インド向け円借款貸付契約の調印:様々な分野での協力を通じて、インドの包摂的かつ持続的な発展に貢献

2018年3月30日

署名式の様子

国際協力機構(JICA)は、3月29日、インド政府との間で、5事業、総額1,878億8,400万円を限度とする円借款貸付契約(Loan Agreement: L/A)に調印しました。

インドでは、2014年のモディ政権発足以降、様々な分野で新たな政策が掲げられ、過去3年間のGDP成長率の平均は約7.5%と、高水準の経済成長率を維持しています。その一方で、インドの一人当たり所得水準は2016年で1,670米ドルに留まっており、未だに世界最大の貧困人口も抱えています。このような状況を受け、モディ政権は「みんなの参加、みんなの発展(Sabka Saath, Sabka Vikas)」の理念のもとで包摂的かつ持続的な成長を目指した開発政策を推進しており、JICAはこれらインド政府の開発政策を幅広い分野における円借款事業等を通じて支援しています。

今回調印した円借款契約が対象とする事業は以下の5件です。
(1) ムンバイメトロ3号線建設事業(第二期)(借款金額:1,000億円)
(2) チェンナイ海水淡水化施設建設事業(第一期)(借款金額:300億円)
(3) ヒマーチャル・プラデシュ州森林生態系保全・生計改善事業(借款金額:111億3,600万円)
(4) チェンナイ都市圏高度道路交通システム整備事業(借款金額:80億8,200万円)
(5) 北東州道路網連結性改善事業(フェーズ2)(借款金額:386億6,600万円)

詳細は以下のとおりです。

(1) ムンバイメトロ3号線建設事業(第二期)
  Mumbai Metro Line 3 Project (II)
(a) 事業の目的及び概要
本事業は、インド中西部に位置するマハラシュトラ州の州都ムンバイ市において、大量高速輸送システム(地下鉄)を建設するものです。これにより、増加する輸送需要への対応を図り、道路交通の混雑緩和と自動車公害の減少を通じた地域経済の発展および都市環境の改善を図るものです。

(b) 事業の背景と必要性
マハラシュトラ州ムンバイ都市圏は2016年時点で2,070万人の人口を抱え、人口密度は1平方キロメートル当り2万482人となっており、世界でもトップクラスの人口過密都市です。近年の人口増加に伴い、自動車登録台数の伸びも著しく、2000年の103万台から、2011年には306万台へと急増しています。そのため、同都市圏では交通渋滞が慢性化しており、市内主要道路における平均速度は毎時約15キロメートルと、東京(毎時約20キロメートル)、ニューヨーク(毎時約30キロメートル)といった各国の大都市と比べても深刻な状況となっています。加えて、大気汚染や騒音等の自動車公害も深刻化しており、道路交通網以外の手段で輸送能力を備えた大量高速輸送システムとしての地下鉄の整備が必要となっています。そのため、2013年より事業実施機関であるムンバイ都市鉄道公社により2021年末の開業に向け、建設工事が進められています。

本事業の実施により、ムンバイ都市圏南部の中心地域アイランド・シティ地域とムンバイ国際空港、急速に宅地開発が進む郊外北西部を結ぶ地下鉄が整備されます。本路線の開業2年後の乗客輸送量は1,380万人・キロメートル/日に達すると見込まれており、交通渋滞や大気汚染の緩和を通じた、ムンバイ都市圏の均衡ある経済発展が期待されます。

(c) 事業実施機関
ムンバイ都市鉄道公社(Mumbai Metro Rail Corporation Limited)
住所:NaMTTRI Building, Plot # R13, ‘E’ Block, BKC, Bandra (E) Mumbai, India
TEL: +91-22-2638-4677, FAX: +91-22-2659-2005

(d) 今後の事業実施スケジュール(予定)
1. 事業の完成予定時期:2021年12月(施設供用開始時をもって事業完成)
2. コンサルティング・サービス(施工監理等)にかかる招請状送付予定時期:雇用済
3. 本体工事にかかる国際競争入札による最初の調達パッケージの入札公示:
調達パッケージ名:地下土木建築工事パッケージ(Construction of Underground Stations and Tunnels)
予定時期:契約済

