プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)カブール首都圏開発計画推進プロジェクト
(英)Project on Promotion of Kabul Metropolitan Area Development

対象国名

アフガニスタン

署名日(実施合意)

2010年3月27日

プロジェクトサイト

カブール市及び同郊外

協力期間

2010年5月11日〜2015年5月10日

相手国機関名

(和)デサブ新都市開発委員会事務局、カブール市役所、都市開発省
(英)Dehsabz City Development Authority, Kabul Municipality, Ministry of Urban Developemnt

背景

1999年に約200万人であったカブール市の人口は既に400万を超えており、本来の人口吸収能力を超えている状況にある。さらに、現在も急激なスピードで人口増加が続いており、この傾向は少なくとも今後十数年は続いていき、2025年には650万にまで達すると予測されている。この人口の急激な増加にともない、カブール市では地下水位の低下、水質・大気・土壌汚染、国内避難民等の違法住民の増加、交通渋滞、衛生環境の悪化等の都市問題が深刻化し、道路や上水道等の社会基盤施設の整備が重要な課題となっている。さらなる人口増加により違法住居のスラム化による治安悪化や都市貧困層の増加、慢性的な水不足と水質汚染、衛生環境の悪化による感染症の蔓延、交通渋滞による環境汚染や地域経済の低迷等の負の影響が懸念されている。

また、カブール市は内陸地で山岳に囲まれた盆地に位置することから、水資源、排水、道路、住居等の観点から都市環境を適切なレベルに維持するためには一定の限界がある。実際、カブール市は水源を地下水に依存しているが、既存人口(400万人)でも持続可能な水利用状況になく、地下水位の低下による浅井戸の枯渇が既に起きている。このため、現在のカブール市の北方に隣接するデサブ・バリカブ地域の居住・業務機能等を整備しカブール首都圏の開発を進めることが、人口増加への対応、水資源を含む都市環境の悪化の防止のために必要とされている。

このような背景から我が国は2008年から2009年にかけて「カブール首都圏開発計画調査」を実施し、カブール首都圏開発のマスタープラン(以下「MP」)を策定した。そして、この「MP」を踏まえ、カブール首都圏開発の次のような意義が「ア」国政府内で確認されている。

(1)アフガニスタンの復興と開発の成功モデルを目に見える形で示す。
(2)雇用機会を創出する。
(3)アフガニスタンの持続的な経済開発を牽引する。
(4)アフガニスタン人の生計が向上するとともにアフガニスタン政府の税収が増加する。
(5)国家統合の象徴として機能する。

カブール市とDCDAが「MP」に基づく様々な事業の実施主体となるが、カブール市ではドナーの支援による復興事業が行われてきたものの事業主体の経験がほとんどない、都市再生事業の核の一つである既存市街地の改善事業を実施した経験がないなどの問題を抱えている。DCDAは、設立後2年と新しい組織であり、インフラ整備の専門家等を職員としてリクルートしているものの、組織として実際の事業を実施した経験がない。このため、「MP」に基づき事業を実施するためには、この事業実施主体の能力向上を図ることが求められている。また、「MP」でも実行計画を作成しているが、これはカブール首都圏の復興を実現するために「必要な事業」と「するべきタイミング」を計画したものである。「MP」のビジョンの実現のためには、「MP」の実行計画を指針とする一方で、資金リソースや民間の投資動向など、より実際的な事業環境に基づき「実施できる実行計画」の作成が必要とされている。

目標

上位目標

カブール首都圏マスタープランを基にカブール首都圏の都市開発事業の実施が促進される。

プロジェクト目標

カブール首都圏開発マスタープランに基づいた都市開発を実施する能力が構築される。

成果

(1)新都市開発にかかる実施体制が強化される。
(2)新都市におけるインフラ開発事業を実施する能力が向上する。
(3)カブール市の都市開発計画にかかる実施体制が強化される。
(4)カブール市における都市開発プロジェクトの実施・運営能力が向上する。
(5)カブール首都圏開発に係る関係機関間で必要な調整が適切に行われる。

