ヘラート州の農業開発を担う帰国研修員(三重大学 アブドゥル・サブール・ラフマニーさん)

2018年10月3日

2バッチ研修員として2015年に三重大学大学院生物資源学研究科博士前期課程を修了したアブドゥル・サブール・ラフマニーさんは、帰国後に農業灌漑牧畜省に復職し、現在アフガニスタン西部のヘラート州地方局長として働いています。同州にはアフガニスタン有数の肥沃な耕作地帯があり、サブールさんは州内の農業の発展のため、農業プロジェクトの管理、ステークホルダーとの調整、人材育成など幅広い業務を行い、成果を出し続けています。

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ヘラート地方局のオフィスにて

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乾燥地帯の調査

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ヘラート州知事に説明するサブールさん(右)

専門分野の知識やスキルだけではない、日本で得たもの

2012年に来日する前は灌漑の専門家として農業灌漑牧畜省で働いていたサブールさん。高いモチベーションを持って三重大学で灌漑に関する研究をスタートしましたが、すぐに大きな壁にぶつかりました。それは、大学院での日本式の研究スタイルでした。

日本の大学院では自立した研究姿勢が大切とされ、指導教員の成岡市先生からも自ら課題を見つけ解決していくことを求められました。これはサブールさんがアフガニスタンで経験してきた「常に教員から学ぶ」スタイルとは大きく異なったため、当初は困惑したといいます。しかし、サブールさんはこうした自立した姿勢が「今の自分を作ったと言っても過言ではない」と語り、「成岡先生の指導により、専門分野の知識やスキルの習得だけではなく、精神的に成熟し、クリティカル・シンキングを身につけることができたのです」と振り返ります。

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四日市市農業センターにて、研究用の土壌サンプルを採取

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修士論文の発表会

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三重大学修了式にて成岡市教授と

ヘラート州の地方局長として多くの成果を生み出す

三重大学大学院生物資源学研究科博士前期課程を修了したサブールさんは、帰国後、農業灌漑牧畜省や麻薬対策省などの職を経て豊富な経験を積み、2016年から現職に就きました。

農業灌漑牧畜省のヘラート州地方局が管轄する業務は、灌漑・水資源管理、農業技術の普及など多岐にのぼります。そんな中、サブールさんは局長就任後様々な成果を上げてきました。特にヘラート州が特産のサフランについては、栽培地域を拡大して生産量を4トンから8トンへ倍増させ、病害研究や収穫後の品質管理を行う研究所も設置。局内の人材育成の面では、日本で得た水資源管理や灌漑計画に関する知識を同僚に共有してきたほか、部下一人一人のリーダーとしての資質を引き出し、全員で組織を引っ張っていく「インクルーシブ・リーダーシップ」を導入しています。

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灌漑プロジェクトの着工式(前列左から二番目:サブールさん)

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ブドウ試験農場の視察(右:サブールさん)

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「蜂蜜の日」のイベント(左:サブールさん)

こうした成果により現在同局は住民の厚い信頼と支持を受け、農業を営む人々の拠り所となっています。また、農業灌漑牧畜省が行うすべてのプログラムがまずヘラート州で試行され、その後他の地域に拡大を図っていくプロセスを経るようになり、地方局の中でも優等生の地位を築きました。

「次の目標は、博士課程で水分野の政策やガバナンスを学び、その知識をアフガニスタンの政策に活かすことです。私には、この国が水資源を活用し、食糧を十分に自給できる平和な未来が見えるのです」と語るサブールさん。今後も多くの人を巻き込みながら、アフガニスタンの農業の発展に向けて挑戦を続けていきます。

(日本国際協力センター(JICE) 設楽)