土砂災害被害のあったパナマ国ラス・ヌベス地区で警戒・避難体制構築ワークショップを開催しました

2017年9月24日

2014年9月にパナマ国ラス・ヌベス地区で発生した土石流は人的被害も出す大きな災害でした。それから約3年の年月が経ち、2017年9月23日と24日の2日間、同地区において土砂災害からの警戒・避難体制の構築を目的としたワークショップを開催しました。

日本では1995年の阪神淡路大震災や、2011年の東日本大震災で地震や津波がクローズアップされていますが、土砂災害は1995年以前まで最も人的被害を出していた災害だと言われています。数十年から100年周期で起こる地震や津波を大規模だが低頻発の災害とするならば、土砂災害は毎年どこかで発生し、人的被害が起きやすいことから、高頻度なうえに甚大な被害をもたらす災害と言えます。このように、山間地域であればいつどこで発生してもおかしくないのが土砂災害ですので、山間地域に住まう住民全てが常日頃から災害に備えておくことが重要になってきます。

さて、土砂災害に備えることは、他の災害に備えることとどう違うのでしょうか?土砂災害は、雨の降り方・雨量・降雨時間・地質・斜面の状況等様々な要因に左右されるため、正確な予測が難しい災害ですが、一方でその発生前には多くの予兆現象が確認されることが知られています。日本ではこのような予兆現象を活用した警戒避難体制作りが進められていることから、ラス・ヌベス地区での活用を試みました。

ワークショップ1日目は日本知見を共有しつつ、その地に長く住んでいる人こそ、土砂災害やその予兆現象に関わる多くの経験を有していることを指摘し、それらを個人の知恵として留めておくのではなく、地域の知恵として取りまとめ、後世も含めた避難体制に活かしていくことを提案しました。本来過去の災害を振り返ることは、悲しい思い出を蒸し返すことにもなり敬遠されがちですが、それが地域の、そして将来世代の安全に関わる重要な伝承であると理解した住民からは様々な知見が出てきました。住民の知恵を地図にまとめていったところ、「知恵の出し手は多い方がよい」ということで、2日目は更なる参加者を募って地域の知恵の取りまとめが行われました。次回(2017年10月)ラス・ヌベス地区での指導においてはこれらの取りまとめた知恵を基に、地域の避難体制について考えるワークショップを開催予定です。

活動はこれだけでは終わりません。その後、ラス・ヌベス地区を管轄するブガバ市の市長を訪問し、活動内容と今後の展開について報告を行いました。現在作成中のラス・ヌベス地区避難計画(案)を紹介したところ、印刷代を市で負担してでも早期に住民に配りたいとの好評いただきましたが、まだ作成途中なので10月まで待って頂くようお願いしました。また、土砂災害の危険はラス・ヌベス地区に限りません。そこで今後、その他の地区に効果的に普及していく方策についても意見交換を行い、今後1年で山間地域のセロ・プンタ行政区・ボルカン行政区の複数の地区にて同様の活動を実施することについて合意しました。また、「年に1回の頻度で住民と防災を考える日を作ること」(継続)についても確認しました。

土砂災害はいつどこで発生するか分かりません。しかしブガバ市では、これから多くの地区で避難計画・体制を構築・推進していく予定です。こうした知見が後世まで伝えられ、万が一土砂災害が発生したとしても犠牲者ゼロを達成できるように、プロジェクトはパナマ市民防衛国家システム(SINAPROC)及びブガバ市とともに同地域の安全を高めて行く活動を引き続き支援していく予定です。

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日本人専門家による趣旨説明

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参加者は、日本人専門家の説明に真剣に耳を傾けています。

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住民の知見を地図に落とし込んでいます。

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住民も真剣に議論をして、知見の取りまとめを行っています。

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参加者全員による記念撮影

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ブガバ市長との面談・報告での議論は多岐に渡りました。