活動

1.新都市開発にかかる実施体制が強化される。
1-1 新都市開発に関する詳細実行計画(2010-2014)および各年の年間実施計画を策定する。
1-2 DCDAの組織体制を強化する。
1-2-1 既存のDCDA組織・職員の配置状況を分析する。
1-2-2 DCDAのビジネスモデルの当初案を作成する。
1-2-3 将来のDCDA機能を見極め、必要な人材を配置する。
1-2-4 本プロジェクト終了後の移行計画を準備する。
1-2-5 DCDAの法的ステータスを明確化する。

2.新都市におけるインフラ開発事業を実施する能力が向上する。
2-1 モデル地区のビジネスプランを作成する。
2-2 デサブ南部地域の骨格計画を作成する。
2-3 デサブ南部地域の土地準備計画を作成する。
2-4 新都市開発のための開発ガイドラインを作成する。
2-5 民間開発業者に関する規制誘導を促進する。
2-5-1 入札および入札評価を行う。
2-5-2 ビジネスプランの改定を行う。
2-5-3 上記2-4に基づき、詳細な開発ガイドラインを策定する。
2-5-4 社会住宅実施計画を策定する。
2-5-5 水と緑のネットワーク計画を策定する。
2-6 モデル地区におけるインフラ開発事業を実施する。
2-7 都市開発に必要な能力(ゾーニング、土地収用、区画整理、社会住宅、PPP、不動産マーケティング、財務計画、空間計画等)に関する研修を実施する。
2-8 新開発地域の地形図を作成する。
2-9 都市と農村との調和ある開発指針を策定する。
2-10 デサブ地域における農村開発のパイロット事業を実施する。

3.カブール市の都市開発計画が改定される。
3-1 カブール市の都市開発に関し現状報告書を作成する。
3-2 カブール首都圏MPに基づきカブール市MPを改訂し、承認を受ける。
3-3 MPを広く周知するための勉強会/説明会を開催する。
3-4 都市開発に関する恒久的な部局の設置を促進する。

4.カブール市における都市開発プロジェクトの実施・運営能力が向上する。
4-1 カブール市MPの実現のため、ゾーニング、区間整理等都市開発に必要な研修をカブール市職員に実施する。
4-2 都市交通改善のための道路整備事業を実施する。
4-2-1 都市道路整備に関する改良戦略を策定する。
4-2-2 道路計画・設計・施工・保守を行いながらOJTを実施する。
4-3 KSP実施に伴うOJTを実施する(KSP実施監理を担うための訓練を行う)。
4-4 居住環境改善のための事業およびOJTを実施する。

5. カブール首都圏開発に係る関係機関間で必要な調整が適切に行われる。
5-1 カブール首都圏開発の実施に係る組織および責任体制を明確化する。
5-2 カブール首都圏開発に係る関係機関間の調整メカニズムを強化する。

投入

日本側投入

(1)専門家派遣
キャパシティ・ディベロップメント・サブプロジェクト、道路整備サブプロジェクト、地下水開発サブプロジェクト等のサブプロジェクトごとに専門家チームを派遣。主なサブプロジェクトの専門家の指導科目は次のとおり。
a)キャパシティ・ディベロップメントサブプロジェクト
総括/都市・地域開発、都市計画、財務分析、民間投資促進、都市開発マネージメント、調達制度、土地利用計画、都市計画2、参加型開発、都市貧困、組織分析/研修制度、法制度等
b)道路整備サブプロジェクト
道路計画、道路設計、施工計画、積算、施工監理等
c)地下水開発・給水施設整備サブプロジェクト
給水事業計画、水理地質、給水施設設計、積算/施工計画等
(その他デサブ地区農村振興サブ・プロジェクト等を実施予定)

(2)機材供与
プロジェクト事務所用事務機器他

(3)本邦研修
都市開発省、カブール市役所、DCDAのカウンターパートを対象として都市計画、開発、実施手法等の本邦研修及び第三国研修を実施。

(4)社会基盤整備に係るパイロットプロジェクト
a)社会基盤整備事業の実施能力の向上を図るために、パイロットプロジェクトとしてカブール市の道路整備、既存市街地の都市再生事業等を実施。
b)カブール首都圏開発のあるべき姿を具体的に示すために、パイロットプロジェクトとして新都市開発地区の初期開発地区の基盤施設の整備を実施。

相手国側投入

カウンターパートの配置
パイロットプロジェクト実施用地の確保等