世界津波の日に合わせて、津波防災講習会を開催しました

2017年11月17日

「世界津波の日」に関連し、11月17日にBOSAIプロジェクト・フェーズ2にて国連国際防災戦略(UNISDR)及びニカラグア国家防災機関であるCD-SINAPREDと協力して、津波防災講習会を開催しました。

「世界津波の日」は、日本をはじめ142か国が国連に共同提案したもので、11月5日をその日とし、津波災害に備え、すべての国連加盟国・組織・個人の津波意識向上並びに津波防災を推進するために制定されました。ちなみに、11月5日は1854年の安政南海地震が発生した日であり、村人が海岸付近の住民に津波の襲来を知らせるために、自ら収穫した稲むらに火をつけることで避難を促進し、人々の命を救った「稲むらの火」の逸話に由来しています。

ニカラグアでは1992年の津波で被害を受けた過去があり、こうした世界的な津波防災を推進する取り組みとして今回の防災講習会が実施されました。CD-SINAPRED長官の挨拶で始まった講習会は、まず、津波観測機関であるニカラグア国土調査院(INETER)より、1992年ニカラグア津波の状況が発表されました。続いて当プロジェクト専門家による津波のメカニズム及び東日本大震災の教訓が参加者に共有されました。

ニカラグア津波の教訓が「住民に津波の知識がなかったこと」「津波の情報を知らせる体制がなかったこと」だとすると、東日本大震災の教訓は「津波について、知識としては知っていたのに逃げなかった・逃げられなかったこと」「情報や想定に捕らわれて適切な行動ができなかったこと」が挙げられます。1992年以降、ニカラグアでは少しずつ津波防災の取り組みが進められており、現在では津波に関する住民の知識と情報伝達体制については大きく進展したと言えます。だからこそ、その先にある次の教訓として日本と同じことを繰り返さないように、日本の津波の知見を共有することが大事になってきます。

昼食を挟んで、午後は日本の津波防災の成功事例としての「釜石の奇跡」及び次の津波災害を犠牲者ゼロにするための災害文化の醸成について、引き続き当プロジェクト専門家より発表が行われました。ごく稀にしか被害が出ない津波は、それまでに幾度となく警報が出ても、その多くは空振りに終わります。そして、「警報が出ても大人が段々と逃げなくなり、それが常態化し、その行動を見て育った子供たちも避難しない」という負の連鎖が生まれます。一方で、大人が常に避難する行動を見せれば、その背中を見た子供たちも避難することを当然の行動様式として身に付けます。このどちらも、先人と現役世代が作り上げた行動様式として常態化した文化なのです。

最後に専門家から参加者に向けて、彼らの息子など次の世代に対してどちらの文化を残していきたいかを尋ねたところ、大人たちが避難行動を子供たちに示し、地域全員が避難できる文化を創りたいとの回答を全員から得ました。しかし文化はすぐに形成されるものではありませんし、1人だけが行動できるようになっても、それは文化とは言えません。地域や国家が一丸となって継続していった結果として、それが地域の、或いは国家としての行動様式として各個人に染みついたものが文化なのです。

実は、ニカラグアでは国家レベルでの避難訓練を年4回実施しており、約700万人の全人口のうち150万人以上が参加する大々的な国家行事となっています。そこで専門家からは「ニカラグアには国家避難訓練という文化形成の仕組みがあります。これにみんなが参加することが災害文化形成の一番の近道なのです。これを何十年にも渡って継続させれば大人も子供も避難することが当然となる災害文化をニカラグアで形成できるでしょう。」という言葉で津波防災講習会が締め括られました。

津波が襲来しないことが一番ですが、もし襲来したとしてもニカラグアで1人の犠牲者も出なかったという結果になるように、ニカラグアでの災害文化形成の取り組みに当プロジェクトも引き続き協力していきます。

【画像】

CD-SINAPRED長官(中央)の挨拶

【画像】

INETERによる発表

【画像】

専門家による発表

【画像】

参加者の様子

【画像】

参加者からの質問

【画像】

SINAPRED広報からの取材(写真は植野企画調査員)