農業普及員の果樹栽培技術研修

2017年3月14日

プロジェクトでは各郡に配属され、第一線で農家への普及活動を担う農業普及員の研修を通じた能力向上・園芸農業普及システムの強化にも取り組んでいます。

国内外の大学で農学を履修した普及員は全般的な知識は有するものの実際の栽培経験は少なく、また栽培管理に必要な園芸器具なども持たないため、その活動は主に種苗などの配布に留まり、簡単な一部の野菜を除き、技術的な指導は余り行われていません。特に果樹については、苗木配布後の整枝・剪定など樹体管理指導が行われず放任されている樹が多く見られます。期待された収穫が得られないといった農家の不満・苦情が地方議会で取り上げられたり、マスコミで報道されることもよくあり、プロジェクトには普及員や農家から現場指導や、在来種から改良品種への更新要望が多く寄せられます。

このため、3月2日・3日の2日間に渡り、プロジェクト対象4県(プナカ県・ワンディホォドラン県・ダガナ県・ガサ県)から、落葉果樹栽培に適していると思われる郡の農業普及員計13名(男性10名、女性3名)を対象に、果樹の樹体管理と接ぎ木を中心とした実技研修を行いました。
初めに専門家から「従来行われてきたように配布した種苗の数・量などを実績とするばら撒き型の普及ではなく、作物に適した気温や日照・雨量などを正しく理解して適地・適作を進めることが必要。自らが栽培技術を身につけることにより普及リスクを軽減でき、農家の信頼を得られるようになる」などの心構えを説いた上で、「深刻な問題となっている柑橘グリーニング病の基礎知識と、標高によって異なる感染リスクを考慮して推奨される品種の導入」を講義しました。
また、作業に必要な剪定バサミや鋸、接木ナイフを配布した後、センター圃場でクルミ台木への接ぎ木、王室果樹園で長年結実していないキーウイの品種更新と雄株の接ぎ木、普及所が苗木を配布した後十分な管理指導が行われていない農家の梨・桃・リンゴなどの整枝・剪定、標高の面で適さない品種が普及されて結実していないリンゴや品質の劣る在来梨・桃への改良種の高接ぎなど、普及員がそれぞれの任地で求められるニーズを想定した実技研修を行いました。

このような実践的な研修機会はこれまで行われていないことから、参加者は今回の研修を高く評価し、更に必要な園芸器具を得て、担当地区での園芸作物の普及に強い意欲を示していました。短期間の研修で完全に習得出来る技術ではありませんが、普及員らが日々の活動で失敗を恐れずに習得した技術を実践し、試行錯誤をしながら自らの技術を高め、農家に普及することを期待しています。

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参加した農業普及員とカウンターパート・専門家

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専門家による柑橘グリーニング病の講義

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プロジェクト圃場で各種果樹苗木の育苗を見学

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専門家によるクルミの接ぎ木のポイントの説明

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農家での梨幼木の整枝剪定

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王室果樹園でのキーウイの高接ぎ

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農家樹園の成木リンゴ樹の高接ぎ品種更新説明

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同樹園リンゴの高接ぎ実習