海外経済協力基金プレスリリース

タイの人材育成や雇用創出を優遇条件により支援

Press Release:98/09/30

—経済・社会の構造改善のための支援パッケージ—

 OECF (総裁 篠沢 恭助)は、タイ王国における「工業部門強化計画」等7案件の所要資金として、総額677億3,700万円を限度とする貸付を行うことを決め、1998年9月30日、借款契約に調印した。これはタイの通貨危機克服努力を支援した本年7月の緊急借款(総額498億円)に続くものである。この結果、タイ向け23次円借款の承諾額は合計1,175億円6,200万円となりタイ向けでは史上2番目の支援規模となった。

 調印は、東京のOECF本部で行われ、OECFを代表して篠沢 恭助総裁が、各借款の借入人を代表して、チャワット・アッタユック(H.E.Mr.ChawatArthayukti)駐日タイ王国特命全権大使、プラパット・チョンサングゥアン(Mr. Prapat Chongsanguan)首都圏高速鉄道公社総裁、ピタヤポン・ナタラドル(Mr.PittayapolNattaradol)農業・農業協同組合銀行総裁、アノタイ・テサモントリクン(Mr. Anothai Techamontrikul)タイ産業金融公社総裁が署名することによって行われた。

 この結果、OECFのタイ王国に対する貸付承諾累計は、219件、1兆6,011億9,600万円となった。

1. 今回の借款の特色

(1)緊急借款と併せた総合的支援

 OECFは、日本政府が総合経済対策の一環として取りまとめた「アジア支援策(1998年4月政府発表)」を踏まえ、本年7月31日に緊急分として第23次円借款の一部を前倒しで供与し、通貨危機後のタイ政府を支援している。今回の借款は、同じ第23次円借款の残る部分を緊急分に引き続き供与するものである。
7月の緊急パッケージは、「社会投資事業」「既往案件内貨融資事業」を対象とし、タイ経済・社会が直面する短期的かつ緊急の課題(財政難による開発事業の遅延、失業の増加)に対応するものであったが、今回の借款パッケージは、タイ経済・社会のより中長期的な発展を見据えた支援内容となっている。
OECFは、これら2つの23次円借款パッケージにより通貨危機後のタイ政府の総合的な経済・社会開発政策を支援している。

(2)優遇条件による経済・社会開発支援

 今年4月の日本政府の「アジア支援策」における構造調整支援特利制度の導入を受け、タイの通貨危機後の経済構造調整努力を支援する「工業部門強化計画」、「地方開発・雇用創出農業信用計画」の2つのツーステップ事業(開発途上国の政策金融機関が行なう中小民間企業や小農等への貸付けの原資をOECFが供与する事業)に対し構造調整特別金利(金利1.0%/年、償還期間25年)が適用されている。
両事業は、それぞれ工業部門における生産力・生産性向上、農村部におけるアグロビジネス支援・雇用創出を目的とした事業であり、タイにおける金融機関の流動性不足を補う役割を担うほか、それぞれ産業構造調整、農村部における雇用創出に貢献する事業として優遇金利対象となっている。
また、環境特利については、7件の全案件について事業全体若しくは案件の一部分に適用されている。これは、昨年9月に日本政府により発表された「環境配慮のための円借款金利低減策」及び昨年度12月発表の「京都イニシアティブ」拡充強化策を受けて、地球環境問題及び公害対策に関連する事業本体、または実施の際に環境配慮を必要とする案件に対するコンサルティングサービスに対し大幅に緩和された条件(金利0.75%/年、償還期間40年)で借款を供与するものであり、優遇金利により被援助国における環境問題への取組みの支援を一層強化しようとするものである。今回の借款では、「バンコク地下鉄建設事業(III)」「地域開発事業(2)」「地方開発・雇用創出農業信用事業」の3事業の本体部分約264億円、全案件のコンサルティング・サービス部分約27億円、併せて借款の4割に相当する約291億円に対して環境特別金利が適用されている。
更に、人材育成に対する支援事業である「産業人材育成センター建設計画」及び「工業部門強化計画」の人材育成部分について、人材育成特別金利(金利0.75%/年、償還期間40年)が適用された。
この結果、23次円借款(通常分)全体の平均金利は1.0%となり、緊縮財政下にあるタイ国の財政負担の軽減に大きく貢献している。

