保護者・生徒合同の第2回津波防災教育を実施し、300人以上が参加しました-続・子供の安全をキーワードとした防災活動の実施-

2019年8月22日

2019年8月22日に、レオン(Leon)市のサリーナスグランデス(Salinas Grandes)地区の2つの小学校にて、保護者・生徒合同の津波防災教育が実施され、保護者約90名、生徒約230名が参加しました。

子供の安全をキーワードに始まった津波防災教育の第1回目は、津波のメカニズムなど基礎知識がテーマでした。これは1992年のニカラグア津波の際に、「住民は誰も津波について知らなかった」という教訓から、津波について理解を深めるためでした。第2回目はもう一つの教訓である「津波の襲来を伝達する方法がなかった」という情報伝達に関するテーマです。ニカラグアでは津波早期警報システムと呼んでいます。

1992年のニカラグア沖の海溝型地震は、マグニチュード7.73という津波を引き起こすには十分な大きさの地震であったにも関わらず、沿岸地域の住民はほとんどその揺れを感じませんでした。「津波地震」と呼ばれる大きな揺れを伴わないこの特殊な津波への教訓から、ニカラグア政府は「揺れたら逃げる」という津波避難の基本の推進の他に、「行政からの情報で逃げる」体制作りという課題に取り組んできました。今ではニカラグア太平洋側の沿岸には津波警報サイレンが設置されており、1992年に比べると状況は随分と改善されています。
それでもまだ何かすることはあるのでしょうか?ここで日本の経験・教訓が活きてきます。

日本においても津波警報体制が沿岸地域に整備されており、「揺れたら逃げる」「行政からの情報で逃げる」ことができる体制ができています。しかしながら、東日本大震災前の住民の津波避難率は決して高いものではありませんでした。これには様々な要因が考えられますが、例えば人には不都合な情報を過小評価する「正常化の偏見」(警報が出ても津波は来ない、自分は大丈夫だと思う心理)や、日本で「オオカミ少年効果」と言われる意思決定が過去の経験に左右される心理(前回の津波警報が空振りだったから、今回も津波は来ないと考える)などがあることが分かっています。

こうした人の逃げない心理を理解するとともに、どうすれば毎回避難できる住民になれるのかについて考えることが今回の主眼を置く点です。例えば、もし津波警報の精度が限りなく100%に近付くことができるのであれば、少なくともオオカミ少年効果は発生しません。しかし相手は自然です。自然の営みを100%事前に予測することは不可能です。つまり行政側でできることには限りがあります。そこで住民側の取り組みが重要になるのです。

人は誰でも正常化の偏見により、自分の命は大丈夫とリスクを過小評価してしまいます。しかし子供の命に対しては違います。大人たちが逃げる姿を見せることが、子供たちの逃げる姿勢と文化を育むことに繋がるのだとしたら、津波が来ようが来まいが逃げ続けるのが人としての心理ではないでしょうか。津波が来るから逃げるのではなく、大事な人の命のために今できることをする。それが理解できている参加者に対して、多くの言葉は必要ありませんでした。日本の事例も参考にしながら、最後はニカラグア津波避難三原則(1.揺れたらすぐ避難、2.サイレンが鳴ったらすぐ避難、3.行政の指示があるまで戻らない)を確認しました。

第2回目の防災教育は前回よりも多くの参加を得て、盛況のうちに終了することができました。次回は津波避難ができるように、そして子供たちの命を確実に救えるように、津波の前に起こるであろう地震対策について、日本の具体的な経験も踏まえて伝えていく予定です。

作成:川東 英治(長期専門家)

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校長先生の挨拶で防災教育開始

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津波の話に耳を傾ける参加者

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日本人専門家による講義

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レオン(Leon)市のカウンターパートも講義を実施