コミュニティ防災体制の強化を目的とした本邦研修に中米6か国及び中米防災センターからの研修員が参加

2017年7月20日

「自助・共助の大切さ、そしてそれらを支える公助の役割を学んだ。」これは、2017年7月3日から14日にかけてBOSAIプロジェクトフェーズ2で実施した本邦研修の参加者から多く聞かれたコメントです。

今回の研修では、プロジェクト成果2に焦点をあて「コミュニティ防災を推進する持続可能な体制整備」をテーマとして東京都、静岡県、愛知県、岡崎市、焼津市等の都道府県、市町村をし日本における地域防災活動の現状や取り組みを学びました。参加者は国の防災機関、市長および地方自治体防災担当職員、中米防災センター職員等、プロジェクト活動に関わっている実務者14名が参加しました。

まず、日本の防災行政制度や体制と防災への取組みの歴史などの概観を学び、都県や市町等の行政による取組み、防災啓発・体験施設の訪問や自主防災組織で防災に取り組む方々から講義を受けました。

東京都では、東京消防庁本所防災館において東京都の防災意識啓発への取組みを、講義や同館に設置されている様々な体験装置を通じて、その重要性を学びました。練馬区防災学習センターでは、練馬区の防災への取組みと、「ねりま防災カレッジ事業」を通じた防災リーダー育成などコミュニティ防災支援体制について学んだうえで、学習センター内の展示内容の見学、阪神・淡路大震災を経験した方の話を直接伺い、同学習センターを通じて住民の自助・共助を支援する仕組みを学びました。研修員からは、「中米では被災者の方々の貴重な体験を語り継いでいく仕組みがまだない。今回は、直接話を聞くことができ、その重要性と意義が理解できた。中米でもこのような取り組みを始めていきたい。」といったコメントが聞かれました。

静岡県では、静岡県庁を訪問し、静岡県の防災への取組みから自主防災組織の支援や民間連携、洪水を想定したタイムライン手法の静岡県での適用について具体的な事例について講義をうけました。地震や津波防災について学習ができる静岡県地震防災センターも訪問し、防災教育・啓発施設とその取組みを見る事ができました。

また、県内の吉田町、焼津市を訪問しハードとソフト両面からの津波対策とコミュニティ防災活動の支援について学んでいます。吉田町の歩道橋型津波避難施設や焼津市の津波避難施設は多くの研修員が高い関心をもって見学していました。質疑応答の中では、「ハード対策は非常に素晴らしい取組みをしているのが理解できました。ソフト対策として、リスクの高い地域に人口がさらに増加しない為の対策などはどうしているのですか。」といった防災の核心をつくような質問も研修員からだされ、研修員の間でも意見交換がなされるなど研修員は熱心に各国の防災について、互いに考えを深めあっている場面もありました。こういった議論の深まりも、今回の研修でそれまでに受けた講義や見学したものが反映されており、大きな研修の成果です。この質問をした研修員は、自国では災害リスクの観点からの土地利用計画や規制といったテーマに従事しており、帰国後の研修成果の反映が期待されます。

2週間という短い期間の研修ですが、第2週目は研修の拠点を愛知県に移し、名古屋市港防災センター、愛知県、名古屋市、岡崎市、南知多郡美浜町内の美浜緑苑地域の自主防災組織、日本福祉大学を訪問し、各自治体の防災への取組みとコミュニティ防災活動支援の仕組みおよび実践例を、それぞれ相互に関連する様々なアプローチから学びました。

愛知県では、「みずから守るプログラム」、名古屋市ではコミュニティ防災支援事業を通じてコミュニティの自助・共助の支援の仕組みを知り、岡崎市、名古屋市星崎地区でその実践例と好事例を学びました。また、一連の講義を通じて、日本における県、市町、コミュニティの防災を持続的に進める仕組みと自治体間の連携体制、地域の大学、自主防災組織、ボランティアおよび民間企業の連携体制とそれぞれの組織の方々の防災活動への熱意によるボトムアップ型のコミュニティ防災活動の活性化や大学生ボランティアの防災活動の持つインパクトや防災意識の世代間継承など多岐にわたり防災へのソフト面の取組みを把握することができました。

冒頭に挙げたコメントの他にも、「子供の頃からの防災教育の重要性」、「ソフトとハード対策の重要性」、「市役所の持つ防災への役割の重要性」など言及され、こういったテーマを持続可能な体制としてどうやって強化促進していくのか、それぞれの研修員が自国の現状を鑑みながら帰国後の研修成果の適用についてしっかりと考えている様子が最終日の研修評価会での発言などにみられました。

開発が急速に進む中米の国々で、ハード対策に加えて自助・共助の強化や教育等を通じたソフト対策をしっかりと国の仕組みとしながら、災害による被害を抑えつつそれぞれの国の経済が発展していく事に、日本の防災の知見を活かしたBOSAIプロジェクトフェーズ2は貢献しています。

今回の研修でご協力頂いた行政機関・大学・自主防災組織関係者の皆様には、この紙面をお借りして感謝を申し上げます。

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静岡県焼津市にて津波避難施設を見学する研修員

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愛知県南知多郡美浜町内の美浜緑苑自主防災組織の倉庫を見学する研修員

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訪問先の岡崎市では副市長から歓迎の辞を頂き、研修参加者のEl palmar市市長(グアテマラ)からは感謝の記念品が贈答された。

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岡崎市内に設置された内水氾濫の早期警報装置について説明をうける研修員。ここでは住民自らが早期の避難を実現するために警戒水位を設定しており、研修員は熱心に説明を聞いていた。

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本所防災館で説明を受ける研修員

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静岡県庁において講義を受ける研修員。静岡県では県の防災への取組みや防災予算措置、コミュニティ防災活動支援、タイムライン策定など多岐にわたる講義を頂き、研修員の質疑応答が活発に行われた。