(3)対タイ円借款史上2番目の資金規模

 今回の第23次円借款(通常分)においては、総計677億3,700万円が承諾された。本年7月に既に承諾済みの第23次円借款(緊急分)の498億2,500万円と併せると、今年度の対タイ支援額は1,175億6,200万円(対タイ円借款史上2番目の金額)となる。

(参考)過去5年間の対タイ円借款承諾額の推移
 調印日金額
18次借款1993年 9月 22日1,045億円
19次借款1994年 9月 30日823億円
20次借款1995年 9 月12日617億円
21次借款1996年 9月 27日1,184 億円
22次借款1997年 9月 30日1,059 億円
23次借款(緊急分)1998年 7月 31日498 億円
23次借款(通常分)1998年 9月 30日677 億円
(23次借款全体) (1,176億円)

(4) 今次円借款供与のポイント

 タイ政府が実施している経済再建努力を踏まえ、当面の通貨危機・経済危機を乗り越えるためのタイ政府の動きを支援した23次緊急分円借款に続き、タイの中長期的な発展基盤整備のための円借款支援を継続する。

[1] 工業部門強化・産業競争力強化に向けた総合的支援
今般の通貨・経済危機以降、産業構造転換の必要性が改めて認識されている。特に、労働集約型から資本・技術集約型への産業転換、そのために必要な熟練労働者の育成、労働生産性の向上に資する事業への支援が必要となっている。通貨危機後修正された国家計画においても、タイ経済の構造調整への取組みが重視されており、なかでも工業部門の強化が重要とされている。
今回の借款においては、工業部門における生産力・競争力強化を目的とした「工業部門強化計画」、工業部門における人材育成を目的とした「産業人材育成センター建設事業」を採り上げている。「工業部門強化計画」は、タイ工業省の「産業構造調整マスタープラン」に基づき円借款要請されたものであり、工業部門の競争力強化、生産性の向上を図ることを目的とし、競争力強化の為に民間中小企業が必要とする設備投資資金等に対しタイ産業金融公社を通じて貸付を行なうツーステップローンである。
また、「産業人材育成センター建設事業」は、工業団地という労働現場の中に産業人材育成センターを建設し、刻々と変化する民間企業のニーズを研修内容に反映させながら工業部門における熟練労働者の育成を行なうものである。

[2] 農業セクターへの総合的支援
タイ国家計画においては、農業の効率化や農村の生活レベル改善のための事業実施が重要とされている。また、経済危機対応という観点からも、雇用吸収力の高い農業部門を支援する意義は高い。
今回の借款においては、特に地方の農業セクターに対する総合的支援として、「農地改革地区総合農業開発計画」、「地方開発・雇用創出農業信用事業」の2案件を採り上げている。「農地改革地区総合農業開発計画」は、東北タイにおける農地改革地区を対象として、同国貧困層の農民に対して総合的農業支援を行なう事業である。また「地方開発・雇用創出農業信用事業」は、農業・農業協同組合銀行を通じて農業生産の効率化・多様化等を目的としたツーステップローンを供与する事業であり、特に今回の借款においては、早期の事業効果発現が期待される特別プログラムを含んでいる。

[3] 地域経済振興・地域間格差の是正
80年代後半以降の急速な経済成長の過程において、バンコクと地方の地域間格差・所得格差は拡大しており、国家計画においても地域間格差の是正が重要な政策課題とされている。
今次借款においては、地域間格差の是正に貢献する事業として、前述の「地方開発・雇用創出農業信用事業」、「農地改革地区総合農業開発事業」に加え「地域開発事業(2)」を採り上げている。
「地域開発事業(2)」は、ラオス・マレーシア等の近隣諸国と隣接する地方都市や南部海岸の海浜国立公園等の地方の観光地における観光・居住環境基盤整備を行なう事業である。同事業により、観光業全体として外貨獲得に貢献するのみならず、中長期的な地域経済振興・雇用創出・地域間格差の是正に貢献することが期待されている。