(2) チェンナイ海水淡水化施設建設事業(第一期)
  Project for Construction of Chennai Seawater Desalination Plant (I)
(a) 事業の目的及び概要
本事業は、インド南部タミル・ナド州チェンナイ都市圏において、海水淡水化プラントの建設及び送水・配水施設の建設・改善を行うものです。これにより、安全かつ安定的な上水道サービスを提供し、同地域の生活環境及び投資環境の改善に寄与します。

(b) 事業の背景と必要性
チェンナイ都市圏では近年急速に人口が増加しており、2001年に約656万人であった都市圏内の人口は2011年には約890万人となり、2035年には1,500万人を超える見込みです。また経済発展も著しく、2017年11月時点で370社以上の日本企業を含む外国企業が数多く進出しています。このため、生活用水、産業用水ともに需要が急増していますが、主な水源である河川や地下水では短期間で膨大な需要を満たすのが難しく、これらの水源は乾期の渇水の影響も受けやすいことから、慢性的且つ深刻な水不足が人々の生活や企業活動にとって大きな課題となっています。そのため、安定的な水資源の確保が急務となっています。

本事業では、乾期の渇水の影響を受けることなく安定した量の水供給が可能な海水淡水化プラントと関連施設の建設等を行うことで、より多くの人口に安定した水供給を可能とするものです。事業対象地域のうちチェンナイ市における給水人口は約710万人から約820万人へと増加することが見込まれます。これにより、今後も増加が見込まれるチェンナイ都市圏の水需要への対応に寄与します。

なお、本事業は、日本政府とインド政府が掲げるインドの経済発展を支える産業集積地域を開発する「南部中核拠点開発構想(Chennai-Bengaluru Industrial Corridor:CBIC)」の下、安定した水供給の実現によりCBIC地域の投資環境整備に貢献し、ひいてはインド政府が各国企業にインド国内での拠点設立等を促す「メイク・イン・インディア」政策への貢献も目指すものです。

(c) 事業実施機関
チェンナイ都市圏上下水道公社(Chennai Metropolitan Water Supply and Sewerage Board)
住所: No. 1, Pumping Station Road, Chintadripet, Chennai - 600 002, India
TEL: +91-44-2845-1319, FAX: +91-44-2845-4336

(d) 今後の事業実施スケジュール(予定)
1. 事業の完成予定時期:2025年3月(配水施設供用開始時をもって事業完成)
2. コンサルティング・サービス(詳細設計等)にかかる招請状送付予定時期:2018年8月
3. 本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:
送水管敷設パッケージ(Installation of Product Water Transmission Mains)
予定時期:2018年8月

(3) ヒマーチャル・プラデシュ州森林生態系保全・生計改善事業
  Project for Improvement of Himachal Pradesh Forest Ecosystems Management and Livelihoods
(a) 事業の目的及び概要
本事業は、インド北部のヒマーチャル・プラデシュ州において、持続的な森林生態系管理及び生物多様性保全に関わる活動の促進、同活動の実施体制の整備及び従事者の能力強化、そして地域住民の生計基盤の強化支援を行うものです。これにより、同州の森林地における生態系管理体制を強化します。

(b) 事業の背景と必要性
ヒマーチャル・プラデシュ州は、ヒマラヤ山岳地帯の西部に位置する人口約686万人(2011年)の州で、低丘陵地帯から高山地帯まで地形が起伏に富んでおり、多様な生態系を有しています。同州は、州全体がヒマラヤ生物多様性ホットスポット(注1)の一部に含まれ、国際自然保護連合のレッドリストに掲載されている絶滅危惧種も複数確認されており、生態系の保全が必要な地域です。しかし、人口増加による森林資源の利用の増加や、開発事業による森林伐採により森林資源への負荷が高まっているうえ、森林火災等による森林劣化も局所的に発生しています。このような森林劣化は生物の生息環境に影響を与えるため、生物多様性の損失が危惧されています。また近年は森林劣化が要因で野生動物が人間の生活圏にも出没するようになり、住民や家畜等への被害も多数発生しています。そのため、森林保全と生物多様性保全の取り組みを早急に強化することが必要となっています。なお、これらの取り組みと地域経済の発展を両立するため、地域住民の生計基盤の強化も併せて求められています。

