プレスリリース

インド向け2006年度円借款

〜世界最大の貧困人口を抱えるインドの貧困削減・経済開発・環境保全を支援〜

新聞発表/2007-2
2007年4月2日

1.国際協力銀行(総裁:篠沢 恭助)は、3月30日、2006年度円借款として、インド政府との間で11件を対象に合計1,848億9,300万円を限度とする貸付契約を調印しました。今次供与額は、昨年度のインド向け円借款に比べて約18.9%増となります。

2.インドは、経済安定化政策と自由化政策が一体となった「新経済政策」を1991年に導入して以降、年平均約6%の経済成長率を記録し、GDPでは世界第10位となり、近年はBRICsの一員として注目を浴びています。一方で、人口約11億人の35%が1日1ドル以下で生活する貧困層であり、世界の貧困人口の3分の1を抱えています。同国が重要課題としている貧困削減をすすめるためには、経済成長を促進し、雇用・所得の機会を増加させることが必要となりますが、電力・運輸等のインフラ不足が、産業振興や経済成長のボトルネックになっています。加えて、都市化による大気汚染、水質汚濁、都市部生活環境の悪化、森林減少といった環境問題が深刻化しています。その規模の大きさゆえに、これらの問題は地球規模問題に直結するインパクトを持っています。同国政府は策定中の第11次5ヶ年計画(2007年4月〜2012年3月)において、衡平かつ持続可能な成長を目標として掲げ、現存する貧困の削減に加え、経済成長を通じた長期的な貧困削減、さらにこれを持続可能なものとする環境保全を重点開発課題と位置付けています。

3.インドは、アセアン諸国や米国等との経済・貿易関係の強化や、隣接する中国・パキスタンとの政治経済関係の改善など戦略的取組みを進めており、国際社会の中で存在感を増して来ています。日本にとっても、同国は伝統的な歴史・文化・宗教的つながりに加え、近年のIT大国としての台頭や、アセアンを上回る3億人の中間層が存在していることから、今後の有望な貿易・投資市場として一層注目が集まっています。2006年12月のマンモハン・シン首相の訪日時には、日本とインドの関係を「戦略的グローバル・パートナーシップ」に引き上げることが合意され、その構築に向けた具体的取組を示す共同声明が署名されるなど、両国関係の一層の緊密化が期待されます。

4.今次調印する円借款は、こうした背景の下、経済インフラの整備、貧困層に裨益する地方開発及び環境改善といった分野を支援するものであり、事業の特徴は、以下のとおりです。

(1) 経済インフラ整備

電力分野では送配電施設整備により電力の安定供給を支援します(「バンガロール配電網設備高度化事業」「ハイデラバード都市圏送電網整備事業」)。バンガロールはインドのシリコンバレーと呼ばれるインドのソフトウェア産業の中心地であり、日系企業約60社を含む多くの海外企業が立地していますが、頻繁に停電が生じているため、日本において開発された停電箇所探知技術を活用し、配電自動化システムを整備し、停電からの早期復旧や配電設備の有効活用を目指します。

鉄道分野では、首都デリーにおいて、地下鉄を含む都市鉄道の建設を通じ、交通混雑の緩和とともに、世界の主要都市の中でも特に深刻な大気汚染の緩和を支援します(「デリー高速輸送システム建設事業フェーズ2(II)」)。全線開業時には、都営地下鉄の乗客規模を超える264万人/日の乗客が見込まれています。なお、当行はデリー高速輸送システム建設事業のフェーズ1に対しても支援を行っており、2006年11月に完成しています。

港湾分野では、インド最大の年間貨物取扱量を誇る港の設備増強を行います(「ビシャカパトナム港拡張事業」)。同港は、世界有数の鉄鉱石産出国であるインドの主要な鉄鉱石鉱山であるバイラディラ鉱山の重要な積出港であり、同鉱山から産出された鉄鉱石の約3割を日本が輸入しているため、本事業への支援は、日本に対する安定的かつ効率的な鉄鉱石の輸入にも繋がるものです。

(2) 貧困層に裨益する地方開発

インド南部に位置するアンドラ・プラデシュ州の多くの地域では、雨水に依存して農業が営まれています。そのため、当該地域を中心に灌漑施設を整備するとともに、農業生産性の向上につながる農業技術の普及を支援します(「アンドラ・プラデシュ州灌漑・生計改善事業」)。主な対象地域である同州北部は貧困層の比率が高いため、農業生産の増加を通じた貧困緩和も見込まれます。

