プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)大洋州広域フィラリア対策プロジェクト
(英)Project for Elimination of Lymphatic Filariasis in the Pacific Region

対象国名

大洋州広域 6か国
(パプアニューギニア、サモア、ミクロネシア、キリバス、ツバル、フィジー)

署名日(実施合意)

2018年9月11日

プロジェクトサイト

パプアニューギニア(ニューアイルランド州、ウェストニューブリテン州、イーストニューブリテン州)、サモア(全国)、ミクロネシア(全国)、キリバス(全国)、ツバル(全国)、フィジー(全国)

協力期間

2018年10月25日から2023年2月28日

相手国機関名

PNG保健省、サモア保健省、ミクロネシア保健社会福祉省、キリバス保健医療サービス省、ツバル保健省、フィジー保健医療サービス省

背景

大洋州地域では、世界保健機構(WHO)の指定する顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases。以下、「NTDs」という。)の一種であるリンパ系フィラリア症(Lymphatic Filariasis。以下、「LF」という。)の感染がいまだに確認されており、制圧に向けた対策が継続されている。LFは感染が進行するとリンパ液の還流障害をきたし、陰嚢水腫や四肢の慢性的なリンパ浮腫といった症状を引き起こすことがある。そのため、感染患者は身体的障害に加えて、社会的・経済的な不利益も被っていることが指摘されている。この状況を受け、1999年にWHO西太平洋地域事務局(Western Pacific Regional Office。以下、「WPRO」という。)が、大洋州リンパ系フィラリア症制圧計画(Pacific Programme to Eliminate Lymphatic Filariasis。以下、「PacELF」という。)を開始した。この計画では、大洋州地域におけるLFを2020年までに制圧することを目指し、1)感染地域において伝播を阻止するための駆虫薬の集団投薬(Mass Drug Administration。以下、「MDA(注1)」という。)、2)決められたMDA回数を実施した後の定点調査(Transmission Assessment Survey。以下、「TAS(注2)」という。)、3)慢性リンパ浮腫患者に対するケアを実施している。本事業では、各国においてPacELFを支援することで、LF制圧を目指す。

(注1)MDAは、1年ごとに合計2回実施する。
(注2)TASは、MDAの終了後、最低6か月の期間をあけたのちにpreTAS、その後TASを2年ごとに合計3回実施する。ただしこのpreTASとTASにおける感染率がWHOの基準に達していなければ、再度MDA実施へ戻る。TAS3回目において、感染率がWHOの基準未満であればLF制圧の手続きに入る。

目標

パプアニューギニア

上位目標

パプアニューギニアのプロジェクト対象州において、LF対策の実施システムが維持される。

プロジェクト目標

プロジェクト対象州において、フィラリア対策が強化され、制度化される。

サモア

上位目標

サモアにおいて、公衆衛生の問題としてLF制圧が承認される準備がなされる。

プロジェクト目標

サモアにおいて、LF対策が強化され、制度化される。

ミクロネシア

上位目標

ミクロネシアにおいて、公衆衛生の問題としてLF制圧が承認される準備が強化される

プロジェクト目標

ミクロネシアにおいて、LF対策が強化され、制度化される。

キリバス

上位目標

キリバスにおいて、LFが制圧された状態が維持される。

プロジェクト目標

キリバスにおいて、LFが制圧されたことをWHOにより承認される。

ツバル

上位目標

ツバルにおいて、LF制圧が承認される準備が強化される。

プロジェクト目標

ツバルにおいて、LF対策が強化され、制度化される。

フィジー

上位目標

フィジーにおいて、LF制圧が承認される準備がなされる。

プロジェクト目標

フィジーにおいて、LF対策が強化され、制度化される。

成果

パプアニューギニア

1.プロジェクト対象州において、IDA(注3)によるMDAの実践能力が発展、強化される。
2.IDAによるMDAの国内実施ガイド案が作成される。
3.プロジェクト対象州において、Pre-TASの実践能力が発展、強化される。
4.プロジェクト対象州において、TASの実践能力が発展し、強化される。
5.プロジェクト対象州において、IDAによるMDAとTAS結果の評価が、将来的にDossier (注4)を作成するために利用できる状態となる。

