プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)識字教育強化プロジェクト フェーズ2
(英)Project on Improvement of Literacy Education Management in Afghanistan(LEAF2)

対象国名

アフガニスタン

プロジェクトサイト

全国(パイロット地域:ナンガルハル州、バルフ州)

署名日(実施合意)

2010年2月18日

協力期間

2010年4月26日から2018年1月31日

相手国機関名

(和)教育省 識字局
(英)Ministry of Education, Literacy Department

背景

アフガニスタン国の15歳以上の識字率は34%(男性50%、女性18%、「アフガニスタンMDGレポート2005」)で、世界的にみて低い数値であり、 男女の格差も他国と比べて非常に大きい。また、人口の74%が住む地方部においては、男性の約63%、女性では約90%が読み書きできず、地方格差も大き な問題となっている。更に、識字教育が必要な人口は現在、1,100万人と見積もられているが、学齢期の子供の就学は増えているものの、就学しても貧困や治安等の理由により退学することが多いために、今後も非識字者は増加していくとみられている。

このような背景から、「識字」は国家教育戦略(National Education Strategic Plan:NESP)において優先プログラムの1つとして掲げられており、現在策定中のNESP1389(2010)-1393(2014)では、特に地域間格差を考慮しつつ2014年までに識字率を48%(女性43%、男性54%)にあげることを目標としている。教育省識字局(Literacy Department:LD)は識字行政を担う中心機関であり、直営による識字クラスの実施や監督・調整業務をおこなっているが、同国においては直営以外にもUN機関やNGOによる様々な識字プログラムが実施されている。このような状況下、2007年半ばから、UNESCOの主導により識字教育を推進するための枠組み作り(LIFE:Literacy Initiative for Empowerment)が始まっており、この枠組みに沿って、国家識字プログラムの目標を達成すべく、識字教育に関わる全ての関係者が互いに協力、調整することとなっている。しかしながら、この国家的な問題に対処するにはより多くの識字クラス実施という量的拡大が求められると同時に、識字クラスの質の確保や関係者間の調整を担う識字局の能力強化が不可欠である。識字局はこれまで、直営の識字教室を中心にモニタリング・情報収集をおこなってきたが、他の関係機関が実施する識字教室のモニタリングや情報収集も求められており、識字局の監督機能の役割の再検討が必要になっている。また、識字教育の質を測る上で最も重要な達成度基準に統一的なものがなく、指標自体もあいまいであり、質向上の前提となるそれらの設定も必要とされている。加えて、これまでのモニタリングはその結果が十分関係者に共有されていない、或いは、進捗状況の確認に留まり識字教室の現場における改善には役立っていないといった課題を抱えており、識字教育の質向上のためには、モニタリング結果をタイムリーに関係者に報告すること、及び、モニタリングの結果をふまえて現場の識字教室に資する具体的な技術支援を行っていくことが求められている。

我が国は「ノンフォーマル教育強化プロジェクト」(2004〜2007)や、「識字教育強化プロジェクト(The Project on support for Expansion and Improvement of Literacy Education in Afghanistan:LEAF)」(2006年〜2008年)の実施を通じて、識字局の能力向上及び識字教室の展開を行ってきた。LEAFでは、1)識字教室の計画・モニタリングに関するデータ管理、2)教材管理、3)教育省による識字教室のスーパーバイザー能力強化にかかるテクニカルワーキンググループが結成され、データ収集フォーマットの開発や教材管理のガイドライン作成、スーパーバイザーマニュアルが開発された。また、1万人の非識字者を対象としたNGOへの委託による識字教室の実施も行われ、識字学習の機会の拡大に寄与した。

2008年2月に実施されたLEAFの終了時評価では、「識字局のマネジメント能力の向上により、対象地域における識字教育が量的及び質的に改善される」というプロジェクト目標は達成され、データ収集・管理、教材・教具管理、スーパーバイザー能力向上における識字局の能力向上や、識字教育の量的拡大において、成果が確認された。しかしながら、行政能力の向上と実際の識字教室における教育の質向上達成を、2年半という短いプロジェクト期間で達成するには限界があることや、識字局の組織改編が進行中であったこと等から、制度的・財政的・技術的自立発展性には課題が残り、プロジェクトで実施された活動を効果的に継続するには、より長期的、直接的な支援の必要性が指摘され、「ア」国政府より「識字教育強化プロジェクトフェーズ2」の技術協力要請がなされた。

同要請に基づき、当機構は2009年12月に詳細計画策定調査団を派遣し、2010年2月にR/D署名を行った。

目標

上位目標:

アフガニスタン国における識字教育の運営と質が改善される。

プロジェクト目標:

識字教育の質向上のため、識字行政機関によるモニタリング・技術支援の能力が強化される。

成果

  1. 全ての識字コースを網羅するモニタリング及び技術支援の枠組みが開発される。
  2. 識字コース終了後の学習者の学習達成度を測る方策が開発される。
  3. 報告及び情報共有にかかる方策が開発・実施される。
  4. 技術支援の方策が開発される。

活動

1-1.
識字局においてテクニカルワーキンググループ(TWG)*を結成する。
1-2.
TWGが識字局/PLC/DLCのモニタリング及び技術支援における役割と責任を明確にする。
1-3.
TWGが収集すべきデータを明らかにし、調整する。
1-4.
TWGがモニタリングマニュアルと研修マニュアルを見直し、改訂する。
1-5.
TWGがPLC及び関係者向けにモニタリング及び技術支援に関する全国的なトレーナーズトレーニングをおこなう。**
1-6.
各州のトレーナーがDLCに対してモニタリング及び技術支援に関する研修をおこなう。**
1-7.
識字局が関係者とモニタリングマニュアル及びトレーニングマニュアルを共有し、広める。
2-1.
TWGが識字学習者によって達成されるべき中核となる能力(レベル1 )を明らかにする。
2-2.
TWGが学習達成度評価ツールを開発する。
2-3.
TWGが関係者と学習達成度評価ツールについて協議するワークショップを開催する。
3-1.
PLC/DLCが改訂されたモニタリングマニュアルに沿って全ての識字クラスを網羅するモニタリング結果を識字局に対して報告する。
3-2.
識字局がモニタリング結果を活用した年次状況報告書を作成し、関係者に公表する。
3-3.
パイロット地域のPLCが関係者とモニタリング結果を共有するセミナーを開催する。
4-1.
パイロット地域のPLC/DLCがモニタリング結果に基づく課題改善策を試行する。
4-2.
パイロット地域のPLC/DLCからのフィードバックを踏まえ、モニタリング結果に基づいて識字コース技術支援ツールをTWGが開発する。
4-3.
パイロット地域のDLCがPLCの監督下、識字コース技術支援ツールを使ってファシリテーターを支援する。
4-4.
パイロット地域のPLC/DLCが定期的に関係者と良好事例を共有する会合を開催する。

* TWGは識字局及びJICA専門家から成る。ドナー及びNGOはオブザーバーとして参加。
**これら研修には成果2、4の下で開発された内容を含む。

投入

日本側投入:

  • 専門家派遣:識字政策/援助協調、識字アセスメント、データ管理、教材開発、研修管理、識字教室運営、業務調整
  • 第三国研修/現地国内研修
  • 機材
  • 現地活動費(研修、教材開発、パイロット活動)

相手国側投入:

  • C/Pの配置
    教育省識字局識字プログラム部局、カリキュラム開発部局、計画・予算実施・報告部局、パイロット州識字局(ナンガルハル州、バルフ州)
  • 専門家執務室、光熱費の提供