第4回本邦研修「仙台防災枠組に基づいた地方自治体防災の推進」が実施されました

2019年11月16日

2019年11月4日から16日にかけて、東京を中心に、宮城県、新潟県において第4回本邦研修が実施されました。グアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、パナマ、中米防災調整センター(CEPREDENAC)から防災機関の責任者、プロジェクト・マネージャー、市役所防災担当者、コミュニティリーダーまで広い職責を持つ21名が参加しました。
本邦研修は第4回である今回が最終回となり、研修テーマを「仙台防災枠組に基づいた地方自治体防災の推進」として、中米地域における仙台防災枠組2015-2030におけるグローバルターゲット(e)の達成、事前防災対策投資の重要性、中米地域におけるプロジェクト成果の持続性の確保に向けて、多くの知見と学びを得ることを目的に実施されました。

仙台防災枠組に批准する国の防災への取り組みについての理解を深める

世界防災フォーラム(2019年11月9日~12日:仙台市)では、仙台防災枠組2015-2030におけるグローバルターゲット(e)(2020年までに国家及び地方の防災戦略を有する国家数を大幅に増加させる)の達成、よりよい復興、近年深刻化する気候変動による災害にどのように対処していけばよいか、などの情報の発信が行われました。
JICA主催セッション「仙台防災枠組グローバルターゲット(e)の地方防災計画策定の加速」には、プロジェクトからClaudia Herrera Melgar CEPREDENAC事務局長が登壇し、中米地域における仙台防災枠組と中米防災政策(PCGIR)に批准した防災事業の優良事例の紹介、仙台防災枠組グローバルターゲット(e)に向けた取組みとBOSAI2プロジェクト成果などについて、プレゼンテーションとディスカッションを行い、世界への発信を行うことができました。

地域防災計画の策定(8ステップ)演習

3日間にわたり、JICAが開発した地域防災計画(8ステップ)の策定演習を行い、国ごとのグループで地方防災計画策定(案)がとりまとめられました。各国グループは、協議と考慮を重ね、短期・中期・長期に区分することやカレンダー形式で時間軸を盛り込み、構造物対策と非構造物対策に分類した計画を取りまとめるなど理解しやすい成果を作成しました。また、事前準備・減災を区分し、投資の概算費用、モニタリングの方法、手続き手法などを盛り込むなど、国及び自治体による防災への事前投資と持続性を考慮した計画案が作成されました。

ハザード軽減のための防災投資と残余リスクに対する自治体の取組み

研修後半は、新潟県越後平野を訪れ、三条市が災害に強いまちづくりを目指して取り組む防災対策事業を通じて、防災の事前投資の重要性と、構造物対策と非構造物対策の組み合わせによる対策効果について知見を得ることができました。
講義では、三条市が2004年に大規模な洪水によって甚大な被害を受けたことを契機に、ハード対策と体制強化、災害対策ガイドブックやハザードマップの整備等による啓発活動の推進が実施されたことが紹介されました。7年後の2011年に発生した豪雨では、2004年洪水災害時の2倍以上の降水量があったにもかかわらず、ハード、ソフト両面の防災対策が功を奏し、人的被害と住宅被害を最小限に止めることができた貴重な経験を知ることができました。
現地視察では、五十嵐川の河道改修現場と、市内1,200カ所に貼られている「まるごとまちごとハザードマップ」の標識、大河津分水施設を見学し、ハード、ソフト両面の対策の理解を深めることができました。

プロジェクト成果持続性の検討

研修最終日には、プロジェクト成果持続性の検討を行うために、プロジェクト成果の持続性確保のための活動計画「プロジェクト活動普及計画(案)」を、各国とCEPREDENAC事務局の7グループが発表しました。
活動普及展開のメカニズムを、自治体とコミュニティの役割で分類し、政府の推進方法、自治体から自治体への展開、コミュニティ間の展開まで言及する計画案等が作成されました。今後、プロジェクト終了に向けてこの計画案を更新していきます。
この検討会は、各国防災機関の長官格とプロジェクト・マネージャー、防災担当職員、自治体からの代表者が一同に会して実施され、中米広域各国で防災能力向上とその持続性を共有する貴重な機会となりました。

最後に、今回の研修でご協力頂きました行政機関・大学・世界防災フォーラム開催事務局の関係者の皆様の心温まるご指導に対し、本研修参加者共々お礼申し上げます。

作成:井後 穂高(コンサルタント)

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世界防災フォーラム(仙台)のJICAセッションでは、Claudia Herrera Melgar CEPREDENAC事務局長がパネリストとして登壇し、中米地域の防災への取り組みとプロジェクト成果を発表しました

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地方防災計画策定8ステップ演習では、国ごとのグループに分かれて、防災機関の長官・副長官も参加して演習を行いました

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地方防災計画策定8ステップ演習の最後は、国ごとにプレゼンテーションを行いました

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新潟県三条市では、災害に強いまちづくりを目指して自治体が取り組む防災対策事業の講義を受けました。災害リスクの軽減のための事前投資の重要性を学んでいます

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大河津資料館で、我が国における大規模な防災ハード対策の一つである大河津分水の建設に係る資料を見学し、堰と分水路の視察を行いました

【画像】21人全員が最後まで欠席することなく、無事に研修コースを終えることができました