サモア

1.サモアにおいて、IDAによるMDAの実践能力が発展、強化される。
2.サモアにおいて、Pre-TASの実践能力が発展、強化される。
3.サモアにおいて、TASの実践能力が発展し、強化される。
4.サモアにおいて、IDAによるMDAと、TAS結果の評価が、将来的にDossierを作成するために利用できる状態になる。

ミクロネシア

1.Filariasis Test Strip(以下、「FTS」という)の供給と効率的な使用における実施能力が強化される。
2.フィラリア制圧承認のための申請書類の下書きが準備される。

キリバス

1.LFが公衆衛生の問題として制圧したことを承認するためのDossierが提出される。
2.LF制圧後の実施体制が強化される

ツバル

1.ツバルにおいて、IDAによるMDAの実践能力が発展、強化される。
2.ツバルにおいて、Pre-TAS/TASの実践能力が発展、強化される。

フィジー

1.FTSの供給と効率的な使用における実施能力が強化される。
2.フィラリア制圧承認のためのDossierの下書きが準備される。

(注3)Ivermectine, diethylcarbamazine(DEC), Albendazoleの頭文字で、triple drug therapyとも言う。成虫の駆虫効果が高く、従来までのIvermectineとDECではMDAが5回必要であったところ、IDAでは2回実施後、TASに移行してよいとガイドラインにて決められている。
(注4)LF制圧の証明をWHOに報告するためのドキュメント一式。

活動

パプアニューギニア

成果1関連

1-1.MDA実施のために、マイクロプランを立てる。
1-2.MDAで使用するすべての種類の薬剤を、薬剤保管庫からMDA実施場所まで安全で適切に運搬できるよう、技術面で州保健局(Provincial Health Administration。以下、「PHA」という)にアドバイスを行う。
1-3.MDA実施のために、ヘルスワーカーへのトレーナーズ・トレーニング(以下、「TOT」という)に関して、PHAを支援する。
1-4.MDA実施のために、必要人数のボランティアを地元でリクルートし、トレーニングする際にPHAを保健省(National Departmentof Health。以下、「NDoH」という)が支援する。
1-5.MDAの住民参加の重要性をMDAの対象となる人々に啓発する。
1-6.MDA実施にあたり、PHAをNDoHが支援する。
1-7.MDAカバー率とその他の重要指標をPHAがNDoHに報告する。

成果2関連

2-1.現存するガイドラインやマニュアルなどの教材を収集し、分析する。
2-2.IDAによるMDAの実践ガイド案を作成する。
2-3.IDAによるMDAの実践ガイド案を、必要な技術アドバイスや助言とともに対象州へ共有する。

成果3関連

3-1.対象州において、Pre-TAS実施のためのマイクロプランを作成する。
3-2.ニューアイルランド州(以下、「NIP」という)のPre-TASに必要なFTSを、安全で適切に輸送するため、NDoHとPHAを支援する。
3-3.NIPで実施するpre-TASのヘルスワーカーのトレーニングのために、PHAを支援する。
3-4.NIPの現地で行われるpre-TASのために、PHAを支援する。
3-5.NIPで行われるpre-TASの完了レポートを提出する。

成果4関連

4-1.対象州において、TAS実施のためにマイクロプランを作成する。
4-2.NIPのTASに必要なFTSを、安全で適切に輸送するため、NDoHとPHAを支援する。
4-3.NIPで実施するTASのヘルスワーカーのトレーニングのために、PHAを支援する。
4-4.NIPの現地で行われるTASのために、PHAを支援する。
4-5.NIPで行われるTASの完了レポートを提出する。

成果5関連

5-1.対象州で実施されたMDA、Pre-TAS、TASのデータを収集し、データクリーニングを行う。
5-2.データ分析を行うことで、MDA、Pre-TAS、TAS結果をアセスメントする。
5-3.評価レポートを準備する。

サモア

成果1関連

1-1.MDA実施のために、マイクロプランを立てる。
1-2.MDAで使用するすべての種類の薬剤を、安全で適切に運搬できるよう、技術面でアドバイスを行う。
1-3.MDAの実施のため、関係するヘルスワーカーへのTOTについて、保健省(MinistryofHealth。以下、「MoH」という)を支援する。
1-4.MDAを実施するため、適切な人数の村の保健ボランティア(以下、「VHV」という)を地元でリクルートし、トレーニングする際にMoHを支援する。
1-5.MDAの住民参加の重要性を啓発する。
1-6.MDA実施にあたり、MoHを支援する。
1-7.MDAカバー率とその他の重要指標をMoHに報告する。

