海外経済協力基金プレスリリース

環境・インフラ整備へ過去最大規模の円借款

−インドの植林事業を支援−

OECF(総裁 西垣 昭)は、インドへの96年度円借款11案件の所要資金として、総額1,327億4千6百万円を限度とする貸付を行うことを決め、平成9年2月25日、OECFを代表して西垣昭 総裁が、インド国を代表してクルディプ・サハデーヴ(H.E. Mr. Kuldip Sahdev)駐日特命全権大使が借款契約に署名、調印を行った。

この結果、OECFのインド国に対する貸付は累計で132件、1兆4,975億2千3百万円となった。

今回の借款は、環境プロジェクト(上下水道及び植林)(3件)、都市交通プロジェクト(2件)、電力プロジェクト(5件)、灌漑プロジェクト(1件)から構成されている。

今回の借款の特色、各借款の金額・条件及び事業概要は、以下の通りである。

1.今次円借款の特色

(1)環境支援に重点

開発によって所得が向上しても環境が破壊されては、現在及び将来の世代の生活の質を悪化させることになるため、持続的な開発を達成するには環境保全が不可欠である。今年度の対インド円借款では従来より重点を置いている経済インフラの整備に加え、環境支援にも重点を置き、以下のプロジェクトを採り上げた。

1) 植林

インドにおいては農村部における人口増加による燃料用木材需要の増加、過放牧により、森林面積が急速に減少している。このため、植林事業の効果的実施と運営・維持管理のためには、プロジェクトへの住民参加が不可欠で、州政府当局職員と住民へのトレーニング、過去の経験のフィードバックによる事業実施方法の改善が重要になってきている。OECFはインド最大の乾燥地域であるラジャスタン州において1991年度以来3件(「インディラガンディー運河地域植林事業」、「アラバリ山地植林事業」、「ラジャスタン州植林開発事業」)の植林事業を実施し、1995年には「グジャラート州植林開発事業」を採り上げてきているが、今年度は「タミールナド州植林事業」と「カルナタカ州東部植林事業」の2件を採り上げた。

今年度借款供与に当たっては、住民の植林参加へのインセンティブを高めるために、住民が事業の維持管理だけでなく、計画段階にも加わり、彼らのニーズを十分汲み取れるように配慮した。例えば、植林後一定年限を経れば、再生可能な範囲で伐採等による林産物の利用を住民に認めるなどして参加意欲を高めている。また、植林においてはNGOの協力を積極的に仰ぎ、州政府と住民の連携、住民のニーズの的確な把握とその計画への反映を図ることとしている。

植林プロジェクトは女性・貧困者層への雇用創出を通じて、開発の成果のより公平な分配に資するものである。

2) 上水道

インドの地方都市においては経済発展による都市化の進展に伴い、水の絶対供給量が不足しているばかりか、安全な飲料水の確保が困難であるところが依然として多い。適切な上水道設備がないところでは、溜め池などの不衛生な水が飲料水として使われているのが現状であり、上下水道の整備は直接ベーシックヒューマンニーズに応えるものである。今年度採り上げる「ケララ州上水道整備事業」では、ケララ州の州都を含む5つの地方都市において安全な飲料水の供給を増加させ、民生の向上を図る。

(2)経済インフラの整備

持続的な経済成長には、外国資本の導入も含めた経済活動の活性化が不可欠である。対インド円借款では、国内外の民間企業の事業・投資環境の整備など大きな経済波及効果が期待される経済インフラ整備に重点を置いてきている。

1) 電力

慢性的電力不足はインドにおいて経済発展の主要なボトルネックとなっている。増大する電力需要に対処するために、対インド円借款では設備能力の増加を目的とした発電所新設事業を実施する一方で、送配電ロスの低減、電力の安定的供給、州間での電力融通のための送配電網整備事業も支援している。また、新規設備建設に加えて既存施設の改修についても積極的に支援を進めてきている。

今年度の発電所新設案件は、「シマドリ石炭火力発電所建設事業」、「ツイリアル水力発電所建設事業」、送電網整備事業は、「北部送電網整備事業」、「西ベンガル州送電網整備事業」、改修事業は、「ウミアム水力発電所改修事業」である。今年度電力案件借款合計は、528億円である。

