最終プロジェクト合同調整委員会 開催

2018年8月10日

8月10日、プロジェクト最後の合同調整委員会をパロの農業機械センターにて開催しました。今回はプロジェクトの最終的な達成状況および残された課題の確認、プロジェクト全体の評価、そしてプロジェクト完了後の活動などについての話し合いをしました。

プロジェクトの目標は、『プロジェクトサイトにおいて、農家による適切な農業機械へのアクセスが向上する』です。この目標の下に、期待される成果として以下の4つがあり、それぞれの成果達成のために個々の活動が設定されています。会議では、その指標に基づいて、プロジェクト・マネージャである農業機械センター長が達成度や今後の活動計画などの発表を行いました。

プロジェクトの成果は以下の4つです。
1.ブータン国内において、農業機械選択のための客観的な基準が導入される
2.農業機械取扱民間業者、農家、普及員等の農業機械の安全性と性能に対する認識が向上する
3.プロジェクトサイトにおいて、農業機械の性能が改善される
4.改善された農業機械サービス提供モデルが提案される

これらの成果の達成度に関し、1点目は、農業機械基準作成の目標6機種に対し、6機種の基準が作成され、国家標準局に提出済みです。6種類とは、(a)耕耘機(ディーゼルエンジン、10~12馬力)、(b)刈取り(日本でいうところのバインダー)、(c)精米機、(d)搾油機(菜種油、ごま油用など)、(e)フレーク製造機(コーンフレーク、ライスフレーク用)、(f)管理機(10馬力未満、こちらではミニ・ティラーと呼ばれています)です。6種類のうち、3種類は既に国家標準局で承認され、正式に国の基準となっています。

2点目は、まず基準作成時に複数回にわたる試験を実施するのですが、当初想定していた12の試験項目に対し、44試験項目を実施済みです。さらに、農業機械の運転や修理研修の参加者に対する認識向上プログラムや、テレビ等のメディアを通じた啓蒙活動を実施し、農業機械の安全と質、性能に対する認識の向上が確認されています。

3点目は、性能向上した機械の目標3種類に対し、4種類の機械の開発が完了しています。4種類とは、(a)ジャガイモの掘取機、(b)携行型の稲の刈取り機(草刈り機を改良したもの)、(c)カルダモン/香辛料の乾燥機、(d)コーン/モロコシの実取り機です。

4点目は、中央主導型モデルと地方政府による実施モデルの2種類のモデルに整理されました。各モデルの実施のためのガイドライン、標準作業手順なども作成されており、この活動の実施機関である農業機械公社は、耕耘作業などの農作業請負サービスを農家へ提供しています。

プロジェクトの目標に関しては、3つの指標が設定されています。プロジェクト終了までに、1)4機種の農業機械が認証試験を経て公開されること、2)開発された機械が現場に紹介されること、3)作業受託サービスが一定以上拡大することを目指しています。

1点目は、4機種(耕耘機、精米機、搾油機、ミニティラー)の合計7つのモデルの試験が実施され、その試験結果はホームページやメディアを通じて一般に公開されました。農業機械を海外から輸入している民間企業からの試験依頼は続いており、今後も試験実施とその結果公表が行われていきます。この試験は任意試験なのですが、農家は常に良質の機械を求めるため、この試験結果の公表を通じて、試験に合格した機械が市場に残っていくことが見込まれます。さらに長期的にブータン国内の農業機械全体の質の向上が期待されます。

2点目は、開発が完了した機械のうち、カルダモン乾燥機が国内のカルダモン主栽培地帯66箇所に設置されていて、その普及が進んでいます。それ以外の3種類の機械は、民間企業と連携の話し合いが進んでおり、今年秋の収穫時期を目途に、現場での普及が期待されています。

3点目は、作業受託サービスの目標面積である7600エーカー(約3000ヘクタール)に対し、最終的にはその83%しか達成できませんでしたが、日本から今年供与された耕耘機353台を今後は活用して、さらにサービスの面積が拡大していくことが予想されています。農業機械公社は、耕耘作業だけでなく稲刈りなど他の作業も請け負っており、且つプロジェクトの対象地域以外でもサービスが広がっていて、プロジェクト終了時点では1年間の累積面積で約14300エーカー(約5790ヘクタール)にまで達しました。これは、プロジェクト開始前と比較すると3倍以上に拡大したことになります。また、今後の運用で目標は達成される見込みがたっています。

プロジェクトの全体評価は、概ね高いものでした。今後、活動の持続性をより確保するために農業機械公社で作業受託サービスに携わる一部の契約職員の持つスキルをどのように継承していくか、ブータン政府で検討していくことになります。議長を務めた農業省事務次官は、活動の持続性の大切さに触れ、省として確実にプロジェクトの活動を継続し、成果を上げていく旨の発言がありました。

さらに今後のカウンターパート機関である農業機械化センターの活動計画として、この7月から始まったブータン政府の新しい5か年に沿って、プロジェクトで培った知識と経験を基に継続していくための具体的な計画が提示されました。また、農業機械センター長からは、今後の活動を行うための技術力だけでなく、自信もついたというコメントもありました。

会議は、この4年間の活動の締めくくりにふさわしく、成果を上げたカウンターパート達の自信と達成感が満ち、且つ和やかな雰囲気で終了しました。ブータンが引き続き幸福であることを祈りながら、プロジェクトの日本人専門家は8月下旬にこの地を離れます。

【画像】第5回合同調整委員会(JCC5)の参加者

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JCC協議の様子

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ジャガイモ掘取機、カルダモン乾燥機の説明

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JCC参加者による携行型の稲刈取り機の体験

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国家標準局による農業機械試験の認定証の説明

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金型研修で製作された農業機械用金型の説明