火山災害経験の共有と火山活動モニタリング強化のため、3つの火山地域のコミュニティ経験交流会を開催しました

2019年3月15日

2019年3月15日、グアテマラ共和国内のプロジェクト対象地域であるサンティアギート火山地域、パカヤ火山地域のコミュニティの防災リーダーと、フエゴ火山地域のコミュニティ住民との経験交流会を実施しました。

3つの火山地域のコミュニティ防災リーダーが一堂に会して、それぞれの経験を学び合うのは、グアテマラ国内では初めての試みであり、プロジェクト対象7市の27コミュニティの防災リーダー、フエゴ火山地域からは3つのコミュニティの住民が参加しました。
今回の交流会は、カウンターパート機関である国家防災調整庁(SE-CONRED)の地域担当官や火山ユニット技官が、市役所やNGO等と準備や調整を行なって実現したものであり、3つの火山地域のコミュニティからは73名が参加し、交流会開催場所を提供した市役所の市長、市長秘書官などの関係者を含めると90名ほどの会となりました。

今回の交流会の開催に関して、特筆すべき点が2点あり、1点目はコミュニティの要請を受けて市が財政的支援を行ったこと、そして2点目は、この会がNGOとの共同で開催されたことです。

まず1点目について、当初、BOSAIプロジェクト側で招待を予定していたのは、27のプロジェクト対象コミュニティからそれぞれ1名ずつでしたが、昨年に避難訓練を実施し、これまでに簡易雨量計講習会なども実施しているサンティアギート火山地域のサン・マルコス・パラフノフ(San Marcos Palajunoj)コミュニティの防災組織リーダーから、防災組織メンバー全員を参加させたいという要望が開催直前に出てきました。
既に移動手段の手配等が済んだ後であり、プロジェクト運営チームはどうにか実現できないかと頭を悩ませていましたが、コミュニティ防災リーダーが並行して市長に相談をしたところ、市長が交通手段を支援する決断を下し、同コミュニティの防災組織メンバー全員の12名が参加できることとなりました。
市長のコミュニティ防災活動への理解、防災リーダーによる外助・公助を探し出すリーダーシップ、そしてその間を丁寧につないだ火山ユニット技官の調整力が、目に見える形で機能し、結果を出しました。
先に特筆すべきと書いたように、グアテマラ共和国の経済・政治・社会的背景をもとに、市の予算が少ない、市長の防災活動への理解不足、防災リーダーのリーダーシップ不足、調整機関の人手不足、コミュニティとの信頼関係構築不足など様々な難しい要因があるなかで、今回の連携はプロジェクト対象地域への支援を通じて、自助・共助・公助のそれぞれの要素の能力が、または連携が強化されてきている成果が垣間見られた貴重な機会となりました。

2点目について、2018年6月3日のフエゴ火山災害以降、多くのNGOや国際機関等がフエゴ火山周辺の被災地域の支援を行っており、その中で、NGOワールドビジョンもコミュニティの基本的な防災活動支援などを行っています。
そこで、フエゴ火山地域の住民の交通手段の確保や調整を同NGOが実施し、より多くのコミュニティ防災リーダーを今回の交流会に参加させるのはどうか、という案が計画段階で浮上してきました。
カウンターパート機関、同NGO担当者、日本人専門家で準備会合を開催し、相互の確認を得て、現場での3者による協力が実現したことから、より多くのコミュニティ防災リーダーを参加させることができました。

交流会では、市長の挨拶から始まり、会場となった地域のフエゴ火山災害による避難者の仮設住宅敷地内の見学、同火山災害により最も被害をうけた被災現場の見学と体験の共有、パカヤ火山地域の噴火災害経験の共有、サンティアギート火山地域の現在の防災活動内容の共有などが実施され、参加者にとって非常に実りのある場となりました。
参加したコミュニティ防災リーダーや、準備・調整を行った関係者から「フエゴ火山の災害体験者から直に話を聞き、現場を見ることで、テレビやSNSを通じて知っていた事とは違った、多くの学びがあった」「こういった現場を見ながらの防災活動は、コミュニティ防災リーダー達の意識啓発や防災教育にとって、とても効果がある」「災害対応機関は、発災直後に複数のコミュニティに即応することは難しく、事前の情報共有や調整なども支援できることは限られていることから、コミュニティ自身が火山活動を監視して、状況に応じて避難を判断し、被害を軽減させることが重要だ」などのコメントが聞かれました。
また、参加した防災リーダー達は、活発に質問をし、メモをとるなどして今回の交流会に熱心に参加している様子が見られました。

当日は、日本人専門家チームからは伊良部専門家が参加し、交流会開催を支援しました。
また、JICAグアテマラ事務所からも押野企画調査員、ナショナルスタッフのシンディ・モラレス氏も参加し、参加者の学びを確かめました。
カウンターパート機関、日本人専門家チーム、そしてJICAグアテマラ事務所が一体となって計画・調整を行なったことから、今回の交流会が実現しています。
今回の交流会は、災害経験の伝承、火山ハザードの理解、火山災害による社会的インパクトの理解促進、火山活動のモニタリングと警報、避難訓練や避難ルートの確立、コミュニティ防災組織の自主的な活動、市役所や防災機関との連携や支援の仕組みの重要性などの要素が組み込まれた、有意義な防災活動となりました。

プロジェクトでは、年に1回、同様の交流会の開催を計画しており、次回は2020年3月頃に開催する予定です。

作成:伊良部 秀輔(長期専門家)

【画像】

熱心に避難者から話を聞き取るサンティアギート火山地域のコミュニティ防災リーダー達の様子

【画像】

市役所担当者の案内のもと、仮設住宅を見学するコミュニティ防災リーダー達

【画像】

フエゴ火山災害で被災したコミュニティでの経験をお互いに語り合う様子

【画像】参加者集合写真(一部)
カウンターパート機関の調整のもと、市役所、NGOとの連携が実現した