プロジェクトで作成された風水害教材がニカラグア全土で使用されました

2019年7月13日

2019年7月2日~5日、及び13日に国家研修計画に則った防災研修にて、プロジェクトで作成された風水害教材がニカラグア全土で使用され、1,200人が同教材を使用した研修を受講しました。

ニカラグアでは全国民の防災知見と対応力を向上させるため、国家研修計画という防災研修プログラムを実施しています。これはニカラグア国家災害管理・防災システム局(CD-SINAPRED)の研修担当が各県を訪問し、県下の自治体職員や省庁の地方事務所職員に対して防災研修を行うものです。そして、この研修を受けた人たちがコミュニティ住民に対して研修を行うことで、国から自治体を通して、ニカラグアの全てのコミュニティに防災の知見を普及する仕組みになります。

プロジェクトでは、開始当初からこうした国の防災体制やプログラムに着目し、持続的・効率的・効果的な防災活動の実施について検討を重ねてきました。例えば持続性や効率性については、プロジェクトで独自の新しい仕組みを立ち上げるよりも、既存の国家研修計画を活用した方がその効果が期待できます。こうした継続の仕組みは、ニカラグア政府側の努力により、すでに構築済みです。そのため、こうした体制の特徴を理解・活用し、効果的な防災活動の実施と普及の強化をすることがプロジェクトに課せられた使命になります。

プロジェクトでは国家研修計画の3つの点に着目しました。それは、1)最終的な裨益者がコミュニティ住民であるということ、2)半日の研修であること、3)毎年継続する研修であることです。
最終的な裨益者がコミュニティ住民なので、研修内容は技術的なものではなく、住民の日常生活に密接した分かりやすいものでなければなりません。そこで日本の知見も活用しながら、技術的なものでも住民視点で内容をかみ砕いた教材にまとめ上げました。また、研修内容の要約版となるビデオも作成し、視覚映像も交えながら住民の理解を促すようにしています。一方で、情報の詰込みは理解の促進を阻害します。そこで半日という研修時間を座学だけで終わらせるのではなく、議論や意見交換・発表なども取り入れて、適切な情報量での研修実施を心掛けました。しかし、それだと情報が欠落してしまう可能性があります。そこで毎年実施する研修であることを活用し、5回(5年)程度で、復習も含めて各災害種のテーマが一通り学べる構成にしてあります。

今回は雨季に入ったこともあり、風水害がテーマでした。
CD-SINAPREDの研修担当からは、過去の災害も踏まえながら、雨の降り方の違い(夕立・低気圧や前線の影響による雨・ハリケーン)や山間地・平野・低地・都市部など地域ごとの洪水の特徴について説明が行われました。そして、洪水の起こり方やその影響は雨の降り方と地域特性で変わってくることから、地域の特徴を知るための「街歩き」が推奨されました。「街歩き」は日本の地域防災でも実施される手法で、地域を歩きながら災害の危険がある場所を地図に落とし込んで行くものです。また、ハリケーン発生のメカニズムや暴風雨の影響を具体的なビデオを交えながら説明し、参加者は雨だけではなく風にも注意しなければならないことを学びました。

日本人専門家も一部の研修に同行しましたが、風水害はニカラグアで頻発する災害であることから、CD-SINAPREDの研修担当の知識と経験も十分であり、プロジェクトで作成した教材が有効活用されるとともに、受講者からは好評のうちに研修を終了することができました。こうした日本の知見と協力が全国で活用されることは、技術協力をする者にとって大変嬉しいものです。
一方で、「まだまだ情報量が多すぎる」「もっとビデオなどの視聴覚教材があった方がよい」などの改善の意見も絶えません。こうした意見は引き続き教材の改訂にフィードバックしていく予定です。

今後は、国家研修計画の中で、地震防災・津波防災についても扱われる予定になっています。特に、これらの災害種は日本が最も多くの知見を有することから、プロジェクトでは引き続き国家研修計画を介したニカラグア防災の発展と普及に貢献していきます。

作成:川東 英治(長期専門家)

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プロジェクトが作成した教材を使って研修を行うCD-SINAPRED研修担当

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参加者(自治体職員)からも意見交換や発表が行われました

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参加者の様子(ヌエバ・セゴビア県)

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参加者の様子(チョンタレス県)