2021年5月の活動ダイジェスト

2021年5月31日

内務文化省文化局で技術セミナーを開催

内務文化省文化局(DOC)で技術セミナーが5月7日に開催されました。タイトルは「 Seismic Vulnerability Assessment and Possible Strengthening Strategies for Traditional Bhutanese Rammed Earth Residential Houses(訳:ブータンの伝統的な版築建築の地震脆弱性評価と可能な強化戦略)」で講演者はDr. Phuntshoさんでした。Phuntshoさんは今年の3月に名古屋市立大大学院芸術工学研究科で博士号の学位を取得し、所属先の文化局に戻ったばかりです。日本での研究成果を、文化局の同僚へ発表し、知見を共有する機会となりました。

プンツォさんは発表で次のように述べています。この研究では、版築造の基本的な性状を調べ、適切な耐震化方法を実験と解析を用いて導き出しています。実験では、要素試験、部材の補強効果の試験、実大建物での試験、を順次行い、耐震化方法を実証しました。実験結果は有限要素法(注)解析と対比して、この解析方法の有効性も検証しました。既存建物の耐震化でも、新築建物の耐震化でも有効性が確認されました。本研究で導き出された脆弱性曲線は建物の潜在的な損傷予測にも利用できます。

参加者からは補強効果(強度向上量)の質問があり、Phuntshoさんとの闊達な意見交換がありました。

(注)解を直接出すことが難しい方程式を、小さな領域に分けて近似値を求める手法の一つ

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講演するDr.Phuntsho(写真提供:文化局(DOC)

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セミナーの様子(右)(写真提供:文化局(DOC)

内務文化省文化局が実地訓練のための候補建物(版築造)を調査

内務文化省文化局(DOC)が5月27日に耐震補強実地訓練のために候補建物の調査を行いました。場所はWangduephodrang県のDangchu地区で、現在は使われていない2階建ての版築造建物です。これまでに行ってきた実大試験体とも似通った特徴をもつ建物です。DOC調査チームは外観調査、内部調査を行い、3Dデータも取りました。調査データからこの建物の図面を起こし、その後、具体的に耐震補強方法を導入する検討をしていきます。プロジェクトではこの建物を使った実地訓練を計画しており、これまでに開発した耐震補強法を現地業者を施工管理しながら適用し、その過程を官民技術者への訓練の機会にする予定です。実施工の最初の事例となるとともに、改修後は採用した工法の耐久性を観察する対象にもする予定です。この実地訓練を通し官民の技術者がプロジェクトの耐震化工法を学び、さらに伝えることができるよう、プロジェクトでは訓練内容を検討しているところです。

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対象建物の外観(写真提供:文化局(DOC)

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外観調査の様子(写真提供:文化局(DOC)

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内部調査の様子(写真提供:文化局(DOC)

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内部3D調査の様子(写真提供:文化局(DOC)