パイロット市の総合防災計画の更新が行われ、モニタリング・評価・更新結果に関する発表会が開催されました

プロジェクトのパイロット市であるレオン（Leon）市及びサンフアンデルスール（San Juan Del Sur）市の総合防災計画の更新が行われ、各市の防災委員会（COMUPRED）及び、国家レベルでのモニタリング・評価・更新結果に関する発表会が開催されました。

ニカラグアでは、ニカラグア国家災害管理・防災システム局（CD-SINAPRED）の主導により、2005年以来、各自治体の総合防災計画の策定が進められていますが、自治体がその計画の実施状況をモニタリングし、必要に応じて更新していくための手法は確立されていませんでした。本プロジェクトでは、2019年10月までにその手法を考案し、既存の自治体総合防災計画ガイドに盛り込む形でガイドを改訂しました。また2019年11月以降、プロジェクトの支援のもと、市の防災担当職員が防災委員会メンバーと協力し、レオン市とサンフアンデルスール市のパイロット2市において、改訂されたガイドを用いて両市の総合防災計画の更新作業の支援を行ない、2020年2月までにその作業が完了しました。

まずは2020年2月26日に、レオン市の防災委員会が市総合防災計画更新案に関する討議会を開催しました。同市においては約80％の活動が完了したという素晴らしい結果が確認されました。2005年から2019年までの15年間で、計画していた通り順調に活動が実施されていたということになります。
レオン市ではこの結果を受けて、2020年から2024年までの活動を新たに設定し直し、更新版の計画として取りまとめました。一方で防災活動における課題や新たに設定された活動、予算配分の妥当性など、他に追加した方が良いと考えられる活動などについても議論がなされ、防災活動における課題としては、防災委員会の定例会の参加者が固定されていないことや、コミュニティの能力強化が不十分であること、洪水の原因箇所の対策の必要性などが挙げられました。特にコミュニティの能力強化については、コミュニティが防災活動に必要な資機材を十分に有していないことや、消防や防災委員会に頼り過ぎているなどの点について議論され、限られた予算の中で、それらの課題を着実に改善していくことで合意されました。

レオン市に引き続き2020年2月28日には、サンフアンデルスール市の防災委員会が市総合防災計画更新案に関する討議会を開催しました。サンフアンデルスール市においても計画の約75％の活動が完了したという素晴らしい結果が確認されています。
防災活動における課題としては、太平洋に面した著名な観光地であることから、津波災害に対する備えの必要性が強く認識されるとともに、防災対策については観光業者とも協議して慎重に決定することが求められることが確認されました。さらにコミュニティの防災体制強化として、コミュニティに防災用資機材の保管所を提供することが提案され、地域の学校などを活用してコミュニティごとに保管所を確保していくという方針が出されました。討議会には市長も参加し、更新計画にあげられた防災活動の実施に対する決意が述べられるとともに、プロジェクトの支援に対する感謝の意が示されました。

これら両市での討議会の結果を踏まえて、2020年3月11日にニカラグア国家災害管理・防災システム局（CD-SINAPRED）において、国家レベルの防災関係機関の参加のもと、レオン市、サンフアンデルスール市の総合防災計画のモニタリング・評価・更新結果の発表会が開催されました。発表会では、市総合防災計画のモニタリング・評価・更新の考え方と実際に両パイロット市で実施した手順について説明した後、両パイロット市の防災担当職員が結果について発表しました。参加者からは、両市の防災活動の素晴らしい進捗について賛辞が述べられるとともに、プロジェクトの支援に対する感謝の意が示されました。

プロジェクトでは2市を対象として総合防災計画の更新を支援してきましたが、プロジェクト終了後は、総合防災計画策定済みの他の60市でも同様に更新を行っていく必要があるため、他市で同様の活動を行うための方針についてもCD-SINAPREDと関係機関、パイロット市の間で議論がなされました。パイロット市からは、「ガイドに示された手法は分かりやすいため、他市でも更新作業を実施可能である」という意見が出されました。また、ニカラグア国土調査院（INETER）からは、市の職員の防災に関する技術的な知識を向上させるための支援が提案されました。

プロジェクトの期間も残りわずかとなりましたが、BOSAI IIでは、CD-SINAPREDと協力し、パイロット市での活動の知見を全国に普及するための支援を続けていきます。

作成：佐々木　新（コンサルタント）