チリキ県2市で、自治体職員向けの地域防災能力向上ワークショップを開催しました。

2017年8月7日

長期専門家 川東英治

もしあなたの街で災害が発生したら、或いは普段から防災について何か知りたいと思ったら、どこの機関を頼りにするでしょうか?状況にもよりますが、多くの方は市町村などの自治体をまず思い浮かべるのではないでしょうか。
日本では各自治体でハザードマップなどが作られ地域の災害リスクが共有され、防災課・防災担当職員が配置されていることが普通であり、「地域の防災について知りたければ、まずは自治体へ」ということが当たり前ですが、ここパナマではごく一部の自治体にしか防災課が設置されていません。また防災課のある自治体でも、その活動は救難救助など災害が発生した後の対応に偏りがちで、予防・防災の観点が欠けています。「対象自治体で防災課・防災担当職員を配置し、命を守ることを重視した予防防災体制を構築・強化していく」こと、これがパナマ国における中米広域防災能力向上プロジェクトの大きな目標です。そのための取り組みがチリキ県のバル市及びブガバ市で開催しました。
バル市ではまだ防災課が設置されていないため、持続的な防災・市民安全体制を構築・強化していくにはどうすべきかを、市職員並びに防災関係機関とともに検討しました。そして日本の防災経験を通して、防災とは起こった災害に対処するということだけではなく、普段から災害に備えること、いざという時には率先して身を守るための行動(避難など)を取れるようにするという事前の備えと予防の観点による取組みの重要性が関係者間で共有されました。こうした日本の経験・知見が評価され、次は政治的な意思決定、事業への予算配布をする市議などのアクターも交えた議論が必要であるという点で意見が一致したことから、今後市議に対する防災啓発セミナーも実施していく予定です。
ブガバ市は、パナマ国では数少ない防災課設置自治体です。同市は山間部に肥沃な土地を有し、パナマ国有数の農業生産地として知られていますが、一方で山間地ゆえに土砂災害も多く、2014年9月に発生した土石流では9名の方が命を落とされました。土砂災害は局所性が高い災害のため、行政による気象観測・警報発令では網羅し切れないことがあります。そこでここでも日本の経験を基に、土砂災害の予兆現象等地域に起こる変化を住民自らが発見し、地域の避難に活かしていく取り組みを行います。そのための準備会合を行い、9月に対象地区における第1回のワークショップを実施することになりました。また、ブガバ市には他にも土砂災害リスクのある地域が多数存在することから、この取り組みには地元のボランティア団体なども興味を示しており、日本の自主防災組織や水防団などの地域防災の経験と知見が今後多くのコミュニティで共有・展開されていくことも期待できそうです。
行政と住民が連携した、自助・共助・公助による防災能力の向上に引き続き取り組んで行きます。

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防災機関のSINAPROC職員がワークショップを主導しています。

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日本人専門家による日本の防災経験の共有も行われました。

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市の重役・SINAPROC職員と今後の活動について打合せをしました。

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地域の災害を知るための現地踏査も行いました。

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ブガバ市でも、住民ワークショップ実施のための準備会合が行われました。