沿岸コミュニティにて津波防災講習会が開催されました

2018年11月13日

2018年11月13日に、BOSAI2プロジェクト対象市であるレオン市の3つの沿岸コミュニティで津波防災講習会が開催され、約60人の住民が参加しました。

午前中は、サリーナス・グランデス地区での講習会です。この地区は1992年のニカラグア津波を機に高台移転を行ったのですが、海岸の低地に住まう住民はまだ少なからずいるため、引き続き地域の津波避難を推進する必要があります。講習会では、日本人専門家が津波のメカニズムについてパワーポイントを使い分かりやすく説明し、ニカラグア版津波避難3つのルール(揺れたらすぐ避難、サイレンが鳴ったらすぐ避難、行政の連絡があるまで海に戻らない)について理解を深めました。

その後、BOSAI2プロジェクトで作成しているビデオを上映しました。ビデオには津波とはどういうもので、どのような対応が求められるのかを理解する他にもう一つ重要な目的があります。それはこうした会合に来ないその他の近隣住民にも津波の知見と行動様式(避難)の必要性を広く普及させることです。

日本でもそうですが、こうした会合に集まるのは防災意識の高い住民だけです。防災意識の高い住民は地震の揺れを感じたら、或いは津波警報を聞いたらきっと逃げることでしょう。一方で他の住民が逃げないと地域の避難が遅れ、防災メンバーの命を危険に晒すことにもなりかねません。また、逃げない住民が多ければ多いほど、逃げない次世代(子供たち)を生むことにもなり得ます。地域みんなが逃げられるようにするために、サリーナス・グランデス地区では隣人への防災啓発を検討しており、そこで威力を発揮するのがビデオなのです。

ビデオがあれば、住民が伝えたいことを効果的に漏れなく伝えることができるとともに、ビデオを見ることによって避難行動を復習する機会ともなり、継続的な知識の更新を行うことができます。また、恥ずかしがり屋の住民も多いことから、ビデオがあることで効率的・効果的な津波知識の普及をすることができます。普及と言う点は住民も気に掛けており、定期的に行うコミュニティ映画上映会の前に当該ビデオを流すのが良いのではないかなど、住民からも様々なアイディアが提供されました。

午後は、隣接するポネローヤ地区とラス・ペニータス地区合同での講習会開催です。これらの地区の特徴は、多くのメンバーが比較的高台に住んでいるものの、例えばポネローヤ地区の学校は海岸近くにあり、子供たちの避難が円滑に行えるかどうかが鍵となります。もしそこに不安があると、親が子供を探しに行き、お互いが津波に巻き込まれるという最悪のケースも考えられます。

そこで、発表内容は午前中と同じであるものの、学校・親・子供・家族の責任としてそれぞれ何ができるかという話を導入で触れました。すると最初は学校がしっかり避難対応をすべきと訴えていた大人も、「親が子供を探しに行くのは、親が学校を信頼していないからだけではなく、息子・娘が避難できる子に育っているという確証を親が持てないからだ。」ということを理解し、家族がお互いに避難していると信頼し合えるために何をすべきかが検討されました。そして、信頼できるまで話し合うとともに、次の世代が必ず避難するように、現世代(大人)が常に避難する姿勢を見せ続けることが大事であるということを確認しました。子供は大人の背中を見て育ちます。どのような姿を子供たちに見せたいのかと問いながら行った説明では、大人たちの眼も真剣そのものでした。

津波講習会は、津波のメカニズム第2編やニカラグア早期警報システム、日本の経験から学ぶなど他にもテーマがあるため、BOSAI2プロジェクトでは引き続きコミュニティ津波防災講習会を開催していく予定です。

作成:川東 英治(長期専門家)

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住民向けに津波のメカニズムを説明する日本人専門家

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ニカラグア版津波避難の3つのルールを説明する日本人専門家

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津波ビデオの一部。ビデオには津波経験者のインタビューなど、ニカラグアの津波経験がたくさん詰まっています