プレスリリース

「命のパスポート」、パレスチナ全域で母子手帳12万冊配布へ

移動制限があっても別の保健所での検診・治療が可能に

2007年11月14日

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パレスチナ母子健康手帳を受け取った難民キャンプの母親たち

2008年1月から、西岸とガザ地区の難民キャンプ含むパレスチナ全域で母子健康手帳(母子手帳)が導入されることになった。

母子手帳は、JICAの技術協力プロジェクト「パレスチナ母子保健に焦点を当てたリプロダクティブヘルス向上プロジェクト」により、パレスチナ保健庁が中心になって2005年9月から作成を開始した。専門家による技術支援や、日本、パレスチナ、インドネシアでの研修を通じて、母子手帳の役割や活用の方法などを習得し、約2年をかけて初めてのアラビア語版母子手帳の作成と改訂を繰り返してきた。

このほど改訂作業が完了し、全国の保健所、病院などで導入されることになった。2008年度分の配布は、パレスチナの年間総出生数をカバーする12万冊を予定している。印刷費は、日本政府がユニセフ(国連児童基金)に拠出した無償資金協力からあてられる。

パレスチナでは、紛争による貧困も重なり、母子の健康に深刻な影響が出ている。新たな分離壁や検問所ができ、病院や保健所に通えなくなる女性も少なくない。

今回、配布される母子手帳の開発には、保健庁の他、国連機関、NGOなども参画。手帳の作成・導入を通じて各機関が独自に提供していた母子保健サービスも統一されたため、女性が母子手帳を携帯すれば、移動制限のために同じ保健所に通えない場合でも、別の保健所で適切な検診、治療を受けることが可能になった。

手帳はイラストが多用され、読みやすい内容になっている。また、母親や家族が母子の危険な兆候を早期に発見できるように母子保健や子育ての手引きも手帳に含められた。導入に先駆けて10月、プロジェクトではガザから5人、西岸全10県から60余人の医師や保健所スタッフを対象に4日間の指導者研修を実施した。

プロジェクトの萩原明子チーフアドバイザー(JICA客員専門員)は、「母子手帳はパレスチナの統一基準として導入される。政治的に分断されたガザと西岸をつなぎ、また難民であっても区別されずに配布される。これは正に命と平和へのパスポート。保健庁が主体となって取り組み、国連・NGO、そして住民の支援、協働体制があったから実現できた。今後は、手帳が定着するよう保健システムの強化にも取り組んでいく。まずは全域配布に協力してくれたすべての人々と喜びを分かち合いたい」と話している。

11月20日(火)、現地では、母子手帳研究の第一人者であり各国で母子保健向上や母子手帳普及に尽力してきた中村安秀・大阪大学教授を招いて記念セミナーを行う。