。しかし供給能力は潜在需要を考慮した最大電力需要8,920 メガワットの約9割にあたる8,177メガワットに留まっています(2015年)。現在、同国産天然ガスを燃料とする火力発電が発電設備の約6割を占めていますが、国産の天然ガスは今後産出量が減少していく見通しであり、国内で家庭用や産業用ガスの需要も増加する中、エネルギー源を多様化した電力供給が課題となっています。本事業では今後の電力需要に対応するため、輸入炭を使用する石炭火力発電を主要電源とすべく発電所を拡充し、電力の需給ギャップを抑制することで、さらなる経済成長に寄与します。

なお、本事業に対しては、第一期(2014年6月貸付契約調印、414億9,800万円)、第二期(2016年6月貸付契約調印、378億2,100万円)の円借款を供与済みです。

(c)事業実施機関
バングラデシュ石炭火力発電会社(Coal Power Generation Company Bangladesh Limited)
住所: CPCBL, Uniqne Heights Level 17, 117 Kazi Nazrul Islam Avenue, Eskaton Garden Road, Dhaka-1217
TEL: +880-2-9338529、 FAX: +880-2-9348306

バングラデシュ送電会社(Power Grid Company of Bangladesh Limited)
住所: IEB Bhaban 3rd Floor & 4th Floor, 8/A Ramna, Dhaka-1000
TEL: +880-2-9560883、 FAX: +880-2-9582382

道路交通橋梁省道路・国道部(Roads and Highways Department, Ministry of Road Transport and Bridges)
住所: Sarak Bhaban, Tejgaon Industrial Area, Dhaka
TEL: +880-2-8879299、FAX: +880-2-8879199

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
1.事業の完成予定時期:2024年1月(施設供用開始時をもって事業完成)
2.コンサルティング・サービス(詳細設計等)にかかる招請状送付予定時期:雇用済
3.本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:
アクセス道路パッケージ(Construction of Access Road)
予定時期:2017年7月

(5) ダッカ地下変電所建設事業
Dhaka Underground Substation Construction Project

(a)事業の目的及び概要
本事業は、首都ダッカにおいて同国初となる地下変電所(2か所)等を建設することにより、電力供給の安定化及び電力需給状況の改善を図り、もってバングラデシュの投資環境の改善と経済成長促進に寄与するものです。

(b)事業の背景と必要性
バングラデシュでは、近年の経済成長や工業化の進展に伴い、潜在需要を考慮した最大電力需要が2005年の4,230メガワットから2015年には8,920メガワットと、10年間で約2倍になるほど電力需要が急増しています。とりわけ、同国全体の約45%の電力需要を占めるダッカ都市圏では、今後も年平均9%の電力需要の伸びが見込まれています。また、今後6〜7年のうちに最大需要が変電所容量を上回り、ピーク時の広範囲にわたる停電が常態化する恐れが出てきており、変電所の増設などダッカ全体の設備増強が急務となっています。しかし、世界最過密都市であるダッカでは、空地率が1%未満であり、地価の高騰に加え、土地をあけわたす所有者が少ない等の問題もあり、変電所建設のための用地取得が困難な状況にあります。

このような状況の下、既存変電所の用地において、同変電所を停止せず電力供給を維持した上で容量を増加することが必要となっており、地下変電所の建設が有効な対応策となっています。

(c)事業実施機関
ダッカ電力供給会社(Dhaka Electric Supply Company Limited)
住所: House-22/B, Faruk Sarani, Nikunja-2, Khilkhet, Dhaka-1229
TEL/ FAX: +880-2-8900110

ダッカ配電会社(Dhaka Power Distribution Company Limited)
住所: 1, Abdul Gani Road, Dhaka 1000
TEL/ FAX: +880-2-9563520

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
1.事業の完成予定時期:2023年9月(施設供用開始時をもって事業完成)
2.コンサルティング・サービス(詳細設計等)にかかる招請状送付予定時期:2017年9月
3.本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:
電気設備整備パッケージ(Design and Installation of Electric Facilities for Underground Substation etc.)
予定時期:2019年6月

(6) 小規模水資源開発事業(フェーズ2)
Small Scale Water Resources Development Project (Phase 2)

(a)事業の目的及び概要
本事業は、ダッカ管区、マイメイシン管区、シレット管区、及びロングプール管区の農村部において、小規模水資源管理施設整備、営農施設・機材及び農道整備、並びに水管理組合への研修・技術指導等を通じ、農業生産増加及び農民所得向上を図り、もって同地域の貧困削減、食料安全保障及び社会経済発展に寄与するものです。

(b)事業の背景と必要性
バングラデシュは近年経済発展を遂げ、貧困人口も減少傾向にありますが、依然として総人口のうち約3割の4,800万人が貧困層とされています。特に、人口の約7割が居住している農村部の貧困率は35.2%と、都市部の21.3%より高水準となっており、農民の所得向上のために、安定した農業生産を確保し、生産性を上げていくことが必要となっています。また、工業化・都市化が進み農地が減少する一方で、人口増加に伴い食料需要も拡大している中、食料安全保障という意味でも、限られた可耕地の農業生産性を向上させることが求められています。

農業生産性の向上のためには、安定した農業用水の確保が必要ですが、現在、バングラデシュの農業において広く利用されている地下水は、過剰揚水等による減少傾向が確認されており、表流水の活用を促進していくことが重要になっています。表流水の活用にあたっては、同国は海抜の低い土地が大半を占め、雨季には洪水が多発する一方、乾季には水不足が発生するため、雨季に農地等への浸水を防ぎつつ降雨を溜め、乾季に有効利用できるようにするための水資源管理施設の整備が必要となっています。

(c)事業実施機関
地方行政農村開発協同組合省 地方行政技術局(Local Government Engineering Department, Ministry of Local Government, Rural Development and Cooperatives)
住所: LGED Bhaban, Agargaon, Sher-e-Bangla Nagar, Dhaka, 1207
TEL: +880-2-8114804、FAX: +880-2-8116390

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
1.事業の完成予定時期:2023年3月(全施設供用開始時をもって事業完成)
2.コンサルティング・サービス(詳細設計等)にかかる招請状送付予定時期:2017年8月
3.本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:本事業では、バングラデシュ国内で必要な調達が行われるため、本体工事に係る国際競争入札は予定されていません。


借款金額及び条件

案件名 借款金額
(百万円)
金利(%/年) 償還期間
(年)
据置期間
(年)
調達条件
本体 コンサルティング・サービス
ハズラット・シャージャラール国際空港拡張事業(第一期)(Hazrat Shahjalal International Airport Expansion Project (I)) 76,825 0.70 0.01 30 10 一般アンタイド
カチプール・メグナ・グムティ第2橋建設及び既存橋改修事業(II)(The Kanchpur, Meghna and Gumti 2nd Bridges Construction and Existing Bridges Rehabilitation Project (II)) 52,730 0.70 0.01 30 10 一般アンタイド
ダッカ都市交通整備事業(1号線)(E/S)(Dhaka Mass Rapid Transit Development Project (Line 1)(E/S)) 5,593 N/A 0.01 30 10 一般アンタイド
マタバリ超々臨界圧石炭火力発電事業(III)(Matarbari Ultra Super Critical Coal-Fired Power Project (III)) 10,745 0.70 0.01 30 10 一般アンタイド
ダッカ地下変電所建設事業(Dhaka Underground Substation Construction Project) 20,477 0.70 0.01 30 10 一般アンタイド
小規模水資源開発事業(フェーズ2)(Small Scale Water Resources Development Project (Phase 2)) 11,853 0.70 0.01 30 10 一般アンタイド