[4] 地方における雇用創出
タイ政府は通貨危機後の国家的政策課題として、経済の安定化、経済危機の社会への悪影響の最小化等を挙げており、特に、失業対策、農村支援が課題として設定されている。OECFは、今年度7月にタイ政府の経済構造調整下において深刻化する失業問題に対応する「社会投資事業」に借款を供与し、失業者・帰農者に対する短期的な雇用対策を既に実施している。
今回の支援においては、特定産業の基盤を整備することにより中長期的かつ安定的な雇用機会を提供すべく「農地改革地区総合農業開発事業」、「地方開発・雇用創出農業信用事業」の2案件を採り上げている。同2事業は、いずれも地方の農業部門の強化により、雇用を中長期的・安定的に創出するものであるが、特に前者については、最も貧困な東北地方の4県を対象とした事業であり、タイ政府が主導する貧困対策にも貢献するものである。

[5] バンコク交通渋滞問題等への対応
今般の経済危機の長期化を防ぎ、早期に経済を回復させるためにも、民間投資を促進するための投資環境整備が必要である。特に、良好なビジネス環境の阻害条件となっているバンコクの交通状況については早急に改善し、投資環境を整備することが重要である。
タイ政府は近年、バンコク地下鉄建設事業に代表される各種交通インフラの整備を継続的に行ないこの問題に対処しようとしている。OECFも、「バンコク地下鉄建設事業(III)」、「交通計画管理セクターローン」に借款を供与し、この動きを支援する。
「バンコク地下鉄建設事業」は、96年度よりOECFが継続的に支援している事業であり、バンコクの交通渋滞の改善に大きく貢献することが期待されている。「交通計画管理セクターローン」では、交通セクターの調整機関として設立された陸上交通局調整委員事務局を通じて、交通セクターにおける政策・計画の策定や、都市部における比較的小規模なプロジェクト実施を支援し、交通セクターの問題の改善に貢献するものである。

(5) 通産省、国際協力事業団(JICA)との連携

 今回の円借款7案件のうち5案件が通産省・JICAとの緊密な連携のもとに推進されており、様々な形態の経済協力が相乗効果を発揮して、より質の高い協力事業となることが期待されている。「バンコク地下鉄建設事業」においては、建設・運営に関して専門家が助言を行うことにより、事業全体がより効果的に実施されることが期待されている。また、「農地改革地区総合農業開発事業」はJICAによるマスタープランに基づいて立案された事業である。
「地方開発・雇用創出農業信用事業」、「工業部門強化計画」については、今後JICA専門家の派遣が予定されている。
「工業部門強化計画」、「産業人材育成センター建設事業」については、タイ工業省の「産業構造調整マスタープラン」に対する通産省の支援策である「潜在的発展性実現支援パッケージ」との緊密な連携により、事業効果を高める取組みを行なっている。「工業部門強化計画」では、円借款による中小企業に対する設備投資をより有効なものにするために、日本の通産省から専門家が派遣される予定である。「産業人材育成センター建設事業」については、センターの講師及びカリキュラム開発の為の専門家を通産省を通じて招聘することを予定している。

対タイ円借款承諾額累計の部門別構成 (今次円借款含む) (合 計 219件 1兆6,011億9,600万円)
セクター名件数金額(百万円)比率(%)
運輸70691,56843.2
電力・ガス47318,63319.9
社会的サービス28162,64210.2
鉱工業20126,3757.9
通信13110,0016.9
農林水産業25124,7497.8
灌漑・治水1457,8783.6
その他29,3500.6
合計2191,601,196100.0

2. 借款金額及び条件

 案件名金額
(百万円)
貸付金利
(%/年利)
償還期間(年)
(うち据置)
調達条件
本体コンサルタント
1バンコク地下鉄建設事業(III)23,3430.75*40(10)*一般アンタイド

-

2地域開発事業(II)3,6022.2*
1.7*
0.75***
25(7)*
25(7)*
40(10)***
一般アンタイド
一般アンタイド
部分アンタイド
二国間タイド
3交通計画管理セクターローン4,1482.2*
0.75**
25(7)*
40(10)**
一般アンタイド二国間タイド
4産業人材育成センター建設事業2,5730.75***40(10)***部分アンタイド二国間タイド
5農地改革地区総合農業開発事業3,6172.2*
0.75**
25(7)*
40(10)**
一般アンタイド二国間タイド
6地方開発・雇用創出農業信用事業18,3601.0*
0.75***
25(7)*
40(10)***
一般アンタイド二国間タイド
7工業部門強化計画12,0941.0*
0.75***
25(7)*
40(10)***
一般アンタイド二国間タイド
 合計 7件67,737----

