パナマ国ラス・ヌベス地区で土砂災害住民避難計画が作成されました

2017年10月22日

開催日:2017年10月21、22日

2017年9月に引き続き、10月21、22日の2日間、ラス・ヌベス地区でワークショップを開催しました(これまでの経緯は、『土砂災害被害のあったパナマ国ラス・ヌベス地区で警戒・避難体制構築ワークショップを開催しました』を参照) 。

前回は土砂災害に関する住民個人個人の経験を地図に描き出し、それを地域の知恵として取りまとめましたが、今回はこうした知恵を活用した土砂災害住民避難計画づくりを行いました。

土砂災害を対象とした避難計画を作成する上でまず大事なことは、地震からの避難との違いを理解することです。日本人専門家から「地震の時、皆さんはいつ避難しますか?明日、地震が起こりそうだから今から避難する人はいますか?」と問い掛けられます。これにより、参加者の住民は「地震は、事が起こってから避難する」という想定した返答であることを確認します。次に「土砂災害はどうでしょう?事が起こってからでもよいのでしょうか?」という専門家からの問い掛けに「事が起こる前に避難!」「土砂災害が起こった後では、生きているか分からない」など、次々と答えが返ってきます。日本でもそうですが、避難というと地震の後の避難所生活や、洪水で浸水している中での避難(救助)などが映像で流れやすいため、災害が起こる前の事前避難という意識が希薄になりがちです。そのため、まずは土砂災害からの避難の原則を確認しました。

次に議論したのは、どうやって事前避難を実現するかです。事前避難の難しさは、何をきっかけに逃げるかという避難基準・タイミングを決める難しさにあります。例えば、雨が降り始めてすぐに逃げればより安全ですが、これだと何も起こらないのに毎日のように避難することになり、やがて避難することに疲れてしまうでしょう。一方で、何かが起こるギリギリまで待つと、逃げ遅れて命を失う可能性があります。そこで地域で取りまとめた知恵の中から、どれが避難基準として適切かを議論しました。すると、大雨の際にはよく起こる現象と、大雨でも滅多に起こらないが2014年やそれ以前の災害が起こった際に確認された現象があることが分かりました。また、住民は川の水位からその地域で起こることを判断していることも分かりました。そこで、いくつかの特異な現象と水位基準を避難基準として採用しました。

さて、次に大事な点はどこに逃げるかです。避難の目的は命を守ることであり、避難場所に行くことではありません。日本でも避難の途上で亡くなる方が多いという実態から、状況に応じた避難場所を検討しておく必要があります。ただ、この点は住民がよく熟知しており、隣近所の高台や家などが次々と洗い出されました。

これらを避難計画に反映させ、最後の議論はこの計画を全住民にどう周知させ、継続した防災活動として行くかです。避難計画については、雨期が始まる来年5月頃の配布がいいだろうということになりました。また、避難訓練をして計画通りに避難ができるか、情報伝達体制はどうするのか、毎年の避難計画の見直しなどの意見が共有されました。

これまでのワークショップを通じてラス・ヌベス地区の避難計画が作成されましたが、それは防災活動を始める、或いは命を守るための第一歩でしかありません。同地区での取り組みは続いていくため、今後もレポートしていきたいと思います。

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プロジェクトマネージャーからの挨拶

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日本人専門家からの説明

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参加者の様子

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現地で住民から当時の様子を伺う

【画像】ラス・ヌベス地区・土砂災害住民避難計画(左:裏表紙、右:表紙)

【画像】ラス・ヌベス地区・土砂災害住民避難計画(地域の知恵としての土砂災害地図)