「1992年ニカラグア津波25周年記念イベント」を開催しました。

2017年9月3日

1992年9月1日午後8時頃、ニカラグア近海の地震を起因とした津波が発生し、170名以上もの命が奪われました。この教訓を活かすべく、これを契機としてニカラグアでは様々な津波対策を実施してきました。一方で、「Tsunami」が世界の公用語となっているように、日本は津波の被災経験並びに津波防災に関する経験を最も多く有しています。こうした日本の知見・経験を津波被災国であるニカラグアに技術移転するために、JICAでは津波防災に関連する2つのプロジェクトを実施中です。

ひとつは中米津波警報センター能力強化プロジェクト(CATACプロジェクト)で、ニカラグアの気象観測機関であるニカラグア国土調査院(INETER)の津波観測能力を強化し、ニカラグアのみならず中米地域の津波観測拠点として整備を進めています。もう一つは中米広域防災能力プロジェクト(BOSAIプロジェクト・フェーズ2)であり、ニカラグア国家災害管理・防災システム局(CD-SINAPRED)との協働のもと、主にコミュニティへの防災活動の普及啓発、並びにこうした活動の持続的な実施体制の整備を進めています。今回は、これら2つのプロジェクト及びニカラグア津波防災に関連する様々な関係機関の協力を得て、ニカラグア津波25周年記念イベントが開催されました。

同イベントは複数の活動から構成されており、8月31日及び9月1日は、INETERの主導により25周年記念セミナーが開催されました。その後、週末には1992年の津波被災地の一つであるサンフアンデルスール市において、一般住民向けにニカラグア津波25周年記念イベントを開催しました。ここでは日本の防災経験を学んだニカラグアの帰国研修員を中心に、BOSAIプロジェクト・フェーズ2専門家や青年海外協力隊の防災隊員とも協力して、子供達が遊びながら防災を学ぶカエルキャラバンという日本の防災イベントを実施し、そこにニカラグアの津波経験・教訓などをまとめた資料を説明・配付するなどして、次世代への津波経験の伝承が行われました。

津波に限らず、被災経験の伝承の重要性については日本でも叫ばれていますが、ここには2つの大きな課題があります。一つ目は、被災地にはいつかまた必ず津波が来るという現実です。多くの津波は海溝型の地震によって発生しますが、この海溝型の地震は周期的に発生するため、いつかまた津波が被災地を襲うことは間違いありません。次の津波に向けて、時計の針は着々と歩を進めているのです。そのため、被災地は次の津波に向けた備えをしなければなりません。しかしながら被災経験というのは、特に住民にとっては苦い経験です。もし、こうした苦い経験を忘却することで日々の心の平穏が保たれるのであれば、忘却は人としてあるべき当然の所作です。そして、この人としての当然の所作故に起こることが、風化という二つ目の課題です。特に津波は100年という人の寿命を超える周期で発生しうるため、世代間の伝承が欠かせません。そのためには、この風化が起こるという現実を受け止めつつ、津波伝承を行うメカニズムを構築する必要があるのです。そして、一般住民向けの津波記念イベントは、こうした津波伝承を行うメカニズムとしての機能を有することが期待されます。BOSAIプロジェクト・フェーズ2の実施期間は残り3年を切りましたが、本イベントが10年100年と続く取り組みとなるように、引き続きプロジェクトとしてサポートをして行く予定です。

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CD-SINAPRED次長による挨拶

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サンフアンデルスール市助役からの挨拶

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帰国研修員によるカエルキャラバンに関する説明

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紙食器作り(折り紙)の様子

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応急手当ワークショップの様子

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協力隊員も瓦礫の下敷きになった人の救出方法について指導

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受付の様子

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多数のメディアからの取材(写真は植野企画調査員)