注)*本体、**コンサルティング・サービス、***本体の一部とコンサルティング・サービス
特別環境案件金利適用案件(本体): 1, 2 ,6
通常環境案件金利適用案件(本体): 2
人材育成特別金利(本体): 4, 7
構造調整支援特別金利(本体): 6, 7
〔なおコンサルティングサービスについては、環境配慮が必要な案件につき金利0.75%、償還期間40年(内据置10年)の特別金利を適用〕

3. 事業概要

(1) バンコク地下鉄建設事業(III)
MRTA Initial System Project (Blue Line)(III)

 バンコクの交通渋滞は、急速な経済発展に伴う車輌台数の急増によって深刻な状況に陥っており、ラッシュ時の平均時速は約8km、年間の経済的損失はタイGDPの約3%に達するという試算もあるなど、タイ経済に大きな影響を与えている。
本事業は、フアランポン国鉄中央駅からバンスー駅に至るバンコク中心部に総延長約20kmの地下鉄を建設して、道路交通に依存するバンコクに代替交通手段を提供し、深刻なバンコクの交通渋滞問題を緩和すると同時に、大気汚染改善に貢献することを目的としている。
今回の借款は21次、22次借款(96年度、97年度借款)に続く第3期分となっており*、借款資金は、トンネル、駅、車輌基地建設、軌道敷設等の土木工事費用に充当される。なお、本事業については地下鉄建設・運営等に関し助言を行うため、一昨年より国際協力事業団(JICA)専門家が派遣されている。
本事業は、交通渋滞緩和により地球温暖化対策に資する事業として環境特利(金利0.75%/年、償還期間40年)が適用される。
事業実施者は、首都圏高速鉄道公社(MRTA:Metropolitan Rapid Transit Authority:175 Rama IX Road,Huai Khwang, Bangkok 10310 Thailand、Tel:662-273-0860、Fax:662-273-0891)である。

*本事業に対しては、今年7月の緊急借款「既往案件内貨融資事業」としても支援を行なっているため、本事業に対する支援は今回で4回目になる。

[back to project list]

(2) 地域開発事業(2)
Regional Development Program (II)

 観光セクターは、他の輸出産業を上回る最大の外貨収入源であり、タイ経済にとって重要なセクターである。また、観光収入の63%は、地方における観光客の支出によるものであり、観光業は地方経済に非常に大きな経済効果を及ぼしている。他方で、観光客の急速な増加により、観光地の環境悪化、観光業に従事する人材の不足、遺跡の保全状況の悪化等の問題が顕在化している。
本事業は、地域開発事業(1993年借款供与、4,268百万円)の継続案件であり、[1] 観光地環境保全・修復、[2] 観光業人材育成、[3] 地方観光基盤整備からなる計50のサブ・プロジェクト(小さなプロジェクト)によって構成されており、事業全体として、観光資源・サービスの質の向上、文化遺産・自然遺産・自然環境等の保全・修復を通じて、持続可能な観光開発(SustainableTourism Development)を推進するものである。
また、本事業によりタイ政府が国家計画にて課題としている外貨獲得、地域経済振興、雇用創出、歴史的価値・環境の保全、開発への住民参加が実現されることが期待される。
なお、サブ・プロジェクトの具体例としては、それぞれ[1] 南部海岸の海浜国立公園における廃棄物・排水処理施設の建設、[2] 観光業における技能研修のための研修センターの建設、[3]ラオス・マレーシア等近隣諸国との国境地域における観光基盤整備、地方村落における手工芸生産支援、アユタヤ、バンチェン等ユネスコ世界文化遺産指定歴史都市の保全・修復、ラムサール条約指定地のタレイノイ、ユネスコ世界自然遺産指定地のワイカケン国立公園等の保全のための自然研究センター建設などが挙げられる。
上記サブ・プロジェクトのうち、海浜国立公園における廃棄物・排水処理事業(10箇所)、自然研究センター建設事業(4個所)については、それぞれ居住環境整備事業、自然環境保全事業として、環境優遇金利(金利1.7%/年、償還期間25年)、環境特別金利(金利0.75%/年、償還期間40年)が適用される。
借款資金は事業実施にかかる資機材・役務の調達及びコンサルティング・サービス(詳細設計、プログラム・マネージメント)に充当される。
事業実施者は、タイ観光公社(TAT:Tourism Authority of Thailand、住所:202, Le Concorde Building,Rajchadapisek Road, Huaikwang, Bangkok 10320, Thailand、Tel:662-694-1222、Fax:662-694-1220)

