農業機械化と安全

2015年7月14日

歩行型トラクタを中心として、農業機械化が進められているブータンでは、普及台数の増加あるいは機械による負担面積の拡大につれて、機械そのものの安全性やその機械を取り扱う農家(オペレーター)に対する安全面での配慮がますます求められてきています。一般に、農業機械は、人や物を運ぶだけでなく、水田や畑の土を切削し、作物を切断、搬送する機能を持っているため、オペレータの身近には、多くの危険な部位があります。さらに、土や泥、わら等が詰まって作業の支障とならないよう可動部、高温部のカバーも最小限としているものも見受けられます。これらのことが、一般の自動車と大きく異なる点の一つといえます。
このプロジェクトの活動の一つである農業機械の試験方法と標準作りでは、オペレータの安全を確保するために機械側に求められる項目を整理し、安全要件確認試験方法に盛り込んでいます。例えば、回転部や高温部に不用意に触れないような防護カバー、後進時に作業機動力が自動で遮断される装置、危険な個所に貼付する注意喚起のためのステッカー等の確認を細かく規定しています。また、歩行型トラクタの場合、トレーラをけん引して一般の自動車と同じく、道路を走行するため、ブレーキの性能も確保されなくてはなりません。写真は、実際の試験風景ですが、試験基準では、最大積載量でかつ最高速度で運転した時の制動距離を規定しています。
一方、機械側の要件を整備するだけでなく、安全性に対する人間側の意識向上のための支援もプロジェクト活動の一つです。前回、このホームページでご紹介したようにカウンターパート機関である農業機械化センターが実施する研修においても安全性を含めた機械の操作の講義や実習が行われています。また、歩行型トラクタの安全操作に関するパンフレットを作成し、外部への安全啓発に役立てています。
農業機械の誤った使い方が原因でおこった事故について、詳細な実態は、現在のところ明らかではありません。しかし、機械が普及するにしたがって取り扱う人の数も多くなり、その結果、事故も増加するという流れはなんとしても阻止しなければなりません。プロジェクトでは、より高い安全性を確保するために、機械側だけでなく、操作する人間の安全に対する意識が大切であることも常にアピールしていきます。

【画像】

ブレーキ試験風景

【画像】

安全操作パンフレット