インド北東部のトリプラ州及びインド西部のグジャラート州では、貧困層による焼畑農業の拡大、家畜飼料・燃料のための森林資源の過剰摂取により、森林の荒廃が進んでいます。そのため、地域住民の参加を得て植林を行い、貧困層の生活に不可欠な森林を再生するとともに、小規模インフラ整備や所得創出のための小規模事業を通じて、森林に依存する地域住民の生活水準の向上を支援します(「トリプラ州森林環境改善・貧困削減事業」「グジャラート州森林開発事業フェーズ2」)。また、トリプラ州は、国際的NGOであるConservationInternationalが認定する世界の34のホットスポット [1]の1つであるインドビルマ地方に隣接しているため、生物多様性調査、エコツーリズム開発、保護区管理強化等を実施し、生物多様性の保全も支援します。

(3) 環境改善

インドでは、急速な人口増加や経済発展に伴う上水需要増加のスピードに上水道施設の整備が追いついていないため、施設の整備と共に、上下水道経営の改善に向けた取り組みも支援します(「ケララ州上水道整備事業(II)」「アグラ上水道整備事業」)。「アグラ上水道整備事業」はガンジス川を水源とするガンジス上流灌漑水路から導水し、世界遺産タージマハルを擁するアグラ市及び周辺地域向けの上水道整備を行うものであり、貧困層を含むアグラ市民の衛生環境改善が期待されるとともに、同市を訪れる多くの観光客に対しても裨益が見込まれます。

一方、下水道については、都市部への急激な人口流入や工業化に対して、下水道整備が追いついていないため、下水処理能力、自然浄化力をはるかに上回る汚水が未処理のまま河川へ排出されています。そのため、河川の水質汚濁のみならず、都市部の生活環境の悪化が深刻となっています。そこで、下水道施設を整備し、安定的な下水道サービスの提供を通じて地域住民の衛生・生活環境改善を支援します(「アムリトサール下水道整備事業」「オリッサ州総合衛生改善事業」)。また、これらの事業によるスラムへのトイレ等衛生施設の設置により、都市貧困層への裨益も期待されます。

 (4) 知的協力の推進

上記事業においては、事業効果の持続性を高めるために、様々な形で知的協力を推進する予定です。主要なものは以下の通りです。

「デリー高速輸送システム建設事業フェーズ2(II)」、「ビシャカパトナム港拡張事業」では、本事業に従事する多数の移動労働者のHIVの感染リスクを抑えるため、移動労働者への啓発等のHIV予防活動を実施します。

「バンガロール配電網設備高度化事業」「ハイデラバード都市圏送電網整備事業」では、事業実施者のキャパシティ・ビルディングを支援すべく、組織全体として統一した品質管理目標を共有・達成するためのボトムアップ型の取り組みである総合品質管理を推進します。

上下水道整備事業(「ケララ州上水道整備事業(II)」「アグラ上水道整備事業」「アムリトサール下水道整備事業」」「オリッサ州総合衛生改善事業」)においては、水道経営の包括的な改善に向け、配水網の改修及び漏水対策チームの設置による漏水削減、資産の適正管理促進、メーター設置や支払手段の多様化による料金回収率の向上等の様々な取り組みを実施します。

「アンドラ・プラデシュ州灌漑・生計改善事業」では、参加型灌漑管理を促進するため、従来は灌漑施設建設後に形成されてきた水利組合を工事開始前から形成し、住民のオーナーシップの向上につとめるとともに、NGOや国際機関と連携し、灌漑局職員及び州全体の水利組合を対象にトレーニングを実施します。

さらに、事業の準備段階の取り組みとして、「グジャラート州森林開発事業フェーズ2」では、マングローブ林の植林・保全の効果を高めるため、知見を有する琉球大学及び沖縄県の専門家と連携して同州にてセミナーを開催し、マングローブ保全やエコツーリズムの取り組みといった日本の経験と知見をインド側の関係機関に紹介しました。

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[1] 全体で地球の地表面積のわずか2.3%でありながら、最も絶滅が危惧されている哺乳類、鳥類、両生類の75%が生息している地域