[back to project list]

(3) 交通計画管理セクターローン
OCMLT Traffic Planning and Management Sector Loan

 バンコクにおける交通は9割を道路に依存し、近年の急速な経済発展に伴う車両台数の急速な増加によって、渋滞問題は深刻な状況に陥っている。これらは、基本的には道路容量の不足(バンコク市街地中央環状道路内の道路面積で8.1%、東京都23区内:13.6%、大阪市:16.2%)に起因しているが、袋小路が多いなどの非効率な道路網、バスを中心とした公共交通機関の利便性の悪さ等も渋滞の要因となっている。その他にも交通関係行政機関が多数存在し相互の調整が十分に図られていない、交通事故の増加等、バンコクの交通セクターは様々な問題を抱えている。
本事業は、これらのバンコクにおける交通をとり巻く問題を解消するため、OCMLT(陸上交通調整委員会事務局)を調整窓口として、交通セクターにおける政策や計画の策定、小規模なプロジェクト実施を支援するものであり、ネットワーク構築、交通安全改善を通じて、[1]道路利用の効率性の向上、[2] 交通安全の確保、[3] 公共交通機関の利便性の向上を図るものである。

1) 政策及び計画
大量輸送機関に係るマスタープランの見直し。
現在円借款を受けて建設中のバンコク地下鉄(ブルーライン)等の大量輸送機関との連携を念頭においたバスルート・運行スケジュールの見直し。

2) プロジェクト
道路利用効率性の向上のための道路拡幅や立体交差の建設。
交通安全の確保のための信号機及び歩道橋の設置。

3) 上記1)、2)におけるコンサルティング・サービス
借款費用は事業実施にかかる資器材・役務の調達、及びコンサルティング・サービス(事業全体の進捗監理、入札補助、各事業実施機関の調整等)に充当される。

事業実施者は、陸上交通調整委員会事務局(OCMLT: Office of the Commission for the Management ofLand Traffic、住所:35 Petchburi Rd., Phyathai, Rajchathevi, Bangkok 10400、Tel:662-215-1515、Fax:662-282-3688)

[back to project list]

(4) 産業人材育成センター建設事業
Human Resource Development Centers for Industries Project

 タイは、近年の周辺諸国の製品の品質・価格競争力の向上を受け、輸出競争力の強化を迫られている。特に、従来の労働集約型産業に依存した産業構造から脱却し、技術集約型産業の育成を図ることが重要な政策課題となっている。輸出産業・工業分野における国際競争力の向上を図るためには、技術者・熟練労働者の質の向上、絶対数の確保が急務であるとされているものの、効果的な人材育成が図られていないのが現状である。
本事業は、熟練労働者の需要が高い2つの工業団地(バンプー工業団地、北部工業団地)内に、産業人材育成センターを建設し、工業団地内の労働現場において、民間企業のニーズを反映した研修・再訓練を行なうことにより、技術水準の高い熟練労働者を育成するものであり、タイ経済の国際競争力向上、持続的な経済発展に貢献することを目的としている。主な研修内容としては電気・電子、生産・制御技術、品質管理、経営監理、基礎教育(語学・コンピューター等)等を予定している。
借款資金は、センターの建設、研修用機材の調達、カリキュラム開発のための専門家雇用、センターで働く講師の海外訓練費、コンサルティング・サービス(詳細設計、施工監理、カリキュラム開発支援、海外訓練の支援等)に充当される。本借款には人材育成特別金利(金利0.75%/年、償還期間40年)が適用される。
事業実施者は、タイ工業団地公社(Industrial Estate Authority of Thailand、住所:618 Nikom MakkasanRoad, Rajthevee, Bangkok 10400, Thailand、電話:662-253-0561、FAX:662-253-4086)である。

