JICAが出資する信託基金“LEAP”を通じた支援:アジア太平洋地域の遠隔地におけるインターネット通信環境整備事業への融資

2019年12月3日

アンテナ装置

事業対象エリア

12月2日、JICAが出資する『アジアインフラパートナーシップ信託基金 (“Leading Asia’s Private Infrastructure Fund”:LEAP)』を活用し、アジア開発銀行(ADB)がアジア太平洋地域におけるインターネット通信環境整備事業への融資契約を調印しました(総額50百万ドル)。

同事業は、アジア太平洋地域の国、特に大洋州の小さな島国やインドネシア、フィリピンのような大きな島国の遠隔地に低コスト・高速のインターネット利用環境を整備するものです。インフラが脆弱であること、利用コストが負担できないこと等を要因にインターネットを利用できないアジア太平洋地域の20億人以上の人々(パプアニューギニア、インドネシア、フィリピン等)に、低コスト・高速のインターネット利用環境を提供します。教育サービスの改善、情報へのアクセスの拡大、投資誘致、地域経済の活性化等が期待される他、地上ネットワークが利用できなくなる緊急時や災害時においてもネットワーク環境を維持する効果が期待できます。

同事業は、Kacific Broadband Satellites International Limited が通信衛星の建設、打ち上げ、運用を行うもので、ADBの融資にはLEAPによる融資25百万ドルが含まれています。通信衛星“Kacific-1”は、2019年12月に打ち上げられ、2020年初頭に運用開始する予定です。また、衛星通信ビジネスのパイオニアとしてメディア事業及び宇宙事業を手掛けるスカパーJSAT株式会社が、衛星の管制業務を行います。

LEAPは2015年11月21日に日本政府より発表された「質の高いインフラパートナーシップ」のフォローアップ施策において言及され、アジア及び大洋州地域の質の高い民間セクターのインフラ案件を対象とし、民間セクターが官民連携パートナーシップ(PPP)等の様々な形態を通じて実施するインフラ事業に対して、出融資による支援を行うものです。

JICAは2016年3月にLEAPに対して15億ドルの海外投融資による出資を承諾しました。業務開始以降、これまで累計5億ドルの出融資承諾を行い、インドやインドネシアでの保健事業やモンゴルやタイでの再生可能エネルギー事業等、幅広い分野で質の高いインフラ事業への支援を行っています。LEAPは現時点で14案件に対する出融資を行い、ADBの自己勘定及び他の協調出融資パートナーから累計37億ドルの資金動員をしています。LEAPはアジア太平洋のADB加盟国における質の高い、持続可能な民間セクターによる幅広いインフラ事業を支援しており、支援対象分野は温暖化ガス削減、省エネルギー、良心的な価格での医療サービス等多岐にわたります。
 
JICAは今後も各国・国際機関と協働し、「質の高いインフラ投資」を推進し、「持続可能な開発目標(SDGs)」も踏まえた開発途上国・地域の経済社会開発に貢献していきます。