プロジェクト終了のお知らせとプロジェクト成果・好事例について

2020年6月30日

2020年6月30日、グアテマラにおけるBOSAIプロジェクトフェーズ2が実施期間を満了して、終了しました。プロジェクトを通じて2,000名以上が研修や会合等に参加し、パカヤ火山及びサンティアギート火山両地域の火山防災能力の強化に取り組みました。

プロジェクトで達成された成果として、主に以下の火山防災への取り組みが挙げられます。
1)火山防災体制の基礎として、日本の知見を活かした「火山防災協議会」の設置と運営
2)市役所の防災能力の強化として、防災課設置ガイドの作成と同ガイドの普及、そして市防災計画作成マニュアル(8ステップマニュアル(注))の作成

(注)JICAが提案する、地方防災計画の策定プロセスを8つのステップに分けて説明したマニュアル(英文)

3)火山周辺コミュニティの火山防災への取り組みとして、SNSを利用した火山活動モニタリングネットワークの立ち上げと運営、火山周辺のコミュニティへの無線機配備・警報器設置による警戒通信網の改善、そしてパカヤ火山活動監視カメラの設置による火山活動監視体制の向上等

特に2)の支援は、仙台防災枠組2015-2030で設定されたグローバルターゲット(e)(2020年までに、防災戦略を持つ国や地方公共団体の数を大幅に増やす)の達成に向けたグアテマラの取り組みを大きく進捗させました。

また、上記三つの取り組みを進める中で、様々な手法を導入し、移転することができました。
例えば、グアテマラでは初めての導入となる火山BOSAIマップの作成と説明、及び戸別配布、噴火時の避難を目的としたタイムラインの作成と導入、より効果的・効率的な避難所運営を目的とした図上訓練手法である「HUG(Hinanjyo Unei Game/避難所運営ゲーム)」の導入、日本の防災の強みのひとつである災害経験の記録と周知への取り組み等、今後も火山防災を進めていくためのいくつかの手法も、日本の知見を活かす形で導入され、グアテマラの実情に合わせた内容で移転されました。
特に、火山BOSAIマップは、CP機関の職員により火山周辺のコミュニティ防災組織や学校、防災関係者等に広く紹介され、マップ自体の持つ情報のみならず、研修ツールとしての有効性もプロジェクト期間中に確認でき、今後の更新や他の火山への適用が大いに期待されています。

プロジェクト開始以前に課題とされていた防災関連基礎情報の関係者への周知、散在する防災情報の整理なども、日本人専門家が実施した「防災情報研修」を通じて改善に向けた取り組みがなされました。それと同時に、災害体験の記録と周知を重点的に取り上げ、プロジェクトサイトの住民から多くの体験談を聞き取り、ビデオに記録することができました。この取り組みを通じて、研修参加者は災害体験の記録とその活用の重要性への理解を深めました。同研修は、インターネットを活用してグアテマラと日本を結び遠隔で実施され、結果的に約90名が参加しました。
研修参加者からは「多くの事を学ぶ事ができた。グアテマラ国内で同様の研修実施が必要である。」という感想などが聞かれました。

プロジェクト実施において、参考となる良い事例も見られましたので少し紹介したいと思います。
運営面では、カウンターパート機関である国家防災調整局(SE-CONRED)は、プロジェクトマネージャーとその補佐的役割を担うエンラセ(渉外調整担当官)の主導により、組織内部の横断的な参画、組織外部の参画促進を積極的に進め、プロジェクト活動を組織的な活動として進める事で上述の成果が達成されました。プロジェクトの目標や活動内容を、国や組織の政策や計画、通常の業務と整合性を保つように設計し実施した点が、組織的にプロジェクト目標を達成する事につながったと考えられます。
また、日本の研修に参加した帰国研修員との相乗効果も、プロジェクト活動の効果的な実施につながりました。プロジェクト期間中は本邦で実施される「中南米総合防災行政」「火山防災能力強化」などのコースに参加した研修員が、帰国後に日本で学んだ内容を活かしながらプロジェクト活動を進めました。日本での防災への様々な取り組みを学び、施設や機材等を自分の目で見る事が、今より先のビジョンを拡げる事に役立ち、それが自国に戻ってからも、より積極的に防災への取り組みを進める姿勢につながったようです。

グアテマラにおける火山防災へのソフト対策の能力強化が、約5年間のBOSAIプロジェクトフェーズ2を通じて進められました。プロジェクトで育成された人材や大きく進んだ様々な取り組みによって、プロジェクト終了後も、グアテマラにおける火山災害リスクが継続的に低減されつつ、安全な開発の道を歩んでいくことが望まれます。

プロジェクトに関係されました全ての皆様、ニュースレターを読んで頂いた皆様、長い間誠に有難うございました。最後にこの場をお借りしまして、感謝の意を述べさせて頂きます。

作成:伊良部 秀輔(長期専門家)

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パイロットコミュニティからサンタマリア火山及びサンティアギート火山を望む。写真左の男性は、火山の様子を毎日監視し、関係者に報告するコミュニティのボランティア

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パカヤ火山近くのコミュニティ防災組織が実施した避難訓練で避難者の数を数えている様子。メンバーは全て女性である。写真手前の女の子は火山灰対策として、しっかりとマスクをして訓練に参加した

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パイロットコミュニティからパカヤ火山を望む。写真中央奥がパカヤ火山

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日本人コンサルタントチーム専門家による防災情報研修の様子。4セメスターのほとんどは、日本とグアテマラをインターネットで繋いで遠隔で講義を行った。

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火山BOSAIマップについて説明する日本人コンサルタントチーム専門家

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HUG研修の様子。「手を動かし意見を交換しながらグループで学ぶ」という手法は非常に効果的であった

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防災における市役所の役割の重要性について学んだ研修後の集合写真。市役所職員である帰国研修員も参加した