本事業の実施により、ヒマーチャル・プラデシュ州で1万ha以上にわたる植林活動の実施が見込まれます。また、地域住民を対象に、持続的な森林生態系管理や生物多様性保全のための技術研修と併せて、養鶏や園芸栽培等の生計向上支援が実施されることにより、地域経済の発展と両立する持続可能な森林保全体制が確立されることが期待されます。

(注1)生物多様性ホットスポット:国際NGOのコンサベーション・インターナショナルが指定している、多様な固有の生物が住む生物多様性が豊かな場所でありながら、その生態系が著しく破壊の危機に瀕している地域

(c) 事業実施機関
ヒマーチャル・プラデシュ州森林局(Forest Department, Government of Himachal Pradesh)
住所:Forest Headquarters, Talland Shimla, Himachal Pradesh 171002, India
TEL: +91-177-262-4186, FAX: +91-177-262-4192

(d) 今後の事業実施スケジュール(予定)
1. 事業の完成予定時期:2028年3月(全活動完了時をもって事業完成)
2. コンサルティング・サービス(事業管理等)にかかる招請状送付予定時期:2018年7月
3. 本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:
本事業に必要な調達は国内入札により実施されることとなっており、 国際競争入札による調達は予定されていません。

(4) チェンナイ都市圏高度道路交通システム整備事業
  Project for Installation of Chennai Metropolitan Area Intelligent Transport Systems
(a) 事業の目的及び概要
本事業は、インド南東部のタミル・ナド州チェンナイ都市圏において、高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport Systems)を整備するものです。これにより、急増する交通量に対応できる円滑な交通システムの構築が進み、チェンナイ都市圏の交通渋滞緩和及び地域経済発展に寄与します。

(b) 事業の背景と必要性
チェンナイ都市圏では近年急速に人口が増加しており、2001年に約656万人であった都市圏内の人口は2011年には約890万人となり、2035年には1,500万人を超える見込みです。また経済発展も著しく、2017年11月時点で370社以上の日本企業を含む外国企業が数多く進出しています。これに伴い、チェンナイ都市圏の交通量も急増しており、交通渋滞が慢性化するなど、人々の生活や企業活動にとって大きな障害となっています。交通を効率化し、渋滞を緩和するためには、移動者の経路や所要時間、ピーク時の交通需要等のデータを収集・分析し、適時の道路情報提供や信号制御などにより交通整理を行うことが必要であり、交通情報の収集・分析・効率的な運用が可能なシステムの導入が急務となっています。

本事業では、交通情報の生成・伝播、信号制御による交通流の改善、バス運行の効率化や利便性向上を図るためのシステム整備やシステムの運営維持管理等に関する技術移転も行われる予定です。なお、本事業は、日本政府とインド政府が掲げるインドの経済発展を支える産業集積地域を開発する「南部中核拠点開発構想(Chennai-Bengaluru Industrial Corridor:CBIC)」の下、交通の円滑化の実現によりCBIC地域の投資環境整備に貢献し、ひいてはインド政府が各国企業にインド国内での拠点設立等を促す「メイク・イン・インディア」政策への貢献も目指すものです。

(c) 事業実施機関
チェンナイスマートシティー公社(Chennai Smart City Limited)
住所: Wing A, 5th Floor, Amma Maaligai, Ripon Building, Chennai, 600003, India
TEL: +91-44-2561-9670, FAX: +91-44-2538-3962

