プロジェクト概要

プロジェクト名

コミュニティ主体の健康づくりプロジェクト

対象国名

バングラデシュ

署名日(実施合意)

2017年5月28日

協力期間

2017年7月29日から2022年7月28日

相手国機関名

保健家族福祉省

背景

バングラデシュ人民共和国(以下バングラデシュ)の妊産婦死亡率は1990年と比較し、出生10万対574から176、5歳未満児死亡率は出生1000対144から41(世銀、2015年)へと飛躍的に改善しているものの、依然高い数値を示しており、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)において2030年までに達成すべき妊産婦死亡率(出生10万対70)及び5歳未満児死亡率(出生1000対25)を実現するためには更なる努力が必要である。これに加え、同国では、食習慣や生活様式の変化、喫煙の増加等により心血管疾患やがんといった非感染性疾患(Non-Communicable Diseases:NCDs)が全死因の59%を占めるまでになっており、また、30歳から70歳までの経済活動が活発な世代における4つの主要なNCDsによる死亡は、国民全体に占める全体の18%に及ぶなど、NCDsが同国の保健セクターにおいて新たな課題と認識されている(WHO, 2015年)。しかしながら、公的医療サービスにおけるNCDsの早期発見や早期治療のための環境は十分に整備されておらず、また、適切な検査や治療を受けるための治療費を自己負担せざるを得ない状況が一般的であり、特に貧困層の家計の圧迫要因となっている。
コミュニティレベルでは、同国政府はわが国による「母性保護サービス強化プロジェクト」(2006年~2011年フェーズI、2011年~2016年フェーズII)の成果を活用し、住民組織であるコミュニティサポ-トグループ(Community Support Group:CSG)を通じたプライマリーヘルスケアの取り組みを国家政策である保健・人口・栄養セクタープログラム(Health, Population and Nutrition Sector Program:HPNSP)の中で位置づけ、全国で展開している。CSGでの保健活動はこれまで母子保健を切り口にすることが多かったが、母子保健とNCDsの二重の負担に対する取り組みが求められているなか、NCDs予防活動の取り込みによる既存のCSGの活性化も考えられている。また、医療施設においても、特に低出生体重児を含む新生児へのケア、NCDsの早期発見や早期治療のために適切な検査・診断・治療サービスが行われるようになることが急務となっている。
このような背景のもと、コミュニティ住民がNCDsの予防への取り組みを促進することによるサービス裨益者の需要促進と、検査・診断・治療へとつながる医療サービス提供側の体制構築の、両側面での強化が必要となっている。

目標

上位目標

バングラデシュの人々の健康状態が改善する。

プロジェクト目標

非感染性疾患(NCDs)サービスと母性保護サービスが共に関連付けられながら全国的に向上する。

成果

成果1:パイロットサイトでNCDs(心血管疾患(CVD)及び糖尿病(DM))と妊産婦保健サービスが統合されて提供される
成果2:病院サービスの質改善のための病院管理が強化される
成果3:NCDs予防活動がパイロットサイトでコミュニティサポートグループ(CSG)との協働によって促進される
成果4:プロジェクトの優良事例や教訓が他地域に広がる

活動

成果1

活動1-1.NCDsのガイドライン、プロトコール、研修マニュアルを含む現状調査が行われる
活動1-2.NCDsに関連した妊産婦保健サービスのガイドライン、プロトコール、研修マニュアルを含む現状調査が行われる
活動1-3.パイロットサイトで保健医療施設(コミュニティクリニック(CC)、郡・県病院、都市診療所(UD))でのNCDsサービス提供に関する現状調査が行われる
活動1-4.パイロットNCDsサービス提供のための介入ガイドライン、プロトコール、研修マニュアルが作られる
活動1-5.パイロットNCDs研修がパイロットサイトで実施される
活動1-6.パイロットサイトでパイロットNCDsサービス提供が試行される
(CC:NCDsスクリーニング、郡・県病院、UD:NCDsスクリーニング・診療マネージメント)
活動1-7.パイロットサイトでパイロットNCDsサービスがモニタリングされる
活動1-8.パイロットNCDsサービスがパイロット活動の経験に基づいて見直される
活動1-9.他地域に拡大するためのNCDsサービスにおける介入ガイドライン、プロトコール、研修マニュアルが確定される
活動1-10.全国普及に向けてNCDsサービスにおける介入ガイドライン、プロトコール、研修マニュアルが標準化される
活動1-11.標準化されたNCDsサービスの拡大をパートナーとの協働によって支援する

成果2

活動2-1.パイロットサイトの郡・県病院で各病院の質改善委員会(Quality Improvement Committee:QIC)によってサービスの質に関するアセスメントが行われる
活動2-2.アセスメント結果を基に各対象郡・県病院においてサービスの質改善(Quality Improvement:QI)活動計画が立案される
活動2-3.各対象病院においてサービスの質改善活動計画がQICと業務改善チーム(Work Improvement Team:WIT)によって実施される
活動2-4.QI活動計画の実施が各病院のQICによってモニタリングされる
活動2-5.QI活動の発展に向けて、病院のマネージャー、スタッフを対象としてPDCAとKaizenに関する研修を実施する
活動2-6.県・郡レベルのQI機構の機能化を支援する

成果3

活動3-1.ヘルスプロモーション活動とCSGの現状を調査・把握する
活動3-2.CSG研修マニュアルをNCDs管理を追加した形で改訂する
活動3-3.CSG研修の中央レベルToT実施を支援する
活動3-4.パイロットサイトでCSG研修(CSG活動計画立案)を実施する
活動3-5.パイロットサイトでCSG活動計画を実施する
活動3-6.CSG、保健医療施設と地方行政機関間の既存資源の有効活用を促進する
活動3-7.パイロットサイトでコアチームによるCSG活動モニタリングが行われる
活動3-8.コアチームによるCSG支援・モニタリングメカニズムを確立する
活動3-9.ダッカ市において、コミュニティ活動の活性化を推進する

成果4

活動4-1.プロジェクトのベースライン・ミッドライン・エンドライン調査を実施する
活動4-2.プロジェクトの優良事例や教訓を導き出すための調査研究を実施する
活動4-3.確認されたプロジェクトの優良事例や成果・教訓を国家の政策や戦略に反映する

投入

日本側投入

1)専門家派遣(チーフアドバイザー、非感染性疾患、母子保健、ヘルスプロモーション、病院サービスの質、疫学・調査、業務調整、その他必要とされる分野の専門家)
2)本邦研修/第三国研修、現地国内研修
3)機材およびインフラ整備(病院改善用医療機器等)
4)プロジェクト活動費

相手国側投入

1)カウンターパートの配置
2)施設、機材、備品(執務スペースと必要機材、プロジェクト実施に必要な資機材)
3)ローカルコスト負担(プロジェクト実施に必要な運営費等)