2) 都市交通

経済成長よる都市化の進展により、都市部の交通混雑は日増しに激しくなっており、自動車の排ガスによる大気汚染も懸念されている。今年度借款ではインドを代表する都市であるデリーとカルカッタにおいて交通網の整備と都市環境の保全の双方に資するプロジェクトを採り上げる。

「カルカッタ都市交通施設整備事業」は、カルカッタ市内において路面電車・自動車・バスと歩行者の交通混乱・混雑緩和のために、平面交差点の改良及び立体交差の建設を行うものである。

「デリー高速輸送システム建設事業」は、インド政府の第8次5ヶ年計画に含まれる重要度の高い案件であり、デリーにおいて地下鉄、地上・高架電車等による総合的な大量高速輸送システムを構築し、近年のバス・自家用車台数急増に起因する交通渋滞、大気汚染に対処するものである。

3) 灌漑

インドは70年代に食糧自給を達成しているが、他のアジア諸国に比べて生産性が低く、将来の人口増と国民のさらなる栄養摂取状況改善の必要性を考慮すると、食糧増産の必要性は依然高い。また、農業は農村に住む貧困層の主要な収入源であることから、貧困対策としても重要性を持っている。

今年度の「ラジガート運河灌漑事業」は、マディヤ・プラデシュ州において灌漑施設を整備することによって雨期の雨水を有効活用し、農業生産の拡大・安定化を図るものである。尚、当該施設受益者のうち、貧困層の中核を占める指定カースト及び指定部族は25%を占める。

(3)過去最大規模の資金規模

今年度円借款総額は、1995年度分と比較して3.1%増の1,327億4,600万円に達したが、この金額は対インド円借款としては過去最大規模である。内訳としては環境が31%、電力が40%、都市交通が19%、灌漑が10%である。

1991年発足のラオ政権が開始した経済自由化政策は96年6月発足のゴウダ連立政権でも継続されており、潜在的に大きなインドの市場は新たな投資先として、ますます国際的な関心を集めている。しかしながら、国内外の民間企業の経済活動に係る法制度整備と並んで、インフラ整備を通しての投資環境整備の必要性はより一層高まっており、インド経済発展の潜在能力を開花させるためには、円借款などの公的資金による持続的な支援が今後も必要である。

対インド円借款部門別貸付承諾額推移(百万円)
 19921993199419951996
電力・ガス 36,568(3)68,243(3)82,205(6)17,685(2)52,796(5)
運輸  21,397(2)10,663(2) 25,439(2)
社会サービス     
上下水道17,773(1) 17,098(1)37,122(2)11,997(1)
観光     
環境保全   11,580(2)5,112(1)  
植林  4,219(1)15,760(1)29,292(2)
鉱工業 24,482(1)     
農業   16,049(1) 13,222(1)
開発金融 30,000(1)  30,000(1)  
商品借款 33,085(1)     
その他   7,046(1) 
合計111,908(6) 119,640(6)125,765(12)128,774(9)132,746(11)
 
環境案件
金額割合
17,773(1)
16%
-
-
32,897(4)
26%
57,994(4)
45%
41,289(3)
31%

( )内は件数

2.借款金額及び条件

 金額
(百万円) 
金利
(%/年) 
償還期間
(年) 
調達条件
北部送電網整備事業 8,4972.330(10) 一般アンタイド 
西ベンガル州送電網整備事業  11,087 2.3 30(10) 一般アンタイド
ウミアム水力発電所改修事業1,700 2.330(10) 一般アンタイド
ツイリアル水力発電所建設事業  11,695 2.3 30(10) 一般アンタイド
シマドリ石炭火力発電所建設事業 19,817 2.3 30(10) 一般アンタイド
デリー高速輸送システム建設事業  14,7602.3 30 10) 一般アンタイド
カルカッタ都市交通施設整備事業  10,679 2.3 30(10) 一般アンタイド
ケララ州上下水道整備事業 11,997 2.1* 30(10) 一般アンタイド
カルナタカ州東部植林事業 15,968 2.1* 30(10) 一般アンタイド
タミールナド州植林事業  13,324 2.1* 30(10) 一般アンタイド
ラジガート運河灌漑事業13,222 2.3 30(10) 一般アンタイド
合計 132,746 −   

*環境特別金利