果樹普及農家育成プログラムのモニタリング調査

2019年7月29日

プロジェクトでは、バジョ農業研究開発センターの試験圃場において、新たな園芸作物や品種の導入栽培に取り組むとともに、その成果を生産現場で実証・普及すべく、地域の農家を対象に各種の普及活動を展開しています。その中核として力を入れているのが、準備調査や技術研修、苗木提供等の支援コンポーネントを系統的に組み合わせた果樹普及農家育成プログラムです。当プログラムは、1年をひとサイクルとし(当年7月から翌年6月)、ここまで計3期実施する中で、200軒近くの果樹普及農家を各地に育成してきました。
現在、プロジェクトが終盤を迎える中、これまでに設けた果樹普及農家の活動に関するモニタリング調査を進めています。その目的は、参加農家の活動状況を実地で確認することで、活動の成果や課題を理解し、今後のプログラムの改善につなげることです。

本モニタリング調査は、第1期から第3期の果樹普及農家のうち、プログラムの技術研修に参加した者を対象として、第1期から順に実施する計画です。この春には、調査の第一弾として、園芸科長・各県担当カウンターパート・日本人専門家からなる調査チームが、第1期の研修参加農家13名を訪ねて回りました。
この13名には、支援の一環としてナシ、カキ、柑橘類、アボカドを中心とする約800本の果樹苗木が提供されています。現地調査の結果、そのうち約7割が生存しており、生育状況もまずまずですが、農家ごとの生存率は30%から100%とかなり幅があることが分かりました。その原因は複合的なもので、技術的な問題や、環境に起因すると判断される状況も認められましたが、やはり農家の取り組む姿勢そのものが活動の結果を左右する一番の要因になっているとの印象です。要するに「やる気」があるかないかということで、そこは農家選考の段階で最も重視する点なのですが、蓋を開けてみないと分からないという部分が大きく、なかなか悩ましい問題です。
全体に共通する技術的な課題も確認することができました。順調に育った苗木は、そろそろ結果が始まっていたり,整枝の適期を迎えているのですが、摘果や誘引などの必要な作業を実施している農家はごく少数でした。果樹普及農家は、地域における果樹栽培のロールモデルとなることが期待されています。彼らがお手本となる樹体管理を実践して見せることは、将来的な普及を実現する上で欠かすことのできない条件です。果樹普及農家が適期に整枝・剪定作業を開始することができるよう、1年のプログラム終了後も、巡回指導や補完研修等のフォローアップ活動を検討する必要があるでしょう。

第2期果樹普及農家のモニタリング調査は今秋に、第3期は翌春に実施予定です。最終的な調査結果については、プログラムの改善に向けた提言として取りまとめるとともに、必要に応じプログラムの実施ガイドラインに反映させたいと考えています。

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順調に育つカキ幼木を前に誇らしげな果樹普及農家(ダガナ県)

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農家立ち合いの下、苗畑での育苗状況を検査するカウンターパート(ダガナ県)

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農家の圃場で大切に育てられているナシ幼木(ワンディ県)

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苗木の生育状況を確認すると同時に、適切に栽培管理が行われているか聞き取りを行います(ワンディ県)

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カウンターパートの指導を受けながら整枝作業を行う果樹普及農家(チラン県)

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圃場での検査が終わると、アンケート調査で活動の課題や成果を確認します(チラン県)

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成長の早い場所ではナシやカキの着果が始まっていました。こうなると摘果作業が必要です(プナカ県)

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農家にアドバイスするCP。彼らにとってもこの調査は、プロジェクトで学んだ技術を復習し実践する貴重な機会です(プナカ県)

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農家が営農を放棄してしまったケースもありました。残念な失敗事例です(ワンディ県)

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火事で転居を余儀なくされた農家。こういう予期せぬケースもあります(プナカ県)