プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)国土空間データ基盤構築を通した地理空間情報活用推進プロジェクト
(英)The Project for Promotion of Utilization of Geospatial Information through Development of National Spatial Data Infrastructure

対象国名

ブータン

署名日(実施合意)

2020年1月3日

協力期間

2020年11月1日から2023年12月31日

相手国機関名

国家土地委員会事務局

背景

ブータンは、国土の殆どが急崚な山岳に覆われており、限られた開発適地における市街地整備や、水力発電所の建設や山岳道路の建設などのインフラ整備計画を進めていくため、信頼性の高い地理空間情報を必要としています。しかしながら、開発計画の立案に必要となる地形図は、これまで1960年代にインド政府の支援によりブータン全土を対象に作成された縮尺1:50,000の地形図のみしか存在せず、各種計画・管理を行う上で十分な精度を有していない状況にあります。かかる状況を改善するため、2015年~2017年にJICAが実施した「国家地理空間情報作成プロジェクト」において、ブータン南部地域(11,000平方キロメートル)に対して縮尺1:25,000のデジタル地形図を整備しました。しかし、依然として中部・北部地域における縮尺1:25,000デジタル地形図は未整備の状況にあり、当国が策定した「第12次五か年開発計画」において、2023年6月までに、縮尺1:25,000のデジタル地形図を全国で整備すること及び縮尺1:5,000のデジタル地形図を主要都市部にて整備することを目標としているものの、現状のブータン政府の予算・人員体制・技術レベルでは達成は困難な見通しとなっています。
また各省庁がそれぞれの業務のために必要な地理空間情報を別々に整備・保有しているため、作業の重複も課題となっています。各省庁が保有するこれらの地理空間情報の共有を促進することは、地理空間情報の付加価値の向上に繋がるとともに、早期の政策決定に寄与し、行政コストの削減や効率化も実現できます。
このため、ブータン政府は、各機関の保有する地理空間情報の横断的活用を推進するため、第12次五か年計画(2018年~2023年)の重点分野のひとつとして国土空間データ基盤(以下「NSDI」)構築を位置づけ、2018年には地理情報政策(以下「GI政策」)を閣議決定しました。しかし、実務的な経験・ノウハウの不足などにより、実際の地理空間情報の組織横断的な活用は進んでいない状況となります。
これら背景を踏まえ、国家土地委員会事務局(以下「NLCS」)は、NSDI戦略の再構築、NSDI運営維持管理計画策定に係る技術移転、標高データ等の自動処理技術を活用した効率的な縮尺1:25,000デジタル地形図整備に係る技術移転、大縮尺のデジタル地形図整備に係る技術移転を目的とした技術協力を我が国に要請しました。

目標

上位目標

ブータン政府によるNSDIの戦略的活用を通して、信頼性・精度の高い地理空間情報が管理され、民間セクター含む関係機関に共有され、地域振興や産業振興の基盤となるインフラ整備計画策定等への活用が促進される。

プロジェクト目標

ブータン政府によりNSDIが構築・運用され、信頼性・精度の高い地理空間情報が民間セクター含む関係機関に共有される。

成果

成果1:NSDIの戦略的活用・普及のための運用計画策定及び実施に係る能力が向上する。
成果2:デジタル地形図の作成・更新・管理・利活用に係る能力が向上する。

活動

成果1:NSDIの戦略的活用・普及のための運用計画策定及び実施に係る能力が向上する。

1-1.NSDIに関連する法的枠組み及び計画・政策等が整理され、GI政策に基づくNSDIの基本計画が策定される。
1-2.NSDIの構築・運営に係る関係機関の役割・責任が整理され、各機関の調整機能が強化される。
1-3.ブータンにおける地理情報標準(案)が作成され、関係機関等への普及が実施される。
1-4.地理空間情報の活用に関する関係機関のアクションプランが策定され、実施される。
1-5.NSDIのためのブータン地理情報ポータル含むICTサービスの概念設計が行われ、NSDIの一部としてウェブマップサービスが導入される。
1-6.NSDI運用に必要な機材が特定され、その仕様が決定される。
1-7.NSDIや地理情報標準の普及に向けた戦略・方針が策定され、利活用促進のためのセミナー、トレーニング、ワークショップ等の啓発が行われる。

成果2:デジタル地形図の作成・更新・管理・利活用に係る能力が向上する。

2-1.パイロットエリアを対象に、縮尺1.25,000、縮尺1.5,000、及びそれ以上の大縮尺地形図(ウェブマップサービスの展開を踏まえたベクトルタイル含む)の作成・更新に係る能力が強化される。
2-2.地理空間情報の管理主体を明確化し、各地理空間情報の管理・共有・更新のための効率的なプロセスが構築される。
2-3.関係機関におけるデジタル地形図の利活用に係る能力が強化される。(ブータン政府関係機関がデジタル地形図の構造を理解し、GIS Toolsを用いた地理空間情報の活用技術能力が強化される)
2-4.デジタル地形図を含む地理空間情報の利活用促進のためセミナー、トレーニング、ワークショップ等の啓発が行われる。

投入

日本側投入

専門家派遣:
・総括/NSDI基本計画/デジタル地形図整備計画
・地理空間情報の活用促進・アクションプラン策定
・地理情報標準
・NSDI ICTシステム構築
・デジタル地形図整備/人材育成
・デジタル地形図の更新・管理/GIS技術活用
・研修計画/業務調整
研修員受け入れ:NSDI法、デジタル地形図の利活用分野等
機材供与:衛星画像、ドローン、PC等"

相手国側投入

カウンターパート(C/P)の配置
案件実施のためのサービスや施設、現地経費の提供