成果2関連

2-1.Pre-TAS実施のためにマイクロプランを作成する。
2-2.Pre-TASに必要なFTSを、安全で適切に輸送するため、MoHを支援する。
2-3.Pre-TASのヘルスワーカーのトレーニングのために、MoHを支援する。
2-4.現地で行われるpre-TASについて、PHAを支援する。
2-5.Pre-TASの完了レポートを提出する。

成果3関連

3-1.TAS実施のためのマイクロプランを作成する。
3-2.TASに必要なFTSを安全で適切に輸送するために、MoHを支援する。
3-3.TASに従事するヘルスワーカートレーニングのために、MoHを支援する。
3-4.現地で行われるTASのために、MoHを支援する。
3-5.TASの完了レポートを提出する。

成果4関連

4-1.MDA、Pre-TAS、TASのデータを収集し、データクリーニングを行う。
4-2.データ分析を行うことで、MDA、Pre-TAS、TAS結果をアセスメントする。
4-3.評価レポートを準備する。

ミクロネシア

成果1関連

1-1.TASに使用するFTSキットの適時適切な供給と配布を支援する。
1-2.TASに必要なFTSキットを供給する。
1-3.TASに必要なFTSキットを安全で適切に保管する。
1-4.TAS実施チームに、必要時に適切にFTSキットを供給する。

成果2関連

2-1.MDA,Pre-TAS,TASのデータを収集し、データクリーニングを行う。
2-2.データ分析を行うことでMDA,Pre-TAS,TAS結果をアセスメントする。
2-3.評価レポートを準備する。

キリバス

成果1関連

1-1.必要に応じて、これまでのMDA、スポットチェック検査、TASのデータのDossierへの入力を支援する。

成果2関連

2-1.LF制圧認証後の定期サーベイランスの実施を支援する。
2-2.MMDP(罹患率の管理と障害予防)の実施を支援する

ツバル

成果1関連

1-1.MDA実施のために、マイクロプランを立てる。
1-2.MDAで使用するすべての種類の薬剤を、薬剤保管庫からMDA実施場所まで安全で適切に運搬できるよう、技術面でアドバイスを行う。
1-3.MDAの実施のため、関係するヘルスワーカーへのTOTについて、MoHを支援する。
1-4.MDAを実施するため、適切な人数のVHVを地元でリクルートし、トレーニングする際にMoHを支援する。
1-5.MDAの住民参加の重要性をMDAの対象となる人々に啓発する。
1-6.MDA実施にあたり、MoHを支援する。
1-7.MDAカバー率とその他の重要指標をMoHに報告する。

成果2関連

2-1.Pre-TAS/TAS実施のためにマイクロプランを作成する。
2-2.Pre-TAS/TASに必要なFTSを、安全で適切に輸送するため、MoHを支援する。
2-3.Pre-TAS/TASのヘルスワーカーのトレーニングのために、MoHを支援する。
2-4.現地で行われるpre-TAS/TASについて、MoHを支援する。
2-5.Pre-TAS/TASの完了レポートを提出する。

フィジー

成果1関連

1-1.TASに使用するFTSキットの適時適切な供給と配布を支援する。
1-2.TASに必要なFTSキットを供給する。
1-3.TASに必要なFTSを安全で適切に保管する。
1-4.TAS実施チームに、必要時に適切にFTSキットを供給する。

成果2関連

2-1.MDA、Pre-TAS、TASのデータを収集し、データクリーニングを行う。
2-2.データ分析を行い、MDA、Pre-TAS、TAS結果をアセスメントする。
2-3.評価レポートを準備する。

投入

日本側投入

専門家

・長期専門家:チーフアドバイザー、技術専門家、業務調整員
・短期専門家:MDAの専門家、その他対象国とJICAが合意した分野の専門家

機材供与

・体重計(サモア)

在外事業強化費

相手国側投入

(パプアニューギニア、サモア、ツバル、ミクロネシア、キリバス、フィジー)

カウンターパートの配置

活動実施のための施設や、必要機材の提供

・各国保健省もしくは各州保健局内におけるJICA専門家執務スペース
・各国保健省もしくは各州保健局内における付帯設備の提供
・研修場所と研修に必要な機材
・MDAとTASに関する移動のための車両

活動実施費用等

・プロジェクト実施に必要な経費