北岡理事長がパキスタンとパレスチナを訪問:社会の平和と安定に向けた取り組みを確認し、さらなる関係強化へ

2020年3月2日

北岡伸一JICA理事長は、2月17日から27日にかけて、パキスタン・イスラム共和国とパレスチナ自治区を訪れました。パキスタンで第2回「Human Capital Summit」にて基調講演を行ったほか、それぞれで政府要人との会談、事業の現場視察等を行いました。

1.パキスタン・イスラム共和国

イムラン・カーン首相との面談

2nd Human Capital Summitの様子

北岡理事長は、首都イスラマバードでイムラン・カーン首相と会談しました。北岡理事長は、パキスタンは世界第6位の人口を抱える大国であり、同国の健全な発展は国際社会の平和と安定のためにも必要不可欠である旨述べました。また、70年以上にわたる日本とパキスタンとの協力関係を更に深化させつつ、カーン首相が掲げる貧困削減、人的資本開発等の優先政策にて協力を進める旨を述べました。
カーン首相からは、貧困層の所得向上、コミュニティインフラ整備等のJICAの協力がパキスタンの発展に大きく貢献していることについて感謝の言葉が述べられるとともに、さらなる協力への期待が表明され、両国の協力関係を今後一層深めていくことを確認しました。また、日本の第二次世界大戦後の開発経験に高い関心が寄せられました。

同国南部のシンド州では、イムラン・イスマイール州知事及びサイード・ムラッド・アリ・シャー首席大臣と面談しました。両者より、同州に対するJICAの長年の協力への謝意が表明されるとともに、教育、上下水、都市交通などの分野での協力関係や両国間の人材交流を今後も深めていくことの重要性を確認しました。

また、北岡理事長は、イスラマバードで世界銀行とJICAが共催した「2nd Human Capital Summit」に出席し、基調講演を行いました。北岡理事長は、Human Capital(注1)形成に資する日本の経験及びJICAの取り組みを紹介しつつ、女性が教育を受け社会に参加することは、ひいては次世代の子供たちの健やかな成長につながることを強調しました。また、Human Capitalに通ずる概念として人間の安全保障を紹介し、パキスタンにおいても人々が恐怖や欠乏から解放され、尊厳を持ち、質の高い成長を達成するための強靭な社会の実現に向けて協力する旨述べました。

また、北岡理事長は、学校に通うことができない児童等に対する教育協力(注2)の活動現場や、ポリオなどの感染症対策が行われている国立保健研究所ポリオ検査室など、JICA協力の現場を訪問しました。

このほか、政府要人や現地で活躍する日系企業関係者とも意見交換を行い、パキスタンの重要性や同国に対する大きな期待を確認しました。

2. パレスチナ

シュタイエ首相との会談

JAIP開発状況について説明を受ける様子

北岡理事長は、ラマッラにてムハンマド・シュタイエ首相と会談しました。シュタイエ首相からJICAの長年の協力に対する感謝とともに、厳しい国際情勢下でも日本との関係強化を図りたいとの発言がありました。両者は、「平和と繁栄の回廊」構想(注3)および「パレスチナ開発のための東アジア協力推進会合」(Conference on cooperation among East Asian countries for Palestinian Development: CEAPAD)(注4)を通じた協力の推進や、教育、上下水道等の重点開発課題について意見交換しました。会談の後、今後実施される技術協力プロジェクト「難民キャンプ改善プロジェクトフェーズ2」の討議議事録(Record of Discussions: R/D)と無償資金協力「医療機材整備計画」の贈与契約(Grant Agreement: G/A)の署名式に立ち会いました。

北岡理事長は、「平和と繁栄の回廊」構想の主要事業であるジェリコ農産加工団地(Jerico Agro-Industrial Park:JAIP)において、稼働中のテナント企業を訪問するとともに、事業関係者らとパレスチナ経済自立のための産業振興策について議論を交わしました。北岡理事長は、JAIPが様々な課題を解決しながら、パレスチナの工業団地開発のモデルとなることを期待していると述べました。このほか、日本の協力により住民の生活環境改善が進むジェリコ近郊のアクバットジャバル難民キャンプやジェリコ下水処理場等も視察し、関係者と日本の近代化経験や戦後の和解の経験を含めて、今後の協力のあり方について意見交換しました。

JICAは、引き続き、「平和と繁栄の回廊」構想の実現を含め、パレスチナ全体の経済・社会基盤の発展に貢献すべく、幅広い協力を行っていきます。

(注1)Human Capital:人的資本。人間が蓄積する知識、技能、健康など、個人が潜在的可能性を発揮するために必要とされるもの。世界銀行は、教育、保健、栄養を中心にした人的資本を重視することが、将来の個人・社会の発展のために不可欠との考えに基づき、2018年に「Human Capital Project」を立ち上げた。北岡理事長は世界銀行から、人的資本の重要性に賛同する「Human Capital Champion」の一人に指名されている。

(注2)関連リンク:

(注3)
日本、パレスチナ、イスラエル、ヨルダンの4者による地域協力によりヨルダン渓谷の社会経済開発を進め、パレスチナの経済的自立及び関係者間の信頼醸成を促す中長期的取組。

(注4)
「二国家解決」による和平実現に向けて、東アジア諸国のリソースや経済発展の知見を動員してパレスチナの国づくりを支援すべく、2013年2月に日本が立ち上げた地域協力枠組。