日系人を起源とする信用組合と共に、ペルーの中小零細事業者を支援 -JICA初の劣後融資-

2019年12月19日

リマでの署名式にて

国際協力機構(JICA)は、12月18日、ペルーの日系人を起源とする信用組合であるCooperativa de Ahorro y Crédito ABACO(アバコ)に対し、最大1,000万米ドルの劣後融資を供与する契約を締結しました。本事業は、JICAにとって初の劣後融資、ペルーにおける初の海外投融資、また米州開発銀行(IDB)グループのイノベーション・ラボであるIDB Lab(*)との初の協調融資となります。

アバコは、1981年に32人の日系人を中心としたグループが日本の伝統的な相互扶助組織(頼母子講)の考え方を基に創立しました。創立以来、「相互扶助」を掲げ、組合員の福祉向上を目指し、組合員向け金融サービスをペルー全土で展開しています。ペルーでは、80年代のテロリズムの時代を経て他人に対する不信感が漂っていました。そのような中、アバコの組合員のニーズに寄り添うサービスが非日系ペルー人にも認められ、今日では2.5万人以上の日系・非日系組合員を擁する、同国信用組合最大手の一角に成長しています。さらに、金融アクセスが限定的な地方において農業を営む中小零細事業者(SMEs)に対し、地方の信用組合やマイクロファイナンス機関等の仲介金融機関を介して融資するプログラムを始め、IDB Labの支援も得て事業を拡大してきました。また、「Matsuri」(祭り)といった現地のペルーと日本の文化交流イベントのスポンサーや、日・ペルー商工会議所の理事を務めるなど、ペルーの日系社会において重要な役割を担っています。

ペルーではSMEsが企業数の99.9%及び雇用の82.4%を創出し、当国の経済社会の基盤をなしています。一方で、融資を受けているSMEsは全体の6%に留まり、SMEsファイナンスのギャップは102億米ドル存在していることから、SMEsに対する金融アクセス促進は持続的な経済社会発展のための重要な課題です。これに対し、ペルー政府は金融包摂国家戦略の中で2021年までに融資を受けられるSMEsの割合を50%まで引き上げることを目標としています。

ペルーには10万人の日系人が存在します。日本人ペルー移住120周年にあたる2019年は、「日・ペルー交流年」とされ、両国の関係を深める様々なイベントが実施されました。日系社会を金融面から支えてきたアバコと共にペルーのSMEsを支援する本事業は、日本と日系社会との新たな関係を示すものです。

なお、アバコは、ミュージックセキュリティーズ株式会社(MS)が運営するマイクロ投資クラウドファンディング(**)・プラットフォーム「セキュリテ」を通じて、日本の個人投資家から資金を調達し、農業事業者向け融資に活用中です。JICAは2017年にMSと業務提携覚書を締結しており、今後の連携を模索していきます。

JICAはこうした取り組みを通じ、ペルー、引いては中南米地域の民間セクターの力による開発に引き続き取り組んでいきます。


(*)IDB Lab:IDB Labは米州開発銀行グループにおける「イノベーション・ラボ」との位置づけで、ラテンアメリカおよびカリブ海地域(LAC)の人々の生活水準向上に向けた革新的な開発支援アプローチのために開発資金およびノウハウを提供しています。IDB Labの目的は、中南米地域における貧困層及び脆弱層のさらなる社会的包摂を促進することです。即ち、経済的、社会的および環境的要因によって脆弱な状況に置かれている人々の生活水準向上のための革新的な開発支援アプローチを幅広いパートナーと共創すべく、IDB Labは資金、ノウハウ、並びにネットワークを最大限活用しています。IDB Labは1993年の設立以来、LAC地域の26カ国にて実証事業を支援しており、その累計額は20億米ドル(約2,200億円)を超えています。IDB Labという名称は、2018年10月以降、多数国間投資基金(MIF)の新しいアイデンティティとして用いられており、日本はその重要な加盟国の一つです。

(**)マイクロ投資クラウドファンディング:クラウドファンディングは、一般的に購入型、寄付型、投資型等に分類される。その内、匿名組合契約を活用して実施される「投資型」クラウドファンディングを指し、①金融商品取引業の登録機関(第二種金融商品取引業者)が運営するプラットフォームを通じて仲介する点、②「匿名組合契約」の下で提供される資本性の高い資金である点、③不特定多数の個人からインターネットを通じて小口投資を集める点が特徴。
(出典「共感性に支えられた新たな金融手法:中小零細企業向け金融支援の新たな地平」JICA・IDB Lab、2017年)

関連リンク:

 
 
<参考>スキーム図

【画像】