プレスリリース

パキスタン地震から1年

−パキスタンの復興に向けたJICAの支援−

2006年10月03日

2005年10月8日に、パキスタン・カシミール地方で発生したマグニチュード7.6の大地震。死者は7万人以上、負傷者も7万人以上、300万人以上の被災者が発生したと言われている。特にカシミール地方の被害は甚大で、学校、病院などの建物は、全壊から半壊する被害を受けた。

JICAは、震災後の緊急援助から復旧・復興まで一貫して実施してきた。震災からまもなく1年。パキスタンの人々や都市もようやく復興の兆しが見えてきた。

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まもなく完成の仮設手術棟。震災後手術はテントで行われていたが、仮設手術棟の完成で建物の中で行われるようになる。

■ 学校と病院の再建のために・・・北部地震被害施設復旧計画概略設計調査

2006年1月5日に日本政府が表明した追加支援(ノンプロジェクト無償40億円)のため、概略設計調査を開始。本来耐震性が求められる病院や学校であるが、今回の震災ではほとんどの病院や学校の建物が倒壊。その重要性や緊急性を考慮し、保健医療と教育セクターを最優先分野とした。医療施設20施設、小中学校等118校の再建に必要な調査と手続きが行われている。

震災1周年を迎える10月8日までには、バタグラム県中央病院仮設手術棟1棟と男子小学校1校が完成する予定である。当日はパキスタン側よりアジズ首相も出席し、バタグラム県中央病院仮設手術棟の引渡し式を行う予定だ。

■ 災害に強い街づくりのために・・・ムザファラバード市復旧・復興計画調査

カシミール地方における行政、商業の中心都市、ムザファラバード市は、地震の震源地に近いこともあり、壊滅的な被害を受けた。

災害に強い都市づくりを目指して、JICAは、ムザファラバード市復旧・復興計画策定調査(協力期間:2006年1月より2007年3月予定)を実施。2016年を計画目標年とした短・中期的な復旧・復興のマスタープラン(基本計画)策定を支援した。パキスタン関係者と協力して策定されたマスタープランは、震災被害の実態及び今後起こり得る天災の可能性分析に基づいたハザードマップ、土地利用計画、「自助」「共助」「公助」の原則に基づく復旧・復興計画、2016年までに実施されるべきプロジェクト一覧表と特に優先緊急度の高いプロジェクトをプログラム化したアクションプランから構成されている。8月末にはパキスタン地震復旧復興庁(ERRA)の主催で、ドナー関係者への説明会が開催された。

現地ではマスタープランの策定作業と並行して、ムザファラバード市当局・地域住民との連携による地すべり監視・警戒態勢及び警報発令・住民避難体制の構築事業、耐震設計・施工モデルとしてのサティー・バーグ女子高等学校の再建事業、生徒に対する防災教育の普及事業など、人々と街の「防災力」アップに寄与する支援を試行的に実施中だ。

■ 自分の村で暮らせるように・・・青年海外協力隊脊髄損傷患者支援チーム

建物の多くが倒壊した今回の震災では、脊髄に損傷を受けた負傷者も多かった。イスラマバード市の国立身障者総合病院は、国内唯一の障害者リハビリ施設。カシミール地方をはじめとする国内各地からも、脊髄損傷のため手足に障害が残った患者が病院に運びこまれた。

2006年3月、青年海外協力隊(作業療法士3名、看護師2名)からなる脊髄損傷患者支援チーム(チームSCIPS)が国立身障者総合病院に派遣された。震災前から国立身障者総合病院で活動を続けていた青年海外協力隊員2名とともに、脊髄損傷患者のリハビリテーション活動をおこなった。

震災から5ヶ月が経過したこの時期は、脊髄損傷を治療するレベルというよりも、患者の退院後の家庭復帰に向けたリハビリが求められる時期。チームSCIPSは、患者自身が歩行器や車椅子を使ってバザールに買い物に行ったり、料理を作ったりするなど退院後地元の村に帰った後も患者自身が自立した生活が送れるような活動をおこなったほか、レクリエーションを通した楽しくリハビリを行った。

チームSCIPSの活動は今年の7月に終了した。チームSCIPSの活動により、何人かの患者は退院し地元に帰り、自分の生活を送っている。しかし、退院してもその後の治療や、リハビリを受けられなかったりするなど、十分な環境が整っているわけではなく課題も多い。そういう中でも、チームSCIPSのリハビリを受けた患者の方々が、希望を失わず生活していければと切に期待している。

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右側がPPバンドで補強したミニチュアモデル。左側のレンガ積みの住宅のミニチュアモデルは、壁が崩れている。

■ ローコストで耐震性のある住宅の普及・・・ 

パキスタン北部のムザファラバードでは、3月末、ローコストの住宅耐震技術の普及を目的にした、ポリプロピレンのバンド(PPバンド)を使った耐震工法の公開デモンストレーションが実施された。

PPバンドとは、ダンボールなど荷物の梱包に使う合成樹脂のバンドで、これをレンガの壁の内側と外側に網の目状にめぐらせ、壁に貫通させた穴に通した針金で両面を固定させることで、ゆれによってレンガが飛び出さないようにした工法。現地でも入手できる素材を用い、かつ安価で耐震補強ができる。

デモンストレーションでは、パキスタン政府関係者、国際機関、他ドナー、地域住民など約330名が参加。この地域で一般的な住宅である、レンガ積みの住宅のミニチュアモデル(実際の6分の1のサイズ)と、同様の住宅をPPバンド工法によって補強したミニチュアモデルを同じ耐震台に乗せ、震度6強に相当する振動を与える実験を行った。PPバンド工法により補強していないミニチュアは震度が上がるに従い崩れたのに対し、補強したモデルはびくともせず、実験を見守っていたパキスタン関係者や住民から驚きの声があがった。

その後ムザファラバードにおいて実物大のモデルハウスを建設、AJK(Azad Government of state of Jammu & Kasimir)州公共事業局に引渡し、公共事業局のオフィスとして活用されている。今後、JICAは現地で活動中の他ドナーとの連携しながら、住民へ耐震工法の普及に対する協力の可能性を探っていく。