「市防災課設置ガイド」が完成しました

2019年6月10日

グアテマラにおけるBOSAIプロジェクト・フェーズ2では、火山地域の防災能力強化に取組んでおり、仙台防災枠組(2015-2030)における4つの優先行動(リスク理解、防災ガバナンス強化、防災への事前投資強化、災害対応強化及びより良い復興)に沿って、カウンターパート機関への支援が進められています。しかしながら、グアテマラにおいても深刻な貧困問題や複雑な政治状況などの途上国に共通する社会背景があり、防災は国や地方の優先的な取組課題とはなりにくいのが現状です。この為、災害対応に注目されることが多く、発災から対応、復旧復興までの段階に予算や人的資源が多く当てられ、且つ発災後に全て考えはじめるという応急対応型の防災への片寄りが顕著で、発災前のリスク削減や事前の備えへの取組み等が弱くなってしまっている状況があります。

このような理由から、先に挙げた仙台防災枠組(2015-2030)の優先行動の中で、中米地域において特に強化が必要であり、チャレンジングな課題として、防災ガバナンスの強化、防災への事前の投資強化が挙げられます。この課題解決支援のために、BOSAIプロジェクト・フェーズ2では、プロジェクト開始時からの関係者との協議や調査活動等の結果として、市の防災能力強化の必要性を明確にし、カウンターパート機関と共有してきました。この共通認識の上に立ち、日本人専門家チームは、市の防災担当者配置、防災課設置等への働きかけを通じた防災ガバナンスの強化、防災への事前の投資強化支援に積極的に取組んできました。
2017年からは、前原コンサルタントチーム専門家を主担当として、伊良部長期専門家とともにカウンターパート機関の担当部署である防災部等に対し、防災における市の重要性、日本の市役所の防災課の業務概要や予算内訳事例の紹介、事前投資の意義等についての協議と共に、今回のガイド案の技術支援をしてきました。その結果、プロジェクト開始前は配置されていなかった7つのパイロット市の内6市に防災担当者が配置されるに至りました。
また、継続して進めてきた防災課の業務指針となる「市防災課設置ガイド」作成も、2019年5月に同案の完成とカウンターパート機関内での承認、そして6月10日にプロジェクトの支援により3,000部の印刷が完了し、全国に適用される予定になっています。これまでは市では「災害対応計画」しか作成が促進されていませんでしたが、このガイドの中で、市の防災担当者・防災課の業務として、市管轄区域内の防災計画や戦略等の作成を促進することなどが役割として明記され、市の総合防災計画(plan municipal de gestión integral de riesgo de desastre)を作成することについても明記されました。

プロジェクトによる支援の成果として、グアテマラ国内342市全てへの防災担当者の配置、防災課の設置が進められていく基礎の一部がつくられました。今後は、カウンターパート機関の同ガイド責任部署である防災部による市関係者へのガイド案の内容周知のための研修開催を通じ、防災ガバナンス強化、防災への事前投資強化が進められていく予定です。

作成:伊良部 秀輔(長期専門家)

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防災部が作成し、3,000部が印刷された「市防災課設置ガイド」。今後このガイドを使用し、全国の市役所への防災担当者配置、防災課設置が促進されていく