[back to project list]

(5) 農地改革地区総合農業開発事業
Project for Revitalization of the Deteriorated Environment in the Land ReformAreas through Integrated Agricultural Development (Stage I)

 本事業は、最貧困地域である東北タイのうちコンケン・マハサラカム・サコンナコン・ムクダハン4県の農地改革地区(計10地区48,000ha)において、既に農業協同組合省農地改革局(ALRO)*より土地を配分された農民に対し、農業用ため池等農業基礎インフラを供与し、総合農業開発を推進するものである。農地の保全、土地生産性の向上により、[1]農地改革地域内の農家の生活の安定及び[2] 不法開発等の森林への開発圧力の軽減を図るものであり、加えて[3] 通貨危機以降の経済情勢の悪化に伴い増大している都市からの帰村者への就業対策としての性格も有する。
本事業のうち、本借款資金の使途となる主な事業概要は、以下の通り。

1) 総合農業開発

  1. 農業基礎インフラ整備(農業用のため池建設、コミュニティー・ポンド整備、農道の建設、灌漑施設の建設、地図の作成)
  2. 建設機材調達
  3. 環境対策(植林等による土壌・水質保全)

2) コンサルティング・サービス

  1. 詳細設計、入札補助、施工監理
  2. 農民への営農指導
  3. ALRO職員の研修

 なお、本事業のうち、コンサルティングサービスについては環境特別金利(金利0.75%、償還期間40年)が適用される。なお、本事業のうち、コンサルティングサービスについては環境特別金利〔金利0.75%/年、償還期間40年〕が適用される。
事業実施者は、農業協同組合 農地改革局(ALRO : Agricultural Land Reform Office、住所:RetchadamnoenNok Rd., Bangkok 10200, Thailand、Tel: 662-280-4671、Fax:662-281-0373)である。

*ALROは「土地改革法」(Land Reform Act:1975年制定)に基づき76年に設立され国有地を中心として農地の土地なし農民への配分、農地改革地域内における社会経済経済基盤の整備による農民の基礎的生活条件の向上、農業経営資金の貸付けや灌漑施設の整備による農業経営の確立などの事業を実施している。これまでに830万ライ(1ライ=0.16ha)の農地を45万世帯以上に配分してきている。(back)

[back to project list]

(6) 地方開発・雇用創出農業信用事業
Agricultural Credit for Rural Development and Job Creation Project

 本事業は、タイ地方農村の個人農家が行う固定資産投資のための融資及び小規模農民が行う環境関連プログラムのための融資に必要な資金を農業・農業協同組合銀行(BAAC)を通じて供与するものである。これにより、農業生産の効率化、農産品の品質向上・多様化、小規模農家の所得向上・安定、森林面積の増加、自然環境の保護及び環境保全事業の推進を図るとともに、現下の通貨・経済危機の緩和に資することを目的としている。
OECFはBAACに対して、これまで16件・累計約727億円の円借款を供与し、タイの農村開発を支援しているが、本事業においては、融資の対象として、既往のプログラムに加え、森林樹の植林と果樹の栽培等を組み合わせたAgro-forestry、一次的な農作物を完成品又は半完成品に加工する家内制手工業を行なう農業関連事業、サトウキビ生産といったの特別プログラムも含まれる。
今回の借款資金はBAACを通じた小規模農民への長期・低利の融資(サブローン)資金、及びBAACの事業運営・管理体制の強化に向けたコンサルティング・サービス(状況把握及び会計監理に係る助言、環境関連事業の進捗及びモニタリング手法確立への助言)のための費用に充当される。サブローン資金により作物生産プログラム向けで約28,200人、農業関連事業向けで約8,600人、環境関連プログラム向けで約8,200人の農民が融資を受けられる見込みである。
なお、本事業のうち、作物生産プログラム及び農業関連事業については構造調整支援のための緊急特別金利〔金利1.0%/年、償還期間25年〕が、環境関連プログラム及びコンサルティング・サービスについては特別環境案件金利〔金利0.75%/年、償還期間40年〕が、各々適用される。
事業実施者は、農業・農業協同組合銀行(BAAC:Bank for Agriculture and Agricultural Cooperatives、住所:469Nakornsawan Rd., Bangkok 10300, Thailand、Tel: 662-280-0180、Fax:662-280-0442)である。

