日本・カリブ交流年水産セミナー

2015年2月10日

日本とカリコムは2014年を「日・カリブ交流年」と位置づけ、安倍総理がトリニダード・トバゴを訪問し、7月28日に初めての日・カリコム首脳会談を開催しました。また、11月15日には第4回目の日・カリコム外相会合を東京で開催し、共同声明を発表しました。同声明で確認された協力分野は、防災、環境・気候変動対策、エネルギー、廃棄物処理の順番で、水産への言及は最後でしたが、東カリブ島嶼国に対するODAでは、水産分野の歴史が最も古く、その予算規模も他分野より大きいことはあまり知られていません。

協力の開始は1990年頃に遡り、現場での専門家やボランティアによる指導、日本での研修、水産インフラ施設の建設により、魚の獲り方から鮮度保持と加工方法、流通システムの改善、生鮮マグロの対米輸出、冷凍加工による需給調整と消費者の利便性向上、衛生的な水産市場による水産物消費の促進といった顕著かつ具体的な成果を達成しています。さらに、現在は水産資源の持続的利用といったグロバールイシューに対応するため、漁民と行政の共同による漁業管理(コマネジメント)を推進する本プロジェクト(CARIFICO)を実施中です。

かかる状況の下、JICAとカリブ地域漁業機構(CRFM)は、これまでの水産協力の実績と成果を振り返り、今後の方向性についての意見交換を行うことを目的としたカリコム域内セミナーを、12月4日にトリニダード・トバゴで実施しました。また、これと並行してカリコム全体をより綿密に網羅し、加盟国の主体的な参加を促進するための国別セミナーもベリーズ、スリナム、ジャマイカ、セントキッツ、ドミニカ、セントビンセントの6ヶ国で実施しました。

カリコム域内セミナーはトリニダードにて、カリコム加盟ODA対象11ヶ国と漁業管理に携わる主要な3つの地域機関(大学、援助機関等)が集まり、トリニダード・トバゴ農林水産大臣と手塚大使の開会のスピーチで幕を開けるという、日カリ交流年事業としてふさわしい華やかな催しとなりました。

セミナーでは、CRFMからは地域の全体像、国別セミナーを実施した6ヶ国からは国別の状況、そして、日本側からは大使館による水産無償資金協力とJICAドミニカ共和国事務所による技術協力事業についてのプレゼンテーションがあり、これまでの協力の成果について、それぞれの視点からの報告と議論が行われました。また、CARIFICOからは、カリブにおける日本の水産協力の特徴として、以下の5点を提示し、これまでの四半世紀に亘る協力の成果等について議論を行いました。

・持続性と収益性の両立
・長期的視野に基づく段階的アプローチ
・多様な活動による相乗効果
・多様な援助スキームによる相互補完
・現場主義

今回のセミナーで印象に残ったのは、カリブ側が過去の日本の協力について実によく記憶しており、そしてそれはその時の日本人専門家に対する記憶と深く結びついているという事実です。国際協力における人と人のつながり(ODA60周年記念セミナーの岸田外相のスピーチでも言及)の重要性を再認識するとともに、かかる記憶が逸散、消失する前に、記念本(水産局長室の書棚や資料室に陳列されることを想定)を作成し、かかる記憶を末永く発信、共有したいと考えています。

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