ナガロテ市にて「カエルキャラバン」が実施されました-帰国研修員によって継続される日本の防災知見-

2019年4月12日

2019年4月12日にナガロテ(Nagarote)市にて、ニカラグア国家災害管理・防災システム局(CD-SINAPRED)のJICA帰国研修員が中心となり、大学・インフラ省・住宅庁・赤十字・ナガロテ(Nagarote)市役所などからの支援を得て「カエルキャラバン」を実施し、同市内の多数の小学生が参加しました。

「カエルキャラバン」とは、子供が遊びながら防災の知見を学ぶ手法で、2007年から2012年に実施された「中米広域防災能力向上プロジェクト・フェーズ1」(BOSAIフェーズI)にて中米地域に導入されたプログラムであり、ニカラグアを含めた中米地域の防災担当者にとって、日本で研修を受ける際の人気の一コマとなっています。

さて、今回の「カエルキャラバン」は、2014年に発生したナガロテ(Nagarote)地震メモリアルイベントの一プログラムとして実施されましたが、ここで活躍したのが、今年日本から帰国したばかりのニカラグア国家災害管理・防災システム局(CD-SINAPRED)のエドモンド・バレーラ帰国研修員です。
BOSAIフェーズIIのカウンターパートでもある彼は、2019年1月から2月に掛けての約1か月半、JICAが主催する「中米防災対策研修」に参加し、帰国後、ナガロテ(Nagarote)地震メモリアルイベントの立ち上げに着手しました。
まずはイベントに協力してくれる機関を募り、大学・インフラ省・住宅庁・赤十字・ナガロテ(Nagarote)市役所など様々な組織からの支援を取り付け、地震防災に関連した展示ブースを設置することになりました。
また、子供向けのプログラムということで、日本で学んだばかりの「カエルキャラバン」も実施することにしました。
当日は100人以上の子供たちが参加し、「カエルキャラバン」を通して地震の際の対処法・人命救助方法について熱心に学んでいました。

エドモンド・バレーラ帰国研修員に、日本の印象やなぜこのようなイベントを実施しようと思ったのかをインタビューしたところ、次のように話してくれました。
「日本では災害履歴を残すことの重要性を知りました。もちろん、ニカラグアでも過去の災害記録があることはあるのですが、それはあくまで災害が起こったという事実を記録しているだけで、その時に人々が何を考え、どのような行動をしたのかという記憶や思いまでは記録できておらず、これでは過去の災害から十分に学ぶことはできません。
こうした情報は科学技術的な調査だけでなく、教育にも活用されなければならないのです。そこで、こうした記録と記憶が消失する前に取りまとめる作業を行い、メモリアルイベントで多くの人に共有しようと思いました。
また研修に参加するまでは、日本は技術大国であり、防災についても技術力があるからいろいろと進んでいるんだと思っていました。しかし実際に日本を訪問してみると、技術もさることながら、人としての規律・献身性・やる気・創造力で様々なものを生み出していることに気付いたのです。
ニカラグア人は、何か足りないものがあると、何もないと考えて行動しないことがしばしばですが、日本人は違います。こうした日本人の姿勢から技術に依存することなく、それを活用していくことの重要性も学びました。
神戸市の「人と防災未来センター」では、阪神淡路大震災の映像・画像資料がたくさんあるとともに、その時の人々の記憶や思いもまとめられていました。ナガロテ(Nagarote)市でも、このような災害の記憶を伝える博物館のようなものができればと関係機関に働き掛けているところです。」

JICAの技術協力プロジェクトにおいては、日本人専門家の支援も重要ですが、現地カウンターパートの努力なしには良い成果は得られません。
特に、災害はいつ起こるか分からないことから、こうしたカウンターパートの不断の努力と継続を通じ、後世までその教訓を伝えるとともに、「防災文化」とも言える災害に備える国・地域・国民を形成していくことが求められています。
BOSAIフェーズIIでは、ニカラグア防災文化形成に貢献するこうした帰国研修員・カウンターパートと協働して、引き続き当国の防災の発展に協力していきます。

作成:川東 英治(長期専門家)

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多くの児童生徒と防災関係機関がイベントに参加

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ジャッキを使って瓦礫からの救助方法を学ぶ子供たち

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紙食器作り(折り紙)を指導するCD-SINAPRED職員

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消火訓練を体験する子供たち

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今回のイベントを主導したエドモンド・バレーラ帰国研修員(手に持っているのは日本での研修の修了証)