部品製作のための金型第1号が完成

2016年11月30日

当プロジェクトの4つの活動の柱の1つに、農業機械の貸し出しサービスの仕組みづくりがあります。そのサービスを実施するうえで大切なことは、貸し出す機械を常に良い状態に保ち、いつでも貸し出せるようにしておくことです。そのためには、機械を修理する設備や道具があり、機械を直せる技術者がいて、必要な部品が整っていることが必要です。今回は部品製作に不可欠な金型についての報告です。
ブータンの水田や畑で使われている農業機械のほとんどは、日本から供与されたものです。それらの機械の部品は、通常日本から輸入していますが、頻繁に交換が必要な消耗品の輸入は、値段が高いことと納品までの時間がかかることが課題となっていました。

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プラウによる耕うん作業

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日本製のプラウ(金色の箇所が犂先)

そこでプロジェクトでは、いくつかの消耗品(特に土を耕すプラウ(犂)の部品)の製作をブータン国内で行うための活動を進めてきました。2014年9月に活動を開始し、この部品が問題であることが直に明らかになりました。その後、別途掲載のプロジェクトニュース(2015年9月29日版)で紹介したとおり、部品製作に不可欠な金型の技術者を招へいし、技術の移転を行って来ました。2015年9月から1か月間、2016年2月から再度1か月間技術研修を開催し、さらに2016年度には、期間を延ばして、計8か月間派遣しています。
今回製作したのは、プラウの先端の“犂先”という部品です。製作工程は複数に及びます。まず鉄板を切り出す作業、次に切り出した鉄板の端をきれいに仕上げる作業、さらにボルトを差し込む穴をあける作業、そして鉄板を曲げる作業、最後に(別に作っていた)小型の部品を溶接でつける作業で完成です。今回製作した金型は3番目の工程の“ボルトを差し込む穴をあける”ためのものです。金型の製作には、フライス盤などの工作機械を使い、1/100mm台(百分の一ミリ台)の精度で機械加工の作業を行います。加工作業には技術だけでなく、集中力も求められますが、ブータン人はこういった作業が得意なのか、専門家の指導の元で、黙々と作業を進めるスタッフがほとんどです。
ようやく完成した金型を使って、正確に、且つきれいに穴が開くようになりました。ちなみに、ここで使用しているプレス機は、1980年代に日本から導入されたもので、今でも現役で稼働しています。ブータンには、物を大切にする習慣もあります。

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出来上がった金型(中央の銀色の部分)

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技術指導をする北川専門家

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使用するプレス機

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きれいに穴があけられた部品

2015年9月から専門家を派遣して技術研修を行い、1年以上かかってようやくここまで来ることができたと言えます。しかし、まだブータン人が自分たちで金型を製作するには、もっと経験を積むことが必要です。プロジェクトでは、あと1年半かけて、ブータン人技術者を育てていく予定です。

以上