ニカラグア防災機構が、ハリケーン・ミッチ20周年イベント並びにBOSAI2広域JCCに参加しました

2018年10月31日

2018年10月29日から31日の3日間、20年前のハリケーン災害の記憶を風化させないために、様々な防災イベントがホンジュラス国の首都テグシガルパ市にて開催され、ニカラグアBOSAI2プロジェクトもニカラグア防災機構(SINAPRED)とともに参加しました。

1998年10月、ホンジュラスを中心に中米諸国を襲ったハリケーン・ミッチは、同地域に多大なる被害をもたらしました。一方で、同災害を契機として中米地域の防災対策が進展していったことも事実です。この20年の間に何が成し遂げられ、何がまだ足りていないのか、そしてこの経験を風化させないために将来に向けて何が必要なのかが、中米地域の防災機関やドナーなど様々なアクターが参加しながら発表並びに議論が行われました。

29日午後、BOSAI2プロジェクト関係者による広域合同調整委員会(JCC)が開催されました。ここではこの1年間の活動や成果を振り返るとともに、ブース展示で各国成果の共有が図られました。例えばニカラグアでは津波防災に力を入れており、津波防災マップ・津波啓発ポスター・津波防災教育教材・津波防災啓発ビデオ・無線機の設置等これまでプロジェクト実施した活動について紹介を行いました。また、これらの成果が一目で分かるバナーを作成し、当日はプロジェクトマネジャーがこのバナーを基に説明を行いました。

このようにニカラグアでは津波にフォーカスを当てる一方で、ホンジュラスでは土砂災害、グアテマラでは火山と、中米各国それぞれで力点が異なり、BOSAI2プロジェクトが日本-中米間の学びの場であるとともに、中米同士による学びの場であることが確認されました。SINAPRED長官やプロジェクトマネジャーからも、制度・文化的背景が類似する中米域内での交流は、自国の防災を推進する上で大きな学びを得ることができるという意見が聞かれ、こうした中米域内の知見の共有と普及展開の必要性についてはJCCでも言及され、今後BOSAI2プロジェクトでも支援していくことが確認されました。

30日は午前から地元テレビ局の人気番組にて、中米各国防災機関のトップが参加した討論会が全国放映されました。会場は、JICA無償資金協力「首都圏地滑り防止計画」によって建設された地滑り対策工があるベリンチェの丘であったため、同番組中も司会者などから日本の協力に関する言及がありました。同討論会においてSINAPRED長官からは、ハリケーン・ミッチに起因したニカラグア・カシータス火山の土砂災害(死者数千人)を念頭に、過去の災害を忘れないことや、個人・家族・コミュニティでの備えが大事であることなど、住民レベルでの防災実践の重要性について触れられました。

その後は地元の小中学生が大挙押し寄せる中で、BOSAI2プロジェクトの紹介が各国ブースで行われ、ニカラグアは津波避難3つのルールを紹介しました。内陸部である首都テグシガルパまで津波が来ることはありませんが、乾季に海に行くことが習慣化されているこの地域では、決して他人ごとではありません。津波という言葉は知っているけれど、詳しいことは知らないという彼らにとっても、津波に関する紹介は海で過ごす知恵として大いに役立つことでしょう。

31日、多くの防災関係機関・ドナーを交えたハリケーン・ミッチ20周年会合が開催されました。SINAPRED長官からは、国が進めているコミュニティ・家族・個人をモデルとした防災の推進が紹介されました。BOSAI2プロジェクトもこのモデルを推進するための防災教材作りを支援しているところです。また、ハリケーン・ミッチで大規模土砂災害があったポソルテガ市の副市長も自治体セッションに参加し、同災害で多くの家族を失ったこと、記憶を風化させないために毎年記念イベントを行っていることが紹介されました。20年という月日では風化してもおかしくない中、前日に実施された追悼イベントの様子も紹介され、その生きた記憶とそれを風化させない取り組みに注目が集まりました。

20年という月日は、当時赤子だった者が大人になっていることを意味します。もしその間に災害の伝承が行われていないのであれば、その経験を有するものの記憶は薄れ、次世代へはその引継が行われず、知見が途切れることになります。そしていつしか災害を忘れた頃に新たな災害が発生し、同じことが繰り返されることになりかねません。

BOSAI2プロジェクトは災害の世代間伝承を推進するために、コミュニティレベルでも組織レベルでも、過去の災害知見の蓄積と共有体制の強化に引き続き努めていきます。

【画像】

これまでのプロジェクト成果と今後達成される成果を他国の防災機関へ説明するニカラグアのプロジェクトマネジャー(写真右)

【画像】

広域合同調整委員会(JCC)終了後の全体写真

【画像】

べリンチェの丘からハリケーン・ミッチ20周年番組を生中継(右から3番目がSINAPRED長官)

【画像】

多くの小中学生がベリンチェの丘を訪問し、過去の災害について学びました。

【画像】

ハリケーン・ミッチ20周年会合の会場

【画像】

ハリケーン・ミッチ20周年会合における自治体セッション(右から3番目がポソルテガ市の副市長)