中米地域防災関係者を日本に招いて防災研修が開催されました

2019年2月1日

2019年1月21日~2月1日、ニカラグアのギジェルモ・ゴンザレス氏(国家防災対策機構長官)とエリック・カナレス氏(マナグア市第3行政区長)を含む中米地域防災関係者13名が参加のもと、自治体を中心とした防災組織と研修体制の強化にフォーカスを当てた防災研修を日本で実施しました。

日本の防災対策のはじまりは戦国時代にまで遡り、現在まで脈々と続いています。「防災とは不断の努力の賜物」であり、日本が防災先進国と言われるゆえんであります。そこで、防災対策の継続的な実行及びそのための予算を獲得するために、JICAが進める地方防災計画作成のための8ステップ演習から研修はスタートしました。演習は国ごとに分かれ、各国の一都市をモデルとして進められました。

まずは地域の災害リスクを知るために、対象都市のリスク情報の洗い出しです。日本では、市町村ごとのハザードマップや研究機関の調査等により、どの地域でどのような災害が起こったのか、或いは起こりそうなのかという災害情報を比較的簡単に入手することができます。こうした情報を基に防災計画を立てるのですが、中米をはじめとした開発途上国ではこうした情報が十分には揃っていません。そこで、こうした情報以外に過去の災害履歴や人の記憶も辿りながら、地域の災害リスクを地図上に落としていく手法を学びました。

ハザード情報が整理出来たら、すでに国の機関が何か対策を計画・実施していないか確認します。そして、こうした対策が実施されるまでにどの程度の災害リスクがあるか、また対策後にも残る災害リスク等があるかどうかを確認します。こうしたリスクの変遷を踏まえて、市としてどのような対策を実施すべきかを時系列で考えます。その後に、候補に挙がってきた様々な対策に対して優先順位を付け、必要な予算を見積もります。計画ですので、予定通り進まないことも考えられるため、定期的な見直しを行うことも確認します。

最後に、各ステップで議論した内容を地方防災計画の核として取りまとめ、各国で発表し合いました。どの国の発表も興味深いものでしたが、ギジェルモ・ゴンザレス国家防災対策機構長官が発表したニカラグアに対しては、講師からも直接「素晴らしい!」との言葉を頂きました。実際に長官からも、「演習で学んだ地方防災計画作成8ステップは、非常に実践的で素晴らしい。ニカラグアの現状も踏まえた2つのステップも加えて、ニカラグア版を作成し自治体に適応したい。」との言葉があり、日本側・ニカラグア側双方にとって実りの多い演習となったようです。

2日間に渡る地方防災計画演習後は東京を後にし、静岡県富士市に移動しました。まず魅了されたのは富士山の景色です。研修参加者もみんな喜んで写真を撮っていましたが、富士市は富士山の景色もさることながら、その湧水を利用した製紙業が盛んです。一方で日本有数の急流河川である富士川を抱え、山間地域には土砂災害警戒区域が設定されており、駿河湾に面した海では地震並びにそれに伴って発生する津波にも警戒しなければなりません。富士市は自然が豊かであるが故に、災害と無縁ではないのです。しかしながら自然が豊かであるからこそ、その恵みを最大限に受け続けるために防災対策を行い、自然の猛威を最小限に抑える努力をしている地域でもあるのです。こうした富士市及び自主防災組織の取り組みについて丸一日話を聞く機会があり、研修参加者はその内容に聞き入っていました。また一日の研修終了後は地元の有志も含めた懇親会が開かれ、日本と中米の防災交流が実現し、大変好評でした。

その後研修参加者は愛知県に移動し、名古屋大学及び愛知県の様々な規模の自治体を訪問し、各組織・地域の取り組みについて学びました。

帰国後、ギジェルモ・ゴンザレス国家防災対策機構長官に感想を伺ったところ、「大変実りのある研修であった。特に地方防災計画作成の8ステップ、ハザードマップの作成と活用が印象的であった。日本で学んだことについては、まずは研修に同行したマナグア市エリック・カナレス氏の担当地区で試行的に行い、その経験・成果をマナグア市の他の行政区、そしてニカラグア国内全体に広げていきたい。」とのことでした。またエリック・カナレス氏からも帰国早々に電話をもらい、「アクションプラン実現のために近々打ち合わせをしたい。」とこちらの大変意欲的です。

このような言葉を聞く限り日本での研修は大成功だったと言えますが、これはニカラグアの防災が進展する始まりに過ぎません。BOSAIフェーズ2では、ニカラグア全体の防災能力の底上げと発展のために、引き続きこうした帰国研修参加者やカウンターパートのイニシアティブを尊重しながら協力を推進していきます。

【画像】

ニカラグア研修参加者が共同作業で地方防災計画を作成

【画像】

ニカラグア国家防災対策機構長官(左から2人目)によるマナグア第3行政区防災計画の発表

【画像】

富士市における研修会場(富士市災害対策室)

【画像】

富士市からは副市長が駆けつけ、ニカラグア国家防災対策機構長官からも感謝の言葉が述べられる

【画像】富士市研修参加者集合写真