[back to project list]

(参考) BAACローン一覧
 調印年月事業名借款額(百万円)受益対象農民等
11975.10BAACローン( I )2,000 (完 了)1〜9までの
累計で
93,473件
21977. 3BAACローン( II )6,000 (完 了)
31979. 6BAACローン( III )3,600 (完 了)
41980. 8BAACローン( IV)3,300 (完 了)
51981. 4BAACローン( V )3,200 (完 了)
61983. 9BAACローン( VI )4,120 (完 了)
71986. 3BAACローン( VII )1,013 (完 了)
81987. 9BAACローン( VIII )3,672 (完 了)
91988. 9BAACローン( IX )4,875 (完 了)
101990. 2BAACローン( X )5,000 (完 了)22,950人
111991. 9BAACローン( XI )4,694 (完 了)27,500人
121993. 1地方農村開発信用事業(1)2,837 (完 了)18,400人
131993. 9地方農村開発信用事業(2)3,532 (完 了)16,000人
141995. 9地方農村開発信用事業(3)8,350 (完 了)39,600人
151996. 9地方農村開発信用事業(4)4,228 (完 了)18,000人
161997. 9地方農村開発信用事業(5)12,300(実行中)54,100人
171998. 9地方開発・雇用創出農業信用事業18,360(本件)45,000人
 合 計 91,081 

(注)
1〜9はサブローンの貸付件数累計実績。
10〜17は、審査時の受益対象農民数見込み

(7) 工業部門強化計画
Industrial Sector Strengthening Program

 本事業は、政府系金融機関であるタイ産業金融公社(IFCT)を通じ、タイ工業省の「産業構造調整事業」に沿って、タイ国内の中小民間企業に専門家招聘費用や設備投資資金などを長期・低利で供与するツーステップ・ローン事業である。民間に緩やかな条件の資金を提供することにより、長期的経済発展のための重要な役割を果たすタイ国工業部門の振興を図るとともに、雇用の創出、地域振興等に寄与することを目的としている。これは通貨危機発生の一因がタイ経済の輸出競争力の低下による経常収支赤字構造であり、今後の経済発展を推進するためには、輸出産業の競争力強化が必要であるとの認識に基づくものである。
昨年9月にタイ政府により作成された「産業構造調整マスタープラン」においては、タイ経済がこのような状況を打開し、輸出競争力を回復させるには、商品の差別化・品質向上・多様化を実現するとともに、工業部門全体の構造調整を図ることが必要とされている。しかし通貨・経済危機の状況下、不良債権問題等により金融機関から民間企業への資金供給が十分に行われていないのが現状であることから、本借款による資金供給が必要とされている。
本借款でITFCを通じたサブローンの対象となる企業は以下の通りである。

  1. 対象業種: タイにおける工業部門全業種を対象。
  2. 対象企業規模:固定資産で50百万バーツから400百万バーツの企業を対象。
  3. 融資対象事業:「生産工程改善」「生産設備改善」「生産設備の地方或いは工 業団地への移転」「生産効率や品質を高めるための設備投資等、タイの工業部門強化に資する事業(新規投資を含む)」
  4. 融資対象項目:工業部門振興に伴い必要となる、土地改良費、建物・工場等の建設資金、機械・車両等の購入費、等の設備投資資金及び運転資金並びに専門家招聘費用。但し、土地購入費、税金支払い等は対象外。

 借款資金は民間企業に対するサブローン資金の原資及びコンサルティング・サービス(リボルビング・ファンドの監理、環境配慮指導等)に充当される。
なお、本事業における専門家招聘部分には人材育成特別金利(金利0.75%/年、償還期間40年)が、コンサルティング・サービスには環境特別金利(金利0.75%/年、償還期間40年)が、また民間企業へのその他サブローン部分には構造調整支援のための緊急特別金利(金利1.0%/年、償還期間25年)が各々適用される。
事業実施者は、タイ産業金融公社(IFCT:The Industry Finance Corporation of Thailand、 住所:1770 NewPetchburi Road, Bangkok 10320, Thailand、Tel:662-253-7111、Fax:662-253-7001)である。

[back to project list]