イラク向け円借款貸付契約の調印:上水道と灌漑施設の整備・改修により復興に貢献

2018年5月7日

署名式の様子

国際協力機構(JICA)は、5月3日、バグダッドにて、イラク共和国政府との間で、2事業、総額348億8,000万円を限度とする円借款貸付契約(Loan Agreement: L/A)に調印しました。

イラクでは1980 年代以降、3 度にわたる戦争と長年の経済制裁の影響、更に2013年末以降の過激派組織の伸張により、電力や水等の基礎インフラの破壊及び老朽化が進んでおり、膨大な復興ニーズを抱えています。こうした状況に対し、2018年2月にクウェートで開催された復興支援会合において、日本政府は、現在実施中の案件を含め、電力、水、石油セクター等における円借款を通じたインフラ復興のための支援を継続していくことを表明しています。今般の2案件に対する円借款による支援は、そのような国際社会における日本政府のイラク復興への取り組みの一環をなすものです。

JICAは過去10年間に亘って6,000億円を超える円借款、また技術協力を通じて社会経済インフラの整備を支援しています。今般の円借款供与は、水資源に関わる基礎的なインフラの整備を通じて、イラクの経済復興や人々の生活環境改善を図り、中長期的な経済的安定とイラクの復興及び平和構築に寄与するものです。

今回調印した円借款契約が対象とする事業は以下の2件です。
(1) バスラ上水道整備事業(第二期)(借款金額:194億1,500万円)
(2) 灌漑セクターローン(フェーズ2)(借款金額:154億6,500万円)

詳細は以下の通りです。

(1) バスラ上水道整備事業(第二期)
Basrah Water Supply Improvement Project (II)

(a) 事業の目的及び概要
本事業は、イラク南部バスラ県バスラ市及びハルサ市において、浄水場及び送水網等の上水道施設を整備することにより、両市の上水供給状況の改善を図るものです。

(b) 事業の背景と必要性
イラクの水資源は国土を北西から南東方向に流れるチグリス・ユーフラテス川に大きく依存していますが、数度に亘る戦争と長年の経済制裁の影響により、既存の上水道施設の更新・維持管理が十分に行われておらず、上水システムの機能が著しく低下していました。その後の復旧の取り組みにより、2017年現在、バスラ市とハルサ市(合計人口約147万人)では、上水道普及率は90%に達しているものの、設備不足や既設浄水場の老朽化等により、未だ上水システム機能は十分とはいえず、約10%の世帯は水の受給が1日12時間未満となっています。また、特にイラク南部で顕著となっている河川水源の塩分濃度の高さ並びに既設浄水場の老朽化及び設備不足のため、供給水の水質は国際基準から大きく外れており、多くの市民が飲料水としてより高価な水を民間企業から購入しています。イラク南部は治安が比較的安定しており、同国の産業発展の起点となる重要な地域ですが、電力不足とともに飲料水として適した水質の水を安定的に供給できないことが大きな課題で、社会不安を惹起する一因となっていることから、安定した質の高い水の供給のため上水道施設の整備が急務となっています。

なお、本事業に対しては、第一期(2008年6月L/A調印、貸付限度額:42,969百万円)の円借款を供与済みであり、今次円借款は第二期分として供与するものです。

(c) 事業実施機関
公共事業省(Ministry of Municipalities and Public Works:MMPW)
住所:MMPW building, Baghdad, Republic of Iraq

(d) 今後の事業実施スケジュール(予定)
1. 事業の完成予定時期:2020年8月(施設供用開始時をもって事業完成)
2. コンサルティング・サービス(施工監理等)にかかる招請状送付予定時期:雇用済
本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:送水環状幹線構築パッケージ(Construction of Transmission System)
予定時期:2018年2月(公示済)

(2) 灌漑セクターローン(フェーズ2)
Irrigation Sector Loan (Phase 2)

(a) 事業の目的及び概要
本事業は、主にチグリス・ユーフラテス川流域において、灌漑・排水設備及び農地の整備・復旧を実施することにより、農業生産性の向上を図り、もってイラクの経済・社会復興に寄与するものです。

(b) 事業の背景と必要性
イラクの農業セクターはGDPの1割近くを占める重要産業の一つであり、失業問題が深刻化しているイラクにおいて、特に農村地方の有望な雇用吸収先として期待されています。イラクは国土の大部分が年降水量250 mm以下の砂漠気候に属しており、多くの地域では灌漑農業が不可欠ですが、灌漑設備の老朽化による漏水、夏季の乾燥による水不足、排水路の未整備による農地の塩類集積などにより、農業生産性は低いままになっています。また近年、周辺国での水資源開発進展に伴うチグリス・ユーフラテス川の流量減少とそれに伴うイラク国内での利用可能水量の減少により、特にチグリス・ユーフラテス川下流域にあたるイラク中部及び南部では、水資源の効率的利用と灌漑・排水施設の整備・改修による農業生産性の向上及び灌漑農業の拡大が喫緊の課題としてあげられています。

(c) 事業実施機関
水資源省(Ministry of Water Resources:MOWR)
住所:MOWR building, Baghdad, Republic of Iraq

(d) 今後の事業実施スケジュール(予定)
1. 事業の完成予定時期:2025年3月(全ての施設供用開始時をもって事業完成)
2. コンサルティング・サービス(施工監理等)にかかる招請状送付予定時期:2018年8月
3. 本体工事にかかる国際競争入札による最初の調達パッケージの入札公示予定時期:灌漑排水設備整備パッケージ(Construction of Irrigation and Drainage Network) 
予定時期:2019年3月

案件名 借款金額
(百万円)
金利(%/年) 償還期間
(年)
据置期間
(年)
調達条件
本体 コンサルティング・サービス
バスラ上水道整備事業(第二期)(Basrah Water Supply Improvement Project (II)) 19,415 1.00 0.01 20 6 一般アンタイド
灌漑セクターローン(フェーズ2)(Irrigation Sector Loan (Phase 2)) 15,465 円LIBOR
+15bp
0.01 25 7 一般アンタイド