ガソリンエンジン試験法向上のための短期専門家派遣

2017年11月28日

今回も機械試験に関する活動報告です。前回(10月31日付)のプロジェクトニュースにて、既に6種類の農業機械の試験方法と基準を作成し、国家標準局の技術分科会に提出したとお伝えしました。これに関連して、管理機に使われているエンジンの試験方法の向上のため、農林水産省傘下の農業技術革新工学研究センターとの連携協力により、11月3日から30日にかけて、短期専門家を当地に派遣しました。

このような性能曲線を自動車のカタログなどで見たことがある方もおられるのではないでしょうか。エンジン試験は、カタログや修理解説書等からこういったエンジン性能に関する情報を得るところから始まります。カタログ等で必要な情報が公表されていない場合には、直接製造者に連絡をして入手することになります。

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エンジンの性能曲線(例)

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試験機

農業機械製造元(メーカー)がエンジン性能を公開しているにもかかわらず、なぜブータンで再度エンジン試験をする必要があるのかという点ですが、プロジェクトニュース『高地で稼働するエンジン(2016年5月16日)』でもお伝えしたとおり、製造元が保証している性能がそのままブータン国内で出るとは限らないからです。

ブータン国は標高差が大きく、その差がエンジン出力に大きな影響をもたらします。例えば農業機械化センターのあるパロ県中心部とインド国境地域とでは、標高差が約2000メートルあり、気圧は20%ほど低く(空気が薄く)なるので、標高が高い場所へ行くほど性能が落ちてしまうのです。その落ち具合もエンジンによってさまざまであるため、個別エンジン性能を確認して、最低限の性能が確保できる良いエンジン結果を公開していくことを進めています。

短期専門家は、エンジン性能曲線等の基礎データ、エンジン試験架台の状態、各測定機器の設定などをブータン人スタッフと一つ一つ確認しながら進めていきます。同じモデルでも個体差があるため、複数のエンジンで試験を行い、且つ同じエンジンでも最低3回の試験を行って平均値を求めていきます。1台のエンジンで3回試験を繰り返すだけでなく、エンジンを取り換えるたびに設定をし直し、状態を確認しながら進める必要があるため、なかなか根気のいる作業です。最終的に短期専門家の滞在期間中に行ったエンジン試験では、製造元の数値よりも30数パーセント程度出力が落ちることが確認されました。この結果は、農業機械化センターでの最終報告会で発表されました。

今回は比較的性能の良い日本製エンジンのみで試験でしたので、今後他国製(タイ製やインド製など)のエンジンでも試験を行い、どの程度出力が減少するかを確認し、最終的なガソリンエンジンの基準を作成していくことになりました。

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燃料計の読み取りの確認

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エンジン試験