プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)アルゼンチンOVOPのコンセプトに沿った市場志向型インクルーシブバリューチェーンの構築プロジェクト
(英)Project for Development of Inclusive Value Chains Oriented to the Market with OVOP Argentina Concept

対象国名

アルゼンチン

署名日(実施合意)

2018年11月28日

協力期間

2019年6月23日から2024年6月22日

相手国機関名

(和)保健・社会開発省
(英)Ministry of Health and Social Development

背景

アルゼンチンは一人当たり国民総所得が11,960ドル(2016年、世界銀行)に達する南米地域の主要国でありながら同国のジニ係数は42.4%(2016年、世界銀行)であり、とりわけ貧困率が30~40%に達する北部地域における貧困・所得格差の解消が喫緊の課題となっている。2015年12月に発足したマクリ政権は前政権の大衆迎合的な政治経済モデルから自由開発経済へ政策転換を行った。これと呼応して保健・社会開発省においても、従来の社会的弱者保護・補助金政策から生産活動支援・地域人材育成を通じた地域の自立的発展を促す政策への転換が必要とされている。このような状況から、2017年5月のマクリ大統領訪日時の両国首脳会談において、一村一品運動の考えを活用した地方開発について言及があり、JICAに対して協力が要請された。
保健・社会開発省は地域社会において草の根経済に従事する人々の中でも組織化されたグループをソーシャルエコノミーグループと呼んで支援の対象とし、これらのグループの自立的な経済活動強化を目的とした支援を行っている。具体的な支援としては、農産加工品や伝統工芸品などを生産する生産者への機材供与、技術研修・組織力強化・販売促進、小規模な事業起業のためのインキュベータープログラムなどがあるが、これらのプログラムは必ずしも市場のニーズにあった商品の開発や商品の付加価値化に結び付いていない。また現場においては保健・社会開発省や他省庁による多数の単発的な支援が混在しており、持続性や支援の成果の評価が十分になされているとは言い難い。
このことから本事業ではターゲットとする市場のニーズを反映した農産加工品/伝統工芸品/農村観光商品などの開発及び地域の特徴を活かした商品のブランディング化を行う。特に商品の生産から市場での販売に至るバリューチェーンの形成において、社会包摂性(インクルーシブネス)をひとつの付加価値としながら多くのプログラム・関係者をつなぐ。同時に保健・社会開発省・対象州自治体の調整能力を強化して既存の支援プログラム間の連携を促進し、それらの支援を活用して商品の付加価値を高めつつ、より包括的・戦略的な地域開発の実践を目指す。

目標

上位目標

地域開発を担うソーシャルエコノミーグループと支援機関の能力が強化される。

プロジェクト目標

アルゼンチンOVOPのコンセプトに沿った市場志向型のインクルーシブなバリューチェーンが構築される。

成果

計画フェーズ

1. OVOPアルゼンチンの活動を実施するための体制、コンセプト、計画が作成される。

実施フェーズ

2. OVOPアルゼンチンの活動をファシリテートする中央政府・州・郡レベルの関係者の能力が強化される。
3. OVOPアルゼンチンのイニシアティブiiiの商品・サービスが開発・改善され、プロモーション活動が行われる。
4. OVOPアルゼンチン活動の改善と普及のために経験を共有する。

活動

計画フェーズ

1-1. 社会開発省の中央レベルでOVOP事業を理解するためのワークショップを開催する。
1-2. 社会開発省の中央、州レベルの関係者(州政府及びMDS州事務所)から成るコアメンバーチームを組成する。
1-3. OVOPアルゼンチンのコンセプト案を作成する。
1-4. 州レベル(または群レベル)で地域の特徴と資源の分析を行う。
1-5. 各地域のブランディング計画案を策定する。
1-6. 地域資源を活用した商品・サービスの想定ターゲット市場を設定する。
1-7. 本邦研修に参加し1-3から1-6についての議論を行い、社会開発省・各州によるプロジェクトの実施計画を策定する。
1-8. ベースライン調査を実施する。
1-9. フラッグシップ・イニシアティブを選定するための基準を設定する。

実施フェーズ

2-1. ファシリテーター要請のための研修教材を用意する。
2-2. プロジェクト関係者に対し、ファシリテーター候補を募集するためのOVOPアルゼンチンコンセプトに基づいたワークショップを開催する。
2-3. ファシリテーター養成の研修を実施する。
2-4. フラッグシップ・イニシアティブの候補である地域資源に関する分析を行う。

3-1. 社会開発省、州政府、BDS-P、民間セクター代表から成るブランド委員会を立ち上げる。
3-2. ブランディングのためのツール(ビジョン、ロゴ、スローガン)を作成/強化する。
3-3. フラッグシップ・イニシアティブを選定する。
3-4. BDS-Pと共に市場情報を得るためのバイヤー候補とのイベントを開催する。
3-5. 商品・サービスのターゲット市場を決定し、市場で求められる品質やコスト等の要件と現状のギャップを分析する。
3-6. BDS-Pと協働しながらギャップを埋めるための計画を策定する。
3-7. ギャップを埋めるために必要なバリューチェーンの補強・改善のための研修・指導を行う。
3-8. 各州ブランドの認定基準を作り、商品・サービスをブランド委員会の審査にかける。
3-9. ブランド委員会にて課題となった点に対し、BDS-Pと共に改善する。
3-10. ブランド商品のプロモーションのためフェア-、展示会、ビジネスマッチング等に参加する。
3-11. 活動を相互に学ぶためのイニシアティブ間のスタディーツアーを実施する。
3-12. 日本及び他国でのOVOPの活動を学ぶための本邦研修/第三国研修を実施する。

4-1. プロジェクトの広報マテリアルを作成する。
4-2. グッドプラクティスについて取りまとめ事例集を作成する。
4-3. プロジェクトの経験共有セミナー・普及セミナーを行う。
4-4. OVOPアルゼンチン活動の実施経験に基づいて活動の課題を整理し、計画及びコンセプトを改善する。
4-5. エンドライン調査を実施し、プロジェクトの最終報告書を作成する。

投入

日本側投入

計画フェーズ

1. 専門家派遣:業務主任者/地域開発/地域開発研修2、バリューチェーン振興1、バリューチェーン振興2/地域開発研修1、組織開発
2. 研修:OVOPコロンビアの経験(第三国研修)、日本における地域開発の経験・作成(本邦研修)
3. その他:プロジェクト活動に必要な部分的経費

実施フェーズ

JICAの投入は実施フェーズの計画内容とその進展に応じてJICAが決定する。

相手国側投入

1. カウンターパートの配置(中央・州レベル)
2. 執務スペース、施設
3. プロジェクト活動に必要な経費(スタッフ経費、光熱費、現地国内研修経費、イベント開催経費等)
4. 必要情報、資料