ミャンマー向け地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)討議議事録の署名:天水田等にも適したイネの有望系統の研究開発を支援

2018年1月31日

署名式の様子

国際協力機構(JICA)は、1月30日、ミャンマー連邦共和国政府との間で、地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)(注1)「ミャンマーにおけるイネゲノム育種システム強化」に関する討議議事録(Record of Discussions: R/D)に署名しました。

本事業は、ミャンマーにイネゲノム育種(注2)を導入し、稲作には不利な環境にも適したイネ有望系統を開発することを通じて、イネの育種方法を強化するものです。なお、本事業の日本側研究機関は、九州大学大学院農学研究院および名古屋大学生物機能開発利用研究センターです。

ミャンマーでは農業がGDPの28.6パーセント、就業人口の61.2パーセント(ミャンマー農業畜産灌漑省、2016年)を占める重要産業です。また、コメは同国民の摂取カロリーの大半を供給していることから、ミャンマーの食料安全保障上もっとも重要な穀物です。このため、同国政府はコメの増産を重要課題とし、灌漑設備などの生産基盤の整備や、農業機械や肥料の効率的な利用による生産性の向上、農業技術の普及、イネの優良品種の研究開発等に取り組んできました。優良品種の研究開発においては、灌漑地に適するイネの高収量品種の開発が先行しているものの、灌漑地はミャンマーのイネの作付面積の20パーセント(ミャンマー農業畜産灌漑省、2012年)にすぎません。そのため、イネの安定的な収量増加のためには、作付面積の48パーセントを占めるとされる天水田など、通常、稲作を行うには不利な栽培環境にも適応するイネの品種開発に取り組む必要があります。

ミャンマーには、天水田や傾斜地といった必ずしもイネの栽培には適していない環境にも適応するイネの在来品種は数多く存在しますが、収量が低い、病害虫に弱いといった負の形質も有している場合が多いのが現状です。そこで、本事業では、もともと現地の農業環境に適応している在来品種の特性を活かしながら、DNAマーカー選抜(注3)を行うことで、高収量、病害虫に強いといった形質を効率的に付加することで品種を改良し、稲作に適さない環境であっても、高い性能を有する品種(有望系統)を開発することを支援します。これにより、天水田等の環境でも病害虫に強く、高収量を得られる新品種が普及され、同国の稲作農家の生産量と収入が向上することが期待されます。

JICAは、本案件に加え、技術協力プロジェクト「イネ保証種子流通促進プロジェクト」を通じてイネ種子の品質向上と流通促進に取り組んでいます。併せて、有償資金協力および無償資金協力を通じた農業生産インフラの整備も支援しており、引き続き同国の農業の発展に向けた包括的な支援を実施していきます。

(注1)地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS:Science and Technology Research Partnership for Sustainable Development)とは、環境・エネルギー、生物資源、防災および感染症等をはじめとする地球規模課題に対応し、開発途上国の自立的、持続的な発展を支えるため、日本と開発途上国の大学・研究機関等が連携し、新たな技術の開発・応用や新しい科学的知見獲得のための共同研究を実施するものです。これにより、課題解決を進めるとともに、開発途上国の大学・研究機関等の研究水準の向上と総合的な対処能力の強化を行うことを目指しています。

(注2)イネゲノム育種:イネの育種は交配による品種改良を基本としますが、イネの形質を決める遺伝情報(ゲノム)を解析・特定し、その情報を育種に利用する手法を指します。通常の育種は、交配と選抜、各種検定を繰り返しながら長期間にわたって行われますが、育種の目標とする形質に関わる遺伝子を特定しておくことで、求める形質を効率よく付加できるようになり、品種改良に必要な期間が短縮できるようになります。

(注3)DNAマーカー選抜:高収量や病虫害耐性などの有用な形質は、育った環境の違いと、遺伝子の違いによります。遺伝子の違いによるものは、DNAを構成する塩基の並び方が違うことで発現します。塩基の並び方の違いを調べることで、品種や個体を識別する際の目印として利用することができ、目印となるDNAの並び方の違いを利用して個体を選抜することを、DNAマーカー選抜といいます。

【案件基礎情報】
国名:ミャンマー連邦共和国
案件名:ミャンマーにおけるイネゲノム育種システム強化
実施予定期間:2018年6月~2023年6月
実施機関:農業畜産灌漑省農業研究局
対象地域:イエジン、南シャン州、西バゴー地域、エーヤワディ地域
国内協力機関:九州大学大学院農学研究院、名古屋大学生物機能開発利用研究センター
具体的事業内容:ミャンマーのイネ遺伝資源の評価ならびに有用遺伝子の検定、戻し交配と大容量ジェノタイピング(遺伝子型の決定・判定)の導入、天水田・傾斜地それぞれの農業生態環境に適するイネ有望系統の開発・評価