(d) 今後の事業実施スケジュール(予定)
1. 事業の完成予定時期:2022年12月(整備システムの試運転終了時をもって事業完成)
2. コンサルティング・サービス(詳細設計等)にかかる招請状送付予定時期:2018年4月
3. 本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:
調達パッケージ名:ITSパッケージ(Installation of ITS)
予定時期:2019年9月

(5) 北東州道路網連結性改善事業(フェーズ2)
  North East Road Network Connectivity Improvement Project (Phase 2)
(a) 事業の目的及び概要
本事業は、ミャンマー、バングラデシュ、ブータンに国境を接するインド北東州地域において、ミゾラム州の国道54号線のバイパス(4カ所)を新設するとともにメガラヤ州の国道40号線の既存道路の改良を行うものです。これにより、同地域内、およびインドと国境を接する国々との陸路での連結性が強化され、同地域の経済発展に寄与することが期待されます。

(b) 事業の背景と必要性
インドでは、近年の人口増加や経済成長に伴い、国内物流の要となる道路整備の需要が拡大していますが、山岳部における国道整備は、平野部に比べ、財政面や技術的な課題から遅れがちです。本事業対象地域である北東州地域は、丘陵・山岳地帯で険しい地形が多く、道路整備を進めていく上での障害となっており、拡幅の未実施、斜面対策の未実施、舗装の破損等の課題を抱えています。特に雨季には、降水量が多いため険しい地形と相まって土砂災害による道路の通行止めが頻発しています。このような道路整備の遅れは物資の安定供給や医療・教育施設へのアクセスを阻害しており、同地域の住民のライフラインの確保や経済開発のためには、道路網の改善が緊急課題となっています。

JICAは円借款「北東州道路網連結性改善事業(フェーズ1)(第一期)」(2017年3月31日にL/A調印:貸付限度額671億7,000万円)により、国道51号線及び国道54号線の拡幅や舗装等を支援しています。同フェーズ1に引き続き、本事業を通じてミャンマー及びバングラデシュとインド北東州との道路連結性改善を継続して支援します。
なお、JICAは技術協力「持続可能な山岳道路開発のための能力強化プロジェクト」により山岳道路開発のためのマニュアル作成も支援しており、引き続き同国の持続的な道路開発に貢献していきます。

(c) 事業実施機関
国道インフラ開発公社(National Highways and Infrastructure Development Corporation Limited)
住所: 3rd Floor, PTI Building, 4 Parliament Street, New Delhi - 110001
TEL: +91-11-2346-1600, FAX: +91-11-2371-1103

(d) 今後の事業実施スケジュール(予定)
1. 事業の完成予定時期:2022年9月(施設供用開始時をもって事業完成)
2. コンサルティング・サービス(施工監理等)にかかる招請状送付予定時期:2018年4月
3. 本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:
調達パッケージ名:国道40号線第一パッケージ(Road Improvement on NH 40 I)
予定時期:2019年3月

借款金額及び条件

案件名 借款金額
(百万円)
金利(%/年) 償還期間
(年)
据置期間
(年)
調達条件
本体 コンサルティング・サービス
ムンバイメトロ3号線建設事業(第二期)(Mumbai Metro Line 3 Project (II)) 100,000 1.50 0.01 30 10 一般アンタイド
チェンナイ海水淡水化施設建設事業(第一期)(Project for Construction of Chennai Seawater Desalination Plant (I)) 30,000 1.50 0.01 30 10 一般アンタイド
ヒマーチャル・プラデシュ州森林生態系保全・生計改善事業(Project for Improvement of Himachal Pradesh Forest Ecosystems Management and Livelihoods) 11,136 1.30 0.01 30 10 一般アンタイド
チェンナイ都市圏高度道路交通システム整備事業(Project for Installation of Chennai Metropolitan Area Intelligent Transport Systems) 8,082 1.50 0.01 30 10 一般アンタイド
北東州道路網連結性改善事業(フェーズ2)(North East Road Network Connectivity Improvement Project (Phase 2)) 38,666 1.20 0.01 30 10 一般